看護師等学校養成所における専門職連携教育の推進方策に関する研究

文献情報

文献番号
201706025A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師等学校養成所における専門職連携教育の推進方策に関する研究
課題番号
H29-特別-指定-025
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 郁子(千葉大学 大学院看護学研究科附属専門職連携教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井出 成美(千葉大学 大学院看護学研究科附属専門職連携教育研究センター)
  • 渡辺 美保子(ポラリス保健看護学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
専門職連携教育(Interprofessional Education:以下IPEとする)は、それぞれの職種の専門性の理解を促すだけにとどまらない。今後の地域包括ケアの質を向上させるために必要な実践であり、専門職連携実践能力を生涯発達させるためには、基礎教育から、患者利用者に関わる全ての健康関連専門職に必須な能力として位置付けられる。本研究は、看護師等学校養成所におけるIPEを推進することを目的に、基礎教育の実態把握のための調査及び課題の整理を行い、日本において実現可能なIPEの展開方法を提示するものである。
研究方法
本研究は5つの研究から構成される。研究1-1看護師等学校養成所および、研究1⁻2他の健康関連専門職学校養成所への実態調査、研究2看護教育者等へのインタビュー調査によるIPEの実施に関する課題の明確化、研究3教育展開例における評価短期間研修例に関する研究、研究4教育展開例における評価経年蓄積型IPEに関する研究、研究5 IPE先進国へのインタビュー調査により日本における教育展開についてヒアリングおよび課題の明確化、である。以上、5つの研究から得られた結果をもとに、看護師等学校養成所におけるIPEの展開方法についてシンポジウムを開催し、その結果も踏まえて、看護師等学校養成所でのIPE実装に向けた手順書(案)の検討を行った。
結果と考察
IPEを実装している看護師等学校養成所では、1284課程に対して、64課程であるのに対して、医療福祉介護専門職養成学校では、1406課程に対して164課程であった。看護専門学校におけるIPEは他領域の専門学校と比較して実装割合が低い要因として、カウンターパート校の獲得や他領域の教員との連携協働に関する障壁が推測された。看護師等学校養成所教員がIPEに取り組むための課題は、「教職員がIPEの知識と情報を得て、IPE実装にコミットすること」「IPEの知識を獲得すること」であり、そのうえで「IPEを推進するための体制づくり」「IPEのカウンターパートの獲得」「IPEを統合したカリキュラムマネジメント」であると考えられた。
 国内のIPE先行事例を主導した教員12名へのインタビュー調査から、IPE開始期の課題として、「できることから始めること」「教員間の協議における教員の連携能力の向上」などが挙げられた。またIPE実施評価期の課題として、「教員間の協議を行う組織づくり」などがあげられた。
 また教育展開事例および欧州先行事例から、IPEは短期的な教育効果が認められるが、低学年での学習の定着には課題があること、IPEによって専門職連携実践能力の獲得が認めらえること、インタープロフェッショナルな社会化の促進から言えば、なるべく低学年のうちにIPEをスタートすることが望ましいことが示唆された。
 以上の結果から、看護師等学校養成所におけるIPE実装の課題を、IPEをスタートすることと、IPEを継続することの大きく二つの分類し、この課題に対応した、実現可能な基礎教育IPE実装手順書案を作成した。ガイドライン項目案は以下の通りである。
1)教員がIPEの知識と情報を得てIPE実装にコミットする。2)IPEに関わる人すべてを巻き込み計画を立てる。3)IPEカリキュラムを構築する。4)IPEをスタートする。5)信頼されるIPE科目にする。
結論
 本研究は、看護師等学校養成所における専門職連携教育を推進することを目的に、基礎教育の実態把握のための調査及び課題の整理をし、日本の看護師等学校養成所において実現可能なIPEの展開方法をガイドライン案として提示した。日本の看護師等学校養成所におけるIPE展開方法の課題を「IPEをスタートする」「IPEを継続する」の二つに大きく分類して提示した。これらの課題に基づき、実現可能な基礎教育IPEの実装手順書案として、1)教員がIPEの知識と情報を得てIPE実装にコミットする2)IPEに関わる人すべてを巻き込み計画を立てる3)IPEカリキュラムを構築する、4)IPEをスタートする、5)信頼されるIPE科目にする、を提示した。
今後はこのガイドラインに基づき、全国の看護師等学校養成所で展開可能なIPEに必要なカリキュラムマネジメント、科目のデザイン、教員へのファカルテイデベロップメントなどの研修計画の立案実施評価を行うことが課題である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本で初めて全国調査を実施し、看護師等学校養成所および医師・歯科医師・薬剤師養成課程をもつ大学、及び医療関係職種養成施設における専門職連携教育(IPE)の実態を明らかにしたこと、教育展開例での学習成果を実証したこと、IPEの経験豊富な教員への調査により日本におけるIPE実装の経験を明らかにしたことが専門的観点からの成果である。
臨床的観点からの成果
IPE実装のための課題の明確化を行ったことで、今後の看護師等学校養成所および医師・歯科医師・薬剤師養成課程をもつ大学、及び医療関係職種養成施設における専門職連携教育(IPE)の普及に資する結果を得たことが臨床的観点からの成果である。
ガイドライン等の開発
厚生労働行政推進調査事業費(厚生労働科学特別研究事業)「看護師等学校養成所における専門職連携教育の推進方策に関する研究」班 看護師等学校養成所におけるIPEの実装手順書案 を作成した。2019年には看護専門学校におけるIPEガイドラインが学校協議会にて配布された。
その他行政的観点からの成果
千葉大学看護学研究科附属専門職連携教育研究センターの平成30年度事業として、IPEカリキュラムマネジメント研修、IPE基礎教育授業開発研修を開発し参加者を募集している。令和元年も引き続き開催し参加者が拡大している。令和3年度のこれらの研究受講者は66名であった。
その他のインパクト
看護師等学校養成所における専門職連携教育の推進方策を検討するための情報共有および今後の検討課題の明確化を目的として、2018年3月16日、千葉大学亥鼻キャンパス薬学部創立120周年記念講堂において、シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
42件
講演34件、シンポジウム2、セミナー1、著書2、論考3

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
井出 成美, 伊藤 裕佳, 酒井 郁子
専門職連携教育実装における開始期の課題と対処
日本保健医療福祉連携教育学会学術誌・保健医療福祉連携 , 13 (2) , 125-134  (2020)
https://doi.org/10.32217/jaipe.13.2_125
原著論文2
Takeshi Yamamoto, Michiyo Yamamoto, Hiroshi Abe, Ikuko Sakai
Exploring Barriers and Benefits of Implementing Interprofessional Education at Higher Health Professions Education Institutions in Japan
Journal of Allied Health , 50 (2) , 97-103  (2021)

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201706025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,968,000円
(2)補助金確定額
6,968,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 764,714円
人件費・謝金 1,464,007円
旅費 1,546,185円
その他 1,585,094円
間接経費 1,608,000円
合計 6,968,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
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