ポスト国連ミレニアム開発目標における保健関連及びその他目標の採択過程、実施体制と目標間の関連性の研究

文献情報

文献番号
201705003A
報告書区分
総括
研究課題名
ポスト国連ミレニアム開発目標における保健関連及びその他目標の採択過程、実施体制と目標間の関連性の研究
課題番号
H27-地球規模-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
村上 仁(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
  • 池上清子(PSD(Partners forSustainable Development))
  • 大橋正明(聖心女子大学文学部人間関係学科)
  • 高橋華生子(明治大学情報コミュニケーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,654,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的1:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)採択と、その後の実施体制を把握・報告。
研究目的2:保健関連目標・ターゲット達成(2030年まで)に向けた実施体制と、モニタリング・評価指標をめぐる議論を分析・報告。
研究目的3:保健関連目標と、それ以外の新たな国際アジェンダの関連性を、グローバルガバナンスの視点から分析・報告。
研究方法
SDGs全体の実施体制の調査を継続した。保健関連目標の実施体制とモニタリング・評価指標調査を継続した。保健関連目標と持続可能目標の関連を継続調査した。シンポジウムを2回開催(ハイレベル政治フォーラムにおける日本の自主的国家レビューのレビュー;東アジアにおけるSDGsの推進)、米国、バングラデシュ、インドで現地調査。韓国で国際会議出席。
結果と考察
SDGsは、 ポストMDGsの開発アジェンダと、地球サミット、リオ+20 を引き継いだ環境アジェンダである持続可能な開発概念が融合して形成された。リオ+20にて、国連持続可能な開発委員会(CSD: Committee for Sustainable Development)をハイレベル政治フォーラム(HLPF: High Level Political Forum)に発展的改組することを決定。2013年7月、国連決議67/290に基づき、HLPFにてポスト2015年開発アジェンダに関わる実施の定期的レビューを2016年より毎年実施することが定められた。2017年のHLPFにおける日本の自発的国家レビュー(Voluntary National Review:VNR)発表を平成29年9月29日に開催したシンポジウムでレビューしたところ、VNR作成におけるステークホルダーの参加、指標設定とモニタリングという課題が浮上した。バングラデシュでは第7 次国家開発計画(5か年計画)と整合的にSDGsを進める体制を取り、ザンビアではSDGsのための技術委員会(SDGs technical committee)が中心的役割を果たす体制を取っていた。日本を含め、各国とも国内の既存政策・戦略にSDGsを整合させながら、取り組みを進めている。
2016年5月の第69回世界保健総会にて、「持続可能な開発に関する2030アジェンダにおける保健」に関する決議(WHA69.11)9)が採択された。決議は加盟国に対し、保健に関連するSDGsのゴールとターゲットを達成するため、国家、地域、グローバルレベルで包括的な行動をスケールアップすること、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成のため適切なスキルを持った保健人材を確保することを含む保健システム強化を優先づけることなどを要請している。WHO西太平洋地域事務局(WPRO)においては、「西太平洋地域においてSDGsを達成するための地域行動アジェンダ」を策定し、2016年10月の地域委員会がこれを承認した。
保健関連SDG(SDG3)と他のSDGsとのネクサスを捉える際、「健康の社会的決定要因(social determinants of health: SDH)」という概念が大変重要である。インドでのフィールド研究では、貧困や飢餓が、急速に保健サービスの民営化が進む中で、引き続き大きな健康阻害要因となっていることが明らかになった。また、途上国、新興国を含め急速な都市化が進む中で、都市居住環境と健康の課題が増大していることが明らかになった。特に東南アジアの大都市では、高齢化に伴う人口構成の急激な変化が起こっており、福祉政策を含む都市計画の見直しが必要とされる。
結論
今後の日本政府によるハイレベル政治フォーラム(HLPF)における自主的国家レビュー(VNR)の発表において(次回は2019年7月)、平成29年9月29日に開催したシンポジウムで明らかとなったように、作成時からの地方自治体、企業、市民社会団体、メジャーグループ(若者、障害者など)の参加と、明確な指標の提示(特にSDGs実施以前のベースライン値の確定・報告)が必要である。国内におけるSDGs実施指針における「2.健康・長寿の推進」の実施や、保健分野の国際協力において、ジェンダー、貧困、住生活などとの具体的な連携を模索することが不可欠である。本研究では、ジェンダー主流化、貧困、飢餓、都市居住環境などが、健康課題と密接に関連していることが明らかとなった。今後、SDG3と他のゴールに向けた取り組みを、レトリックでなくどのように政策的、実務的に調和させていくか、日本を含めた各国の取り組みが待たれる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201705003B
報告書区分
総合
研究課題名
ポスト国連ミレニアム開発目標における保健関連及びその他目標の採択過程、実施体制と目標間の関連性の研究
課題番号
H27-地球規模-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
村上 仁(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
  • 池上清子(Partners for Sustainable Development)
  • 大橋正明(聖心女子大学文学部人間関係学科)
  • 高橋華生子(明治大学情報コミュニケーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的1:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)採択と、その後の実施体制を把握・報告。
研究目的2:保健関連目標・ターゲット達成(2030年まで)に向けた実施体制と、モニタリング・評価指標をめぐる議論を分析・報告。
研究目的3:保健関連目標と、それ以外の新たな国際アジェンダの関連性を、グローバルガバナンスの視点から分析・報告。
研究方法
初年度9月の国連総会でのSDGs採択までは、採択に向けた動向を取りまとめた。採択後は、SDGs全体の実施体制に留意し、主要論点を取りまとめた。SDGs健康関連ゴール・ターゲット達成の実施体制の把握・調査を実施。また、持続可能な開発アジェンダの展開に向けた、グローバルな官民の動きを分析した。平成28年度はSDGs健康関連目標達成の実施体制に加え、モニタリング・評価指標をめぐる議論を把握・調査した。また、保健関連目標と持続可能目標の関連事項を具体的に掘り下げた。平成27年度はバングラデシュ、米国、ケニア、ザンビア、インドにて、平成28年度はパレスチナ、インドにて、平成29年度は米国、バングラデシュ、インドにて現地調査実施。平成28年度ケニアでシンポジウム実施。エクアドル、韓国で国際会議に出席。平成30年度シンポジウムを2回開催(ハイレベル政治フォーラムにおける日本の自主的国家レビューのレビュー;東アジアにおけるSDGsの推進)。
結果と考察
SDGsは、 ポストMDGsの開発アジェンダと、地球サミットならびにリオ+20 を引き継いだ環境アジェンダである持続可能な開発概念が融合して形成された。「持続可能な開発目標に関する政府間協議プロセス、オープン・ワーキング・グループ(OWG: Open Working Group)」の設立がリオ+20で合意され、国連総会での決議により、2013年1月に設立された。OWGは、全てのステークホルダーへ開かれたSDGsに関する包括的且つ透明な政府間交渉プロセスで、国の代表以外からも重要なインプットを得た。多くの加盟国や国代表以外のステークホルダーの参加が見られた反面、選択と集中の欠如が課題として挙げられる。2016年5月の第69回世界保健総会にて、「持続可能な開発に関する2030アジェンダにおける保健」に関する決議(WHA69.11)が採択された。決議は加盟国に対し、保健に関連するSDGsのゴールとターゲットを達成するため、国家、地域、グローバルレベルで包括的な行動をスケールアップすること、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)の達成のため適切なスキルを持つ保健人材を確保することを含む保健システム強化を優先づけることなどを要請している。WHO西太平洋地域事務局(WPRO)においては、「西太平洋地域において持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための地域行動アジェンダ」を策定し、2016年10月の地域委員会がこれを承認した。SDGsの保健目標(SDG3)以外の多くの目標は、健康の社会的決定要因である。本研究が平成28年度に実施したケニア、パレスチナの調査では、ジェンダー主流化が、リプロダクティブヘルスへのアクセスなどを通じて、健康に大きな影響を持つことが明らかになった。また、インドでのフィールド研究では、貧困や飢餓が、急速に保健サービスの民営化が進む中で、引き続き大きな健康阻害要因となっていることが明らかになった。また、途上国、新興国を含め急速な都市化が進む中で、都市居住環境と健康の課題が増大していることが明らかになった。
結論
SDGsの保健ゴール(SDG3:全ての人に健康と福祉を)と他のSDGsの関連につき、「健康の社会的決定要因」という視点で見ると、SDGsの保健目標(SDG3)以外の多くの目標は、健康の社会的決定要因であることがわかる。本研究では、ジェンダー主流化、貧困、飢餓、都市居住環境などが、健康課題と密接に関連していることが明らかとなった。今後、SDG3と他のゴールに向けた取り組みを、レトリックでなくどのように政策的、実務的に調和させていくか、日本を含めた各国の取り組みが待たれる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201705003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保健関連SDG(SDG3)と他のSDGsとのネクサスを捉える際、「健康の社会的決定要因」という概念が大変重要である。インドでのフィールド研究では、貧困や飢餓が、急速に保健サービスの民営化が進む中で、引き続き大きな健康阻害要因となっていることが明らかになった。また、途上国、新興国を含め急速な都市化が進む中で、都市居住環境と健康の課題が増大していることが明らかになった。特に東南アジアの大都市では、高齢化に伴う人口構成の急激な変化が起こっており、福祉政策を含む都市計画の見直しが必要とされる。
臨床的観点からの成果
該当せず。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
保健セクターは、health in all policies (HiAP)アプローチの視点を持ち、労働・雇用、幼少期、貧困対策、教育、障害者、消費者、住生活といった他セクターの健康の社会的決定要因に関与していくべきことを明らかにした。今後、IAEG-SDGs(機関間専門家グループ)が国連統計委員会を軸としてSDGs指標を収集し、グローバルなSDGsの進捗モニタリングが行われるが、社会的属性にかかるデータ入手の困難、国際比較性を欠く指標(Tier 3)など多くの課題が存在することがわかった。
その他のインパクト
学会シンポジウム:池上清子、デウォドロス・メレッセ、中谷比呂樹、垣本和宏、石井哲也、岡田未来、仲佐保.「持続可能な開発目標(SDGs)を考える」-保健と環境の視点から-.第30回日本国際保健医療学会学術大会.金沢.2016年11月.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
池上清子、デウォドロス・メレッセ、中谷比呂樹.et al.
第30回日本国際保健医療学会学術大会シンポジウム「持続可能な開発目標(SDGs)を考える」-保健と環境の視点から-.
国際保健医療 , 31 (2) , 149-153  (2016)

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
2022-06-16

収支報告書

文献番号
201705003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,654,000円
(2)補助金確定額
2,654,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 277,116円
人件費・謝金 67,427円
旅費 1,520,181円
その他 789,276円
間接経費 0円
合計 2,654,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-