医療職種間におけるタスク・シフティング等についての研究

文献情報

文献番号
201706033A
報告書区分
総括
研究課題名
医療職種間におけるタスク・シフティング等についての研究
課題番号
H29-特別-指定-033
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 左和子(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室)
  • 磯部 陽(国立病院機構東京医療センター 外科・統括診療部)
  • 戎 初代(東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部)
  • 山内 英子(聖路加国際大学 聖路加国際病院 乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,632,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の医療の質や安全性の向上、および高度化・複雑化に伴う業務の増大に対応するため、多職種な医療従事者が各々の高い専門性に基づく目的と情報を共有し、業務を分担するとともに互いに連携・補充し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する「チーム医療」が様々な医療現場において実施されている。そこで本研究では、現行法制化のもとで、医師から看護師等への先進的なタスク・シフティングの事例について、その一般化の可能性等について検討を行うことを目的とした。
 また、National Clinical Database(以下、NCD)を用いて、多職種・他部門の協業を主軸とするチーム医療に関わる組織体制や診療プロセスと患者のアウトカムの相関関係の分析方法の検討を目的とした。
研究方法
本調査では、医師から看護師等へのタスク・シフティングについての先進的な事例についての調査を行うことで、安全性や医療の質の観点のエビデンスを創出した上で、評価を行った。
具体的には、国立病院機構東京医療センター(以下「東京医療センター」)、聖路加国際病院(以下「聖路加」)、東京ベイ・浦安市川医療センター(以下「東京ベイ」)のタスク・シフティングの先進的な事例について、タスク・シフティングを行う看護師等の育成・研修カリキュラムや、そのタスク・シフティングの内容の組み合わせについて、ヒアリング・実地調査を行った。また、その他にも国内の医療機関、教育機関に実地調査を行い、医師から看護師等へのタスク・シフティングに関する収集を行った。さらには、米国におけるNurse Practitioners (NP)とPhysician Assistants (PA)制度等に係る文献調査を行うとともに、米国ハワイ州オアフ島において、NPとPAの制度と実態についてヒアリング調査を行なった。 NCDについては、NCD登録システム上にウェブページを利用して、各施設の成人心臓外科領域について組織体制などのアンケート調査を実施した。
結果と考察
本研究では、医師から看護師へのタスク・シフティング について先進的な事例について国内外での調査を行い、安全性や医療の質の観点のエビデンスを確保した上での評価を行った。国内で先進的な取組みを行っている医療機関では、医師と看護師との信頼関係や取組み委譲が適切な管理下のもとで実施されていた。
 また、米国の病院でも外科系、救急、入院病棟におけるNPとPAの導入が進み、医師からはこれらの役割なくしては医療が停滞するとのコメントがあった。米国では、地域医療においても医師不足の地域ではNPの活躍が認められた。医療の質や安全の担保についても適切な管理がされており、医師との連携が取れていた。調査結果から、日本においてもタスク・シフティングへのこれらの役割は一考に値し重要と思われた。さらに、各病院の実情に合った必要なタスク・シフティングが望まれるため、管理および安全確保については、国の政策や基準に則った上で、各医療機関の規則などに基づいて実施される必要がある。この詳細については、今後の調査と研究が不可欠である。
 NCDを用いた診療プロセスに関する情報収集の手段として、施設調査は有効であると示唆された。また、方法論および着目すべき視点について、今後、さらなる知見の集積は必要である。
結論
本研究では、今回視察・調査を行った先進的な医療機関では、看護師がこれまで医師が実施していた業務を特定行為に則り、さらには医師の指示に基づきタスク・シフティングを拡大している現状が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2019-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、米国におけるNurse Practitioner(NP)とPhysician Assistant (PA)の役割の実態を明らかにし、医師の労働時間短縮と労働軽減にはAPRN(専門看護師、NP, 助産師、麻酔看護師)やPAのような役割が大きなサポートとなり、各医療機関のリスク管理のもとで実践されていることを明らかにした。NCDを用いた多職種・他部門の協業を主軸とするチーム医療に関わる組織体制や診療プロセスと患者のアウトカムの相関関係の分析は可能であることを示唆した。
臨床的観点からの成果
本研究では、国内において勤務時間が極めて長いと指摘されている外科系医師、救急科等における医師の診療業務を先進的に看護師にタスク・シフティングしている医療機関の事例について検討した。本研究の成果からは医師と看護師との信頼関係や取組み委譲が適切な管理下のもとで実施されており、それが臨床を円滑に行い、医師の過重労働や疲弊を軽減ことに多大な貢献をすることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本結果は、平成30年度通常国会にて審議されている労働基準法改正法施行5年後を目途に適用されている時間外労働の上限規制への解決策の一つとして国で検討されることが期待される。
令和元年11月20日開催「第3回医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」では本研究の資料が「参考資料1-3」として使用された。
(臨床工学技士によるタスク・シフト/タスク・シェア調査
~奈良県立医科大学附属病院麻酔科における1ヶ月観察研究~)
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201706033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,040,000円
(2)補助金確定額
1,040,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 41,940円
人件費・謝金 120,710円
旅費 477,350円
その他 160,000円
間接経費 240,000円
合計 1,040,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-05-22
更新日
-