アレルギー疾患対策に関する研究基盤の構築

文献情報

文献番号
201706019A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患対策に関する研究基盤の構築
課題番号
H29-特別-指定-019
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
玉利 真由美(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 藤枝 重治(国立大学法人福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部)
  • 足立 剛也(国立研究法人 日本医療研究開発機構 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,213,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患は罹患者数も多く、社会問題化している昨今、アレルギー疾患対策基本法(以下、基本法)が2014 (平成26) 年6月に成立し、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(以下、基本指針)が2017 (平成29) 年3月に告示された。この中で諸問題の解決に向け、疫学研究、基礎研究、治療開発及び臨床研究の長期的かつ戦略的な推進が必要であることが示されている。本研究班は免疫アレルギー疾患の効果的で有意義な研究を推進するための基盤形成を目的とし、研究戦略の報告書を作成した。
研究方法
2017年8月に第1回研究者ミーティングを行い、本研究班の趣意書について説明を行い了承を得た。中心となる7つの学会(日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本皮膚科学会、日本眼科学会、日本呼吸器学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本免疫学会)の理事長より2名(教授クラスのシニア研究者1名、原則として45歳以下の若手研究者1名)の研究協力者を推薦していただくことした。
2018年8月末に各研究分担者及び協力者にアンケートを実施した。横断的問題 複数の診療科にまたがる問題、垂直的問題 母体→乳幼児→小児→成人への移行、国際連携  データベースの構築と活用(希少疾患で先行)を含め、過去の取り組み、現状、取り組むべき課題についての意見を収集した。
2018年10月17日に第1回検討協議会を行なった。アンケートの結果、抽出されたキーワードについて、どの課題を優先するべきか討議した。その結果、26の優先課題に絞り込んだ。さらに研究分担者に優先順位アンケートを行い、Actionを3つの柱として選出した。担当者によるレポート作成(現状把握と分析検討(日本の強みと弱み)、短期・中期・長期的な視点、現在の問題点・目的・期待される成果)を行なった。
2018年1月17日に小グループミーティングを行い、各レポートの内容について討議した。加筆・修正すべき点や強調すべき点の討議を行った。
2018年2月23日に第2回検討協議会を開催し、小グループミーティングで討議された内容を反映させた報告書案について討議を行なった。
2018年3月第2回検討協議会での討議の内容を反映させた報告書案を作成した。
結果と考察
今後取り組むべき優先課題として、下記の12の小課題を含む3つのアクションプランを策定した。
Action 1. 先制治療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究開発
Ⅰa. Deep-phenotyping、マルチオミックス統合解析等に基づく免疫アレルギー疾患の多様性の理解と層別化に資する基盤研究
Ⅰb. Precision Medicineに立脚した将来の先制治療の実用化を目指す研究開発
Ⅰc. 宿主因子と外的因子の相関に着目した免疫アレルギー解析の推進
Ⅰd. 臓器連関/異分野融合に関する免疫アレルギー研究開発
Action 2. 免疫アレルギー研究の効果的な推進と評価に関する横断研究開発
Ⅱa. Patient Public Involvement (PPI) の推進に関する研究
Ⅱb. 免疫アレルギー領域におけるunmet medical needsの調査研究開発
Ⅱc. 免疫アレルギー領域に係るCentral IRBや同意取得プラットフォーム等
   臨床研究基盤構築に関する研究開発
Ⅱd. 免疫アレルギー領域における国際連携, 人材育成に関する基盤構築研究
Action 3. ライフステージ等免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究開発
Ⅲa. 母子関連を含めた小児免疫アレルギー疾患研究開発
Ⅲb. 高齢者を含めたAdult-onset免疫アレルギー疾患研究開発
Ⅲc. 重症・難治性の免疫アレルギー疾患研究開発
Ⅲd. 希少疾患と関連する免疫アレルギー疾患研究開発
今回の研究戦略の策定にあたり、我が国における免疫アレルギー疾患研究開発が有する日本の独自性・優位性を最大限活用することは、世界に先駆けた研究開発を推進する上で極めて重要となると考えられた。今後、患者さんを含む国民の意見を有機的に統合した免疫アレルギー研究開発の基盤の醸成、小児から成人への円滑なトランジッション、国際連携可能な研究基盤情報の構築とグローバルデータシェアリングの推進等が必要と考えられた。
結論
複数の関連学会の協力のもと、本研究班において、我が国の免疫アレルギー研究10カ年戦略策定に資する本報告書を作成した。10年後のビジョンとして、全国民の一人一人の貢献と国内外の産学官民連携に基づく、ライフステージ毎のPrecision Medicineの実現により、免疫アレルギー患者数の減少と重症患者死亡の根絶を目指すことを設定した。前述のゴールに向けたアクションプランをまとめた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201706019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本・欧米の研究助成機関の成果のインパクト解析を行ない、Allergy誌に発表した。我が国のみならず国際的に免疫アレルギー研究分野の強み・弱み・可能性を明らかにした研究成果は海外でも注目を浴び、Allergy誌 (Adachi et al. Allergy 2022)、および科学誌Scienceを発刊するAAAS (American Association for Advancement of Science) のEurekAlert!にも取り上げられた。
臨床的観点からの成果
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いてアドレナリン自己注射製剤の処方実態調査結果をAllergology International誌に発表した。アレルギー疾患に対する医療の均てん化・医療政策の評価に資する解析基盤を構築した。また、アレルギー性鼻炎の治療法の一つであるアレルゲン免疫療法に関する調査を行なった。その結果2014〜2019年度にスギ抗原に対するアレルゲン免疫療法のみを開始した総人数は、188,976人であった。年代別、年度毎に開始した人数も明らかとなった。
ガイドライン等の開発
令和3年度は特になし
その他行政的観点からの成果
令和3年度はレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いてアドレナリン自己注射製剤の処方実態調査結果をAllergology International誌に発表した。また、アレルギー性鼻炎の治療法の一つであるアレルゲン免疫療法に関する調査を行なった。免疫アレルギー疾患の罹患状況、診療状況の現状把握、および経年的変化の把握は、今後の研究戦略および政策研究の方針を策定するための資料として活用されることが期待される。
その他のインパクト
令和3年度は、空間提供システム、制御装置、サーバ装置、制御方法、配信方法の特許出願を行なった。研究者の家族を支援する留学助成金「Cheiron-GIFTS」についてJapan XR Science Forum 2021にて講演した。産官学連携に向けた研究ハッカソンイベント「Hacking Dermatology」、留学推進シンポジウム「留学のすゝめ」、各診療科とコメディカルの垣根を越えるバーチャル教育事業「出前授業」、そして、海外で活躍する日本人研究者を対象とした「UJA論文賞」を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
Allergy、Allergology Internationalに1報づつ報告した。
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
令和3年度、ハッカソンイベント、留学のすゝめ、出前授業、UJA論文賞が行われた。

特許

特許の名称
空間提供システム、制御装置、サーバ装置、制御方法、配信方法
詳細情報
分類:
特許番号: 整理番号:1220647, 国際特許分類: A63F 13/00
発明者名: 足立剛也、坂下雅文、雨宮智浩、喜田龍一
権利者名: 京都府立医科大学、株式会社HIKKY
国内外の別: 国際特許分類

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Adachi T, Ogawa Y, Fukushi T, et al.
Research impact analysis of international funding agencies in the realm of allergy and immunology.
Allergy , 77 (5) , 1602-1606  (2022)
10.1111/all.15249
原著論文2
Sato S, Kainuma K, Noda T, et al.
Evaluation of adrenaline auto-injector prescription profiles: A population-based, retrospective cohort study within the National Insurance Claims Database of Japan.
Allergology International  (2022)
10.1016/j.alit.2022.02.002.

公開日・更新日

公開日
2021-07-08
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201706019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,476,000円
(2)補助金確定額
3,938,199円
差引額 [(1)-(2)]
1,537,801円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 723,029円
人件費・謝金 606,011円
旅費 1,193,270円
その他 152,889円
間接経費 1,263,000円
合計 3,938,199円

備考

備考
本研究班においては報告書の策定にあたり、計4回の班会議を開催し討議を行なった。当初、都内の会議室を借りての開催を計画していたが、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)内の会議室、また東京慈恵会医科大学内の会議室を安価で使用できたため、会議開催費用分の経費が大幅に減少した。

公開日・更新日

公開日
2019-05-24
更新日
-