文献情報
文献番号
201705006A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の世界保健総会等における効果的なプレゼンスの確立に関する研究
課題番号
H29-地球規模-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学)
研究分担者(所属機関)
- 仲佐 保(国立国際医療研究センター 国際保健学)
- 明石 秀親(国立国際医療研究センター 国際保健学)
- 三好知明(国立国際医療研究センター 国際保健学)
- 野村周平(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学 )
- 阿部 サラ(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学)
- Md Mizanur Rahman(エムディー ミジャヌール ラーマン)( 東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学)
- 齋藤 英子(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学 )
- 米岡大輔(東京大学大学院医学研究科 統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,031,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2016年のG7伊勢志摩サミット・神戸保健大臣会合では、議長国である日本が中心となり世界を巻き込んだ政策形成が行われ、グローバルヘルス分野における我が国のプレゼンスが確実に示された。G7を終えた現在も、我が国が主導してグローバルヘルスの課題を前進させ、主要会合において効果的に議論を先導する役割を果たす必要がある。しかし、これまで、国際的議論の場における戦略的介入に関する系統的な分析は我が国では行われていない。 政策分析と定量的分析の2つのアプローチを有機的に用いて、今後のWHO主要会合において我が国がより効果的にイニシアチブを取るための方策を提案する。
研究方法
1) 2016年G7伊勢志摩サミットを通じた、我が国のグローバルヘルス分野への貢献に関する分析
2) 我が国がグローバルヘルス分野の重点課題としてあげるUniversal Health Coverage(UHC)に焦点を当て、我が国の医療保健制度を包括的に分析し、諸外国がUHC達成を目指すうえで有用な知見の抽出
3) 上記2)の成果がどのように諸外国にって有用となりうるかを検討するために、アジア諸国を中心とした低中所得国におけるUHC達成状況の評価
4) タイと共同でグローバルヘルス領域の人材育成ワークショーップの開催並びに人材育成プログラムの開発
2) 我が国がグローバルヘルス分野の重点課題としてあげるUniversal Health Coverage(UHC)に焦点を当て、我が国の医療保健制度を包括的に分析し、諸外国がUHC達成を目指すうえで有用な知見の抽出
3) 上記2)の成果がどのように諸外国にって有用となりうるかを検討するために、アジア諸国を中心とした低中所得国におけるUHC達成状況の評価
4) タイと共同でグローバルヘルス領域の人材育成ワークショーップの開催並びに人材育成プログラムの開発
結果と考察
1) G7を通じた我が国の貢献については、実際にG7伊勢志摩のプロセスに関わった研究者・行政官を中心に、UHCを取り上げて分析を行い、その成果はWHO bulletinに掲載された。平成30年以降についても引き続き、Health Security、Antimicrobial Resistance、医薬品R&D、結核対策、非感染性疾患(NCDs)等の主要課題における我が国の貢献について検証を行って行く。
2) グローバルヘルスにおける我が国のプレゼンス向上を目指す上で、グローバルヘルスの主要課題について我が国での現状及び課題について適切に把握することが必要である。平成29度はUHCに焦点を当て、世界で最も高齢化が進んだ日本の医療制度を英語で包括的に取りまとめたJapan Health Systems in Transition(HiT)レポートを刊行した。本レポートは今後広く、日本の保健医療制度を参照する際の有用なツールとなることが期待される。
日本の医療制度研究に並行して、我が国の健康指標についても包括的検証を行なった。少子高齢化及び疾病構造の変化が医療制度にもたらす影響は日本全体の課題であるが、その影響は地域(都道府県)によって大きく異なる。GDB(Global Burden of Disease)の手法を用いて、1990年から2015年の間における各都道府県における平均寿命、健康寿命、主要死因、DALY及びリスク因子等に関する都道府県レベルでの変化に関する分析を行った。1990年から2015年の間で、平均寿命は4.3年、健康寿命は3.5年の伸びが見られたが、同時に都道府県間の格差も2.5年から3.1年(平均寿命)、2.3年から2.7年(健康寿命)へと拡大が見られた。都道府県格差が生じる要因としてリスク因子、医療インプット(医療従事者数等)の分析を行ったが有意差は得られなかった。平成30年度は都道府県の健康格差を生む要因についてより詳細な分析を行っていく予定である。
3) 上記2)の成果がどのように諸外国にって有用となりうるかを検討するために、アフガニスタン、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、インドの合計5カ国におけるUHC達成状況の評価を実施した。平成30年度は対象国を拡大するとともに、1), 2)で得られた知見を踏まえ、UHC分野において我が国がより良い貢献をできるための各種方策について提言を取りまとめて行く。
4) 11月にタイとの共催で、日本にてGlobal Health Diplomacy Workshopを開催。タイ側からアドバイザーを招聘した他、タイ若手実務者・研究者も4名招聘し能力強化を行なった。なお、本ワークショップは一般公開とし、全11カ国から約40名の参加があった。また、5月に開催された世界保健総会に参加し会期中に技術的支援を提供した。
2) グローバルヘルスにおける我が国のプレゼンス向上を目指す上で、グローバルヘルスの主要課題について我が国での現状及び課題について適切に把握することが必要である。平成29度はUHCに焦点を当て、世界で最も高齢化が進んだ日本の医療制度を英語で包括的に取りまとめたJapan Health Systems in Transition(HiT)レポートを刊行した。本レポートは今後広く、日本の保健医療制度を参照する際の有用なツールとなることが期待される。
日本の医療制度研究に並行して、我が国の健康指標についても包括的検証を行なった。少子高齢化及び疾病構造の変化が医療制度にもたらす影響は日本全体の課題であるが、その影響は地域(都道府県)によって大きく異なる。GDB(Global Burden of Disease)の手法を用いて、1990年から2015年の間における各都道府県における平均寿命、健康寿命、主要死因、DALY及びリスク因子等に関する都道府県レベルでの変化に関する分析を行った。1990年から2015年の間で、平均寿命は4.3年、健康寿命は3.5年の伸びが見られたが、同時に都道府県間の格差も2.5年から3.1年(平均寿命)、2.3年から2.7年(健康寿命)へと拡大が見られた。都道府県格差が生じる要因としてリスク因子、医療インプット(医療従事者数等)の分析を行ったが有意差は得られなかった。平成30年度は都道府県の健康格差を生む要因についてより詳細な分析を行っていく予定である。
3) 上記2)の成果がどのように諸外国にって有用となりうるかを検討するために、アフガニスタン、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、インドの合計5カ国におけるUHC達成状況の評価を実施した。平成30年度は対象国を拡大するとともに、1), 2)で得られた知見を踏まえ、UHC分野において我が国がより良い貢献をできるための各種方策について提言を取りまとめて行く。
4) 11月にタイとの共催で、日本にてGlobal Health Diplomacy Workshopを開催。タイ側からアドバイザーを招聘した他、タイ若手実務者・研究者も4名招聘し能力強化を行なった。なお、本ワークショップは一般公開とし、全11カ国から約40名の参加があった。また、5月に開催された世界保健総会に参加し会期中に技術的支援を提供した。
結論
本研究の成果は、我が国のグローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献の強化に直接資するものであり、我が国の国際保健外交戦略とも合致した内容である。次年度以降についても、政府へ向けたWHO主要会合のための戦略提言書、学術論文、効果的・戦略的介入のためのマニュアル開発とワークショップ開催等を実施の予定。
公開日・更新日
公開日
2018-07-05
更新日
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