無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究

文献情報

文献番号
201706027A
報告書区分
総括
研究課題名
無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究
課題番号
H29-特別-指定-027
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 石渡 勇(石渡産婦人科病院)
  • 板倉 敦夫(順天堂大学 医学部産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無痛分娩の実態把握については、わが国では平成21年度に厚生労働科学研究「妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究」において、分担研究「全国の分娩取り扱い施設における麻酔科診療実態調査」により調査が行われているが、これ以後に無痛分娩に関する全国施設調査は行われておらず、その現状は不明である。しかしながら、平成29年に無痛分娩時に発生した複数の重篤事例が報告されているため、実態把握と安全管理体制の構築が急務となっている。そのためには、現状の実態把握と分析を行い安心・安全な管理体制を構築することが緊急に必要と考えられる。本研究は、このような緊急課題について対応し、安全な無痛分娩の提供体制の構築のために必要な方策を検討し提言を行うことを目的とする。
実態把握については、日本産婦人科医会が平成29年度に実施している無痛分娩の実態に関する実態調査の分析を行う。また、無痛分娩の安全性についての分析を行う。
さらにわが国の実情を踏まえた無痛分娩の安全性向上のための方策を検討する。
これらの研究成果を元に安全な無痛分娩の提供体制の構築のために必要な方策を検討し提言を行う。
研究方法
専門学会・団体からの推薦による研究協力者等(日本医師会、日本看護協会、日本麻酔科学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本周産期・新生児医学会、日本産科麻酔学会、医療安全の専門家、患者(妊産婦)の立場の方による検討によって、産婦人科領域だけではない医療界全体としてのコンセンサス形成をめざすこととし、以下の3項目を基本方針として研究を進めることになった。①本件の社会的関心の強さに配慮し、特に、検討のプロセスの公開・透明化に配慮して研究を進める。②「今回の事故報道等に関連して日本社会に生じている無痛分娩の安全性に関する懸念」を、診療内容の透明化、公開、共有を通じて払拭していくための方策を立案、共有する。③「医療安全に関しては、ダブルスタンダードは社会的に許容されない」という認識のもと、世界標準と同等のレベルの、病院・診療所で共通の安全対策の標準的方法に関するコンセンサス形成をはかる。
「公開検討会」と「作業部会」という構成で、検討を進めることとした。
無痛分娩の安全性について社会の理解を深めるために、研究班の研究成果を報告する機会を設ける必要性があると考えられたため、市民公開講座の開催を予定し、準備を進めることとした。
専門学会・団体によるコンセンサスに基づいて「提言」を作成し公表することとした。
無痛分娩の安全性確保のためには、本研究を通じて形成された具体的な施策に関する専門学会・団体によるコンセンサスを、平成30年度以降実現させていくための方策についてもあわせて検討し、各学会・団体で共通認識に基づいて連携して対応していく必要があるため、その方向での検討も平行して進めることとした。
結果と考察
1) 班会議開催:以下の会議を開催した。
 (ア) 平成29年8月23日:第1回公開検討会
 (イ) 平成29年9月16日:第1回作業部会
 (ウ) 平成29年10月29日:第2回作業部会
 (エ) 平成29年11月22日:第2回公開検討会
 (オ) 平成30年1月11日:第3回作業部会
 (カ) 平成30年2月12日:第3回公開検討会
2) 班会議以外の会議開催
 (ア) 平成30年3月4日:「市民公開講座 無痛分娩の安全性について」:無痛分娩の安全性に関する社会啓発を目的として市民公開講座を開催した。
 (イ) 平成30年3月31日:「無痛分娩に関するワーキンググループ(仮称)」準備委員会(第1回会議)を開催した。
3) 検討課題の抽出:班会議での検討の結果、以下のような課題が抽出され、それぞれの課題ごとに検討が進められた。
 (ア) 無痛分娩の安全性に関する検討
 (イ) 無痛分娩の安全な提供体制の構築に向けた検討
 (ウ) 「無痛分娩の安全性確保のための平成30年度以降の体制づくり」に関する検討
4) 「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」のとりまとめと公表:提言を作成し、平成30年3月29日に記者会見を行って公表した。
結論
平成29年に無痛分娩時に発生した複数の重篤事例が報告されたことを受け、わが国の無痛分娩に関係する学会・団体から構成員の推薦を受けて研究班を構成した。日本産婦人科医会が平成29年度に実施した無痛分娩の実態に関する実態調査結果の分析を行うとともに、わが国の実情を踏まえた無痛分娩の安全性向上のための方策を検討し、安全な無痛分娩の提供体制の構築のために必要な方策に関する提言を行った。

公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成29年に無痛分娩時に発生した複数の重篤事例が報告されたことを受け、わが国の無痛分娩に関係する学会・団体から構成員の推薦を受けて研究班を構成した。日本産婦人科医会が平成29年度に実施した無痛分娩の実態に関する実態調査結果の分析を行うとともに、わが国の実情を踏まえた無痛分娩の安全性向上のための方策を検討し、安全な無痛分娩の提供体制の構築のために必要な方策に関する提言を行った。
臨床的観点からの成果
本研究の結果、無痛分娩の実施実態が明らかになるとともに、安全な実施体制を実現するために無痛分娩提供施設、関係学会・団体等が解決すべき課題が明確になった。安全で安心な地域分娩環境確保のために必要な国民への情報提供のあり方が明らかになった。
ガイドライン等の開発
関連学会・団体(日本医師会、日本看護協会、日本麻酔科学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本周産期・新生児医学会、日本産科麻酔学会、医療安全の専門家、患者(妊産婦)の立場の方)のコンセンサスに基づいた「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」を作成し、公表した。
その他行政的観点からの成果
本研究によってまとめられた提言は、平成30年4月11日開催の第61回社会保障審議会医療部会において報告された「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築について」に一部引用され、平成30年4月20日付で医政局総務課長・地域医療計画課長からの都道府県衛生主管部(局)長及び関係学会・団体宛の周知依頼の「無痛分娩の安全な提供体制の構築について」の内容に反映された。
その他のインパクト
平成29年8月23日:第1回公開検討会
平成29年11月22日:第2回公開検討会
平成30年2月12日:第3回公開検討会
平成30年3月4日:「市民公開講座 無痛分娩の安全性について」:無痛分娩の安全性に関する社会啓発を目的として市民公開講座を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
平成30年4月20日付医政局総務課長・地域医療計画課長の「無痛分娩の安全な提供体制の構築について」の内容に反映された。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成30年3月4日:「市民公開講座 無痛分娩の安全性について」を開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201706027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,160,000円
(2)補助金確定額
3,847,000円
差引額 [(1)-(2)]
313,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 247,739円
人件費・謝金 100,000円
旅費 382,821円
その他 2,157,367円
間接経費 960,000円
合計 3,847,927円

備考

備考
補助金確定額と支出合計額の差分は、自己資金にて補填

公開日・更新日

公開日
2019-05-22
更新日
-