臨床試験の結果の公開における電子的様式の構築のための研究

文献情報

文献番号
201706035A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床試験の結果の公開における電子的様式の構築のための研究
課題番号
H29-特別-指定-035
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部 )
研究分担者(所属機関)
  • 木内 貴弘(大学病院医療情報ネットワーク・UMINセンター、東京大学大学院医学系研究科)
  • 藤井 仁(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部  )
  • 湯川 慶子(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部  )
  • 岡田 昌史(大学病院医療情報ネットワーク・UMINセンター、東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界保健機関(WHO)の国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)の新規格および臨床研究法・同施行規則への対応ならびに国際調和の観点から、国内外の現状について総覧すると共に、我が国の臨床試験結果の登録・公開の在り方について提言を行い、登録・公開システムの仕様を検討・評価する。また、試験情報の公開と知的財産権との関係について法令および判例を収集・整理し、現行の法理ならびに法運用の実態について調査する。
研究方法
WHO/ICTRP、欧州医薬品庁、米国Clinicaltrial.govを始めとして、我が国の制度設計において重要なカウンターパートとなる海外機関、日本国内の試験登録機関(日本医薬情報センター、日本医師会および大学病院医療情報ネットワーク)における結果公開の項目および形式について、ヒアリングおよび資料収集を行う。また日米欧の(臨床試験)情報の公開にかかる法令および判例について書誌ならびに判例の収集を行う。
結果と考察
WHO/ICTRPの規定する臨床試験登録項目は、参加国レジストリが共通して実現可能な範囲を探り登録データの質の向上を目指すものであるが、米国・EUの登録システムに比較するとプリミティブで未整理な部分も多い。現時点で日本の臨床試験登録における結果の公開は、このWHOの要求水準にも達しておらず、WHO側から結果データを送付するよう要請されても対応できない状況にある。CONSORT声明など、目指すべき目標を参照しつつWHOおよび世界各国における試験登録システムに劣らぬ形で我が国の登録システムを整えるための仕様検討を行った。また、臨床試験情報、試験結果情報の登録・公開と(製薬企業等の)知的財産権との関係については、公益と研究開発情報の秘匿権・占有権との均衡を法制度・法運用の中で図っていく必要が大きいことが明らかになった。
結論
構造化された臨床試験結果が登録・公開されるようになれば、WHO/ICTRPの合意に沿うことが可能となり、日本においても、臨床試験情報の可用性、透明性の担保が可能となると考えられる。各国の臨床試験登録機関が2017年5月のICTRP合意を実現するまでの期限は設定されていないが、米国、EUともに結果の公開はすでに実現しており、日本でも早急に結果の公開への道筋を作る必要性がある。今後の研究開発の国際化が進展する中、他国との調和も視野に入れ、法令・判例の情報収集を継続する必要が大きい。

公開日・更新日

公開日
2019-05-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2019-05-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は国内外の臨床試験の結果の登録・公開の現状を明らかにするとともに、学術的基準に照らして望ましいあり方を探る研究である。臨床研究・医療情報記録の記載事項を標準化しその情報を共有・活用するための方法として臨床試験データの交換標準形式(CDISC)の応用可能性についても研究・評価を進めた。また、臨床試験情報の扱いにおける知的財産権の取り扱いに関する法理・判例を整理し、学術的な基盤を構築した意義は大きい。
臨床的観点からの成果
本研究は直接臨床研究にかかわる内容ではないが、臨床試験・治験の推進に大きく寄与する内容を含んでおり、間接的に臨床研究の推進を支援するものである。臨床試験を取り巻く枠組み-特に臨床試験の結果公開にかかる制度・運用上の課題を明らかにして、その改善のための具体的なポイントを明示したことは臨床研究の環境整備をしたと考えられ、臨床的視点からも一定の成果を残したと言える。
ガイドライン等の開発
本研究では、臨床試験の結果の登録・公開がどのような項目・形式で行われるのが望ましいかを整理し、これに基づいて我が国の試験登録システム整備への指針を提示し、具体化するための道筋を示した。これはガイドラインを作成し利用者が実践することと本質的に同じ意味を持つと考えられる。また、臨床試験における利益相反管理の国内外の法令・制度を整理し提言を行うことで、臨床研究法における利益相反管理に関する指針作成に資するものであった。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、平成29年4月制定、翌4月施行の「臨床研究法」および「同法施行規則」の下、設置された「臨床研究情報公開システム(jRCT)」設計の指針となった。同システムは、国際基準に沿っており、世界保健機関WHOによる国際規格準拠の認証を受ける予定である。同システムにより臨床試験情報の透明性が増し、行政による情報の捕捉が容易になる。また、知的財産権の取扱いは、臨床試験の登録・公開制度の運用上、重要な課題であり、臨床研究法の施行、同システムの運用を円滑に行う為の法理を整理した行政的意義は大きい。
その他のインパクト
本研究の成果は、我が国の臨床試験(研究)登録ネットワーク(JPRN)の構成機関(日本医薬情報センター、日本医師会治験推進センター、大学病院医療情報ネットワーク研究センター)とも共有され、JPRNが臨床試験の結果公開を進める上での大きな指針となった。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201706035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,187,000円
差引額 [(1)-(2)]
13,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,945,998円
人件費・謝金 0円
旅費 837,557円
その他 2,404,076円
間接経費 0円
合計 5,187,631円

備考

備考
補助金確定額と支出合計額の差分631円は、自己資金にて補填

公開日・更新日

公開日
2019-05-22
更新日
-