文献情報
文献番号
201704001A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療推進を目指した医療情報の利活用にかかる国内外の法的基盤の運用と課題に関する調査研究
課題番号
H29-倫理-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中田 はる佳(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部)
研究分担者(所属機関)
- 田代 志門(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部 )
- 丸 祐一(鳥取大学地域学部)
- 平沢 晃(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がんゲノム医療の体制整備が急速に進められる中で、それを支えるべき国内の法的・社会的基盤の整備を進めていく必要がある。中でも、がんゲノム医療で扱われるゲノムデータ、遺伝情報の取扱いに関しては、関係者からの懸念がより少ない方法が求められる。日本におけるゲノムデータ、遺伝情報の取扱いに関する法的・社会的基盤を構築していくにあたっては、国際動向を考慮に入れることが必須である。現在、ゲノム医療は国際的にも推進されているところであり、あわせて、ゲノムデータ、遺伝情報を含めた医療情報の利活用が求められている。一方、医療情報の利活用に関しては、医療者、法律家を含むELSI(Ethical, legal, and social issues; 倫理的・法的・社会的課題)専門家、市民・患者と多様な人々が関わる。したがって、各関係者が持つ期待と懸念を共有し、共通の認識のもとに医療情報の利活用を進めていかなければならない。そこで本研究では、日本において医療情報の利活用を支える法的・社会的基盤を検討すべく主に2つの調査を行うこととした。1つは、国際動向の把握を目的とした国際調査である。もう1つは、日本のゲノム医療に関わる医療者とELSI専門家、患者・市民の共通理解を目指した研究会である。これら2つの調査から得られる知見をもとに、日本のがんゲノム医療を推進するための法的・社会的基盤を検討することを目的とする。
研究方法
1. 国際調査
海外の関係機関を訪問し、有識者にヒアリングを行った。対象国はフィンランドとした。
2. 国内研究会
医療者と法律家を含めたELSIの専門家との意見交換の場として研究会を開催した。また、外部有識者委員会と意見交換を行った。
3. 遺伝医療専門職へのインタビュー調査の分析
本事業に先行して実施していたインタビュー調査(2017年3~7月)の分析を行った。インタビュー内容は、現状の遺伝カウンセリングで抱える困難に関する経験とした。本事業においては、特に、遺伝子解析に関するケースへの困難課題を中心に分析した。
海外の関係機関を訪問し、有識者にヒアリングを行った。対象国はフィンランドとした。
2. 国内研究会
医療者と法律家を含めたELSIの専門家との意見交換の場として研究会を開催した。また、外部有識者委員会と意見交換を行った。
3. 遺伝医療専門職へのインタビュー調査の分析
本事業に先行して実施していたインタビュー調査(2017年3~7月)の分析を行った。インタビュー内容は、現状の遺伝カウンセリングで抱える困難に関する経験とした。本事業においては、特に、遺伝子解析に関するケースへの困難課題を中心に分析した。
結果と考察
1. 国際調査
フィンランドでは、ゲノム医療を政策的に推進する中で、①ゲノム法の制定準備、②社会健康情報の二次利用に関する法制定準備、③バイオバンク法改正の議論、④バイオバンク試料のゲノム情報と健康情報を結合する産学連携プロジェクトが進められていた。医療情報の利活用に関する患者の受けとめについては、日本の先行調査をもとに議論を行い、懸念や課題を共有することができた。フィンランドでは、”Digitalization”をキーワードに新しい法基盤の整備が進められていた。日本では、既存の研究基盤の再活用を現行法下で見直すとともに、各所に存在する医療関連情報と紐づいた番号を寄せる仕組みの検討を進めるべきである。今後、日本で新しい法基盤の議論を進める上で、本事業の成果が端緒になり得ると考える。
2. 国内研究会
法律家、医療者、患者・市民の遺伝情報の取扱いに関する認識として、その機微性が高いものであることは共有されていた。それに対して、ゲノムデータ、遺伝情報の取扱いを考える際、機微性をどう考慮するかは各関係者で様々であった。がんゲノム医療が推進されていく中で、遺伝医療の現場が情報の取扱いで混乱しないための一定の方針を示す必要性が明らかになった。ゲノムデータ、遺伝情報の機微性を考慮に入れた新しい規制を置くことも視野に入れつつ、まずは遺伝医療専門家をはじめとするゲノム医療を支える医療者が混乱なく情報を取り扱えるよう、医療機関におけるゲノムデータ、遺伝情報の保管・運用の指針が必要であろう。
3. 遺伝医療専門職へのインタビュー調査の分析
臨床遺伝専門医29名、認定遺伝カウンセラー17名および遺伝医療に従事している医師1名、看護師1名より得たインタビューデータを分析した。得られた課題のうち、「遺伝子診断や研究等に関連する課題」においては、遺伝子解析研究の遺伝子解析研究に関連するケースにおける困難が複数の対象者から挙げられた。遺伝子解析が網羅的かつより簡便に行うことができるようになったことで、予期せず血縁者の罹患が判明し対応に苦慮するケースへの対応の機会が飛躍的に増加することが予測された。
フィンランドでは、ゲノム医療を政策的に推進する中で、①ゲノム法の制定準備、②社会健康情報の二次利用に関する法制定準備、③バイオバンク法改正の議論、④バイオバンク試料のゲノム情報と健康情報を結合する産学連携プロジェクトが進められていた。医療情報の利活用に関する患者の受けとめについては、日本の先行調査をもとに議論を行い、懸念や課題を共有することができた。フィンランドでは、”Digitalization”をキーワードに新しい法基盤の整備が進められていた。日本では、既存の研究基盤の再活用を現行法下で見直すとともに、各所に存在する医療関連情報と紐づいた番号を寄せる仕組みの検討を進めるべきである。今後、日本で新しい法基盤の議論を進める上で、本事業の成果が端緒になり得ると考える。
2. 国内研究会
法律家、医療者、患者・市民の遺伝情報の取扱いに関する認識として、その機微性が高いものであることは共有されていた。それに対して、ゲノムデータ、遺伝情報の取扱いを考える際、機微性をどう考慮するかは各関係者で様々であった。がんゲノム医療が推進されていく中で、遺伝医療の現場が情報の取扱いで混乱しないための一定の方針を示す必要性が明らかになった。ゲノムデータ、遺伝情報の機微性を考慮に入れた新しい規制を置くことも視野に入れつつ、まずは遺伝医療専門家をはじめとするゲノム医療を支える医療者が混乱なく情報を取り扱えるよう、医療機関におけるゲノムデータ、遺伝情報の保管・運用の指針が必要であろう。
3. 遺伝医療専門職へのインタビュー調査の分析
臨床遺伝専門医29名、認定遺伝カウンセラー17名および遺伝医療に従事している医師1名、看護師1名より得たインタビューデータを分析した。得られた課題のうち、「遺伝子診断や研究等に関連する課題」においては、遺伝子解析研究の遺伝子解析研究に関連するケースにおける困難が複数の対象者から挙げられた。遺伝子解析が網羅的かつより簡便に行うことができるようになったことで、予期せず血縁者の罹患が判明し対応に苦慮するケースへの対応の機会が飛躍的に増加することが予測された。
結論
本研究では、ゲノムデータ、遺伝情報の取扱いに関する法的・社会的基盤の国際状況を明らかにし、国内の医療機関がゲノムデータ、遺伝情報の取扱いに関する統一的な基準の必要性を明らかにし、今後の厚生労働行政に資する知見を得ることができた。今後は、フィンランド以外の国際状況の把握と、医療機関におけるゲノムデータ、遺伝情報の取扱いの現状を把握し、さらなる検討を行うこととしたい。
公開日・更新日
公開日
2018-11-16
更新日
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