持続可能性と科学的根拠に基づく保健関連ポストミレニアム開発目標の指標決定のプロセス分析と評価枠組みに関する研究

文献情報

文献番号
201705002A
報告書区分
総括
研究課題名
持続可能性と科学的根拠に基づく保健関連ポストミレニアム開発目標の指標決定のプロセス分析と評価枠組みに関する研究
課題番号
H27-地球規模-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 冨田 奈穂子(順天堂大学 医学部)
  • 下ヶ橋 雅樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
持続可能な開発目標(SDGs)のうち、目標2「飢餓(食料・栄養)」、目標3「保健」、目標6「水・衛生」の3領域に着目し、それらのモニタリング指標の改善等の動向について明らかにするとともに、わが国のSDGs対策の方向性についてもレビューを行った。また、平成29年度は単独分野の解析だけでなく、分野横断的な解析を進めた。
研究方法
いずれの分析においても公開されている二次資料と二次データを用い、政策レビューもしくは分析を行った。
結果と考察
①国際動向・比較:目標2・3・4のいずれにおいても、新規指標開発が必要とされるTierⅢに該当する項目は平成28年度のデータと比較して大きく低減し、継続したモニタリングが実施できる体制が整備された。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)についても、平成29年12月に新指標が世界銀行と世界保健機関から公表された。このUHC新指標によるデータ(指標3.8.1)と低栄養(指標2.1.1)ならびに上水道の衛生(指標6.1.1と6.1.2)との関連性を調べたところ、UHC指標はこれらの栄養ならびに水・衛生の評価値と有意な相関性を示した。また、低・中所得国における栄養失調の二重負荷について推定偏差値を用いて地域診断を行ったところ、低所得国では教育と水・衛生について国家間で違いが認められ、それらの要因が栄養関連指標に影響を及ぼしているものと考えられた。水・衛生については、WHOが主導する飲料水のリスク管理手法である水安全計画と、飲料水に関する管理指標ならびに下痢症による疾病との関連性についてシミュレーションすることにより可視化した。
②国内でのSDGsに向けた取り組み:2018年12月に政府より発出されたSDGsアクションプラン2018では、UHC推進に向けて「保健」だけでなく、「栄養」と「水・衛生」をパッケージ化することを提唱しているが、本研究の分析からも政策としての妥当性が確認された。また、たばこ対策については、現時点においては国の取り組みは未だ不十分であり、加熱式たばこ対策も並行して進めていく必要性が強く示唆された。
結論
SDGs達成に向けたモニタリング体制は確実に整備されている。UHCに関する取り組みについては、UHC新指標の発表直後に東京で開催されたUHCフォーラム等で周知が図ることができた。本研究で行った2次データを用いた分野横断的分析においても、UHC指標と「水・衛生」ならびに「栄養」指標との密接な関連性が提示された。また、推計偏差値を用いた地域診断手法は、低・中所得国での栄養の二重負荷を可視化するうえで有効な指標であることが示唆された。一方、わが国の「保健」分野のSDGs目標達成において、たばこ対策は未だ不十分な状況であり、さらなる取り組みの必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201705002B
報告書区分
総合
研究課題名
持続可能性と科学的根拠に基づく保健関連ポストミレニアム開発目標の指標決定のプロセス分析と評価枠組みに関する研究
課題番号
H27-地球規模-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 冨田 奈穂子(順天堂大学 医学部)
  • 下ヶ橋 雅樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、持続可能な開発目標(SDGs)における保健関連のモニタリング指標の今後の動向について、量的ならびに質的分析を行うことによって可視化を図ることである。本研究班では、SDGsの目標2・3・6を重点領域とし、持続可能性の見地から重要性がさらに高まっている「水・衛生」と「栄養」に加え、新たな健康課題である「非感染性疾患(NCDs)」と、健康格差の縮小に有効な手段である「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」ならびに未だ解決されていない課題である「母子保健」に焦点をあて分析を行った。併せて、わが国におけるSDGsへの取り組みについても、関連施策の動向について政策レビューを行った。
研究方法
二次資料を用いた政策レビューならびに二次データを用いた量的解析を実施した。
結果と考察
現時点までのSDGsのモニタリング枠組みの流れについて、国連での指標のアップデート作業は概ね順調に進み、2018年3月の時点で未だ検討中の指標は、目標2「飢餓(栄養・食料)」では23.1%、目標3「保健」では11.1%、目標6「水・衛生」では18.2%と、SDGs開始時の状況から考えると大きく改善した。特に、UHCについては平成29年度に基礎的医療サービスの提供状況を可視化するUHC Service Delivery Indexが開発されるなど、大きな進捗が認められた。NCDs対策においては、低・中所得のナショナルヘルスプランにおいて十分に位置づけられておらず、早急な対応が必要なことが明らかになった。たばこ対策を政策の中で掲げている国の数は、過去5年間において大きく増加し、81%に達していた。その一方、わが国の「保健」分野のSDGs目標達成において、たばこ対策は未だ不十分な状況であり、さらなる取り組みの必要性が示唆された。わが国のSDGs推進策としては、SDGsアクションプラン2018が策定され、その中でUHCについては「保健」、「水・衛生」、「栄養」を三位一体として推進する新規の方向性が示されたが、この三者の関連性を検討した本研究班での解析結果において、その方向性の妥当性が示された。「栄養」領域においては、日本の地域診断で用いられている推定偏差値を用いた分析法が、国家間レベルでの相対的状況の把握にも活用できることを示した。「水・衛生」についても、各種データを用いてシミュレーション解析をしたところ、水衛生管理の安全性に関する世界的動向を可視化できた。また、日本の小規模飲料水及び衛生設備の管理状況は、途上国においても役立つものと考えられた。
結論
SDGs達成のためのモニタリング指標の改善状況について可視化できた。また、NCDs対策の進展のためには、低・中所得国でのナショナル・ヘルス・プランへのNCDs対策の強化が必要なことを示す一方、世界レベルではたばこ対策が大きく推進した傾向を明らかにした。一方、「栄養」ならびに「水・衛生」については、これまでの国際的な対策動向を明らかにするとともに、二次データを収集し、推定偏差値を用いたわが国の地域診断手法を応用した解析を行い、各国の課題について可視化することができた。「水・衛生」についてもシミュレーション分析を行い、「栄養」と「保健」分野の関連指標との相互関連性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201705002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SDGsの推進に不可欠な分野横断的な解析を行うことによって、PDCAサイクルに基づくわが国の地域保健対策のスキームが国際保健領域にも広く役立つことを明らかにした。得られた知見の一部は、既に学術誌に掲載をしており、現在、投稿中の知見も数本ある。「保健」、「栄養」ならびに「水・衛生」との関連性を複合的に可視化することができ、学術的にも有用性が高いものと考えられる。環境技術学会の機関誌である「環境技術」の2019年のSDGs特集号に、本研究成果をもとにした総説を寄稿した。
臨床的観点からの成果
基礎的医療サービスの提供体制に基づくUHC Service Coverage Indexデータと、「栄養」と「水・衛生」との密接な関連性を報告し、臨床的観点からもSDGs達成に向けた分野横断的なアプローチの有用性を示した。
ガイドライン等の開発
2017年12月に政府より発出された「SDGsアクションプラン2018」において、本研究班の知見等をふまえて、UHCの達成に向けたアプローチにおいて、「栄養」と「水・衛生」を含めた複合的なアプローチを行う有用性が明記された。
その他行政的観点からの成果
わが国のSDGs達成に向けた諸施策についても政策レビューを行い、改善点を指摘した。
その他のインパクト
国立保健医療科学院の機関誌「保健医療科学」の66巻4号において、本研究班の研究知見を反映させた特集「持続可能な開発目標(SDGs)に基づく今後のグローバルヘルス」を企画した。上記雑誌は、J-Stage収載のオープンアクセス誌であり、研究者だけでなく、行政関係者ならびに国際保健実務職にも広く知見を周知できた。本研究知見を用いて、2019年7月5日に国立保健医療科学院にて公開シンポジウムを行う。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
検討会での議論1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
講演1件、シンポジウム開催1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
三浦宏子、大澤絵里、野村真利香
National Health Planにおける非感染性士官(NCD)対策の現状と課題
保健医療科学 , 66 (4) , 409-414  (2017)
https://doi.org/10.20683/jniph.66.4_409
原著論文2
三浦宏子、下ヶ橋雅樹、冨田奈穂子
持続可能な開発目標(SDGs)における指標とモニタリング枠組み
保健医療科学 , 66 (4) , 358-366  (2017)
https://doi.org/10.20683/jniph.66.4_358
原著論文3
Tomita N & Watabe A.
Global arguments about monitoring the progress of Universal Health Coverage and health financing measures.
J Natl. Inst. Public Health , 66 (4) , 367-372  (2017)
https://doi.org/10.20683/jniph.66.4_367
原著論文4
下ヶ橋雅樹
国連ミレニアム開発目標(MDGs)及び持続可能な開発のための目標(SDGs)における水衛生―水衛生指標と障害調整生存年(DALY)との関連性―
保健医療科学 , 66 (4) , 425-433  (2017)
https://doi.org/10.20683/jniph.66.4_425
原著論文5
Takahashi K, Nomura M, Horiuchi K, Miura H
Global policy directions for maternal and child health in the SDG era
J Natl. Inst. Public Health , 66 (4) , 395-401  (2017)
https://doi.org/10.20683/jniph.66.4_395
原著論文6
Midori Ishikawa , Tetsuji Yokoyama, Masaki Sagehashi, Naoki Kunugita, Hiroko Miura
Diagnosing the double burden of malnutrition using estimated deviation values in low- and lower-middle-income countries
PLOS ONE , 13 (12) , e0208525-  (2018)
. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0208525

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
2022-06-08

収支報告書

文献番号
201705002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,075,000円
(2)補助金確定額
2,075,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 235,240円
人件費・謝金 811,055円
旅費 919,765円
その他 109,097円
間接経費 0円
合計 2,075,157円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-02-28
更新日
-