保健医療用人工知能の技術革新と国際競争力向上に資する人材育成に関する研究

文献情報

文献番号
201703019A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療用人工知能の技術革新と国際競争力向上に資する人材育成に関する研究
課題番号
H29-ICT-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
奥村 貴史(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 地域医療システム研究分野)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 市川 学(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 中村 素典(国立情報学研究所)
  • 神谷 達夫(福知山公立大学 地域経営学部)
  • 岡本 悦司(福知山公立大学 地域経営学部)
  • 亀田 義人(千葉大学 医学部附属病院)
  • 木村 眞司(札幌医科大学 医療人育成センター)
  • 藤原 幸一(京都大学 情報学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、国立研究機関として医療用AIの研究に2009年より取り組み、また、医療用AIの政策研究に関わってきた。その過程を通じて、本分野は、研究人材の欠如よりも、研究プロジェクトを支える人材の欠如により制約を受けることを繰り返し経験してきた。たとえば、医療用AI研究を進めるためには膨大な臨床データに正確な解釈を付与する研究協力者が必要となる。また、臨床研究は、協力する地域や施設において意思決定に関わる長の技術受容度により強く制約を受ける。しかし、これら研究協力者に対する教育や、意思決定者に対する啓発は、それぞれの研究チームが独自に努力をせざるをえなかった。また、医療用AIの発展に向けては、隣接分野からの参入を増し、研究の多様性を確保する必要がある。しかしながら、政府の研究開発投資は分野が限定されており、多様性を増す方向性の施策が欠けがちであった。そこで本研究では、医療用AI研究の発展に向けて、「意思決定者」、「隣接分野」、「研究協力者」の3種類の人材を対象に、効果的な教育・啓発プログラムの策定を目指した。
研究方法
初年度においては、各分野の人材育成に向けた予備的調査と次年度の詳細な計画立案を行なう方針とした。以下では、研究計画における3つのサブテーマそれぞれについて、状況を整理する。
まず、「医療用AIの導入意志決定に関わる人材の理解促進」に資する情報提供を目指した。亀田分担においては、医療機関幹部を対象とした教育において、医療用人工知能に関する教程を組み込むためのプログラム開発を進めた。藤原分担においては、政策関係者を対象とした教材の開発を検討した。木村分担においては、医療系学会指導者を対象とした啓発活動に向けた検討を進めた。
また、「研究の多様性を高める人材育成」として、応用分野の開拓に向けて従来研究がカバーしていない領域の専門家に研究の意義を啓発する手法の検討を進めた。安藤分担では、歯科とAIに関する網羅的なサーベイを行った。神谷・岡本分担では、AI(人工知能)、BI(ビジネス・インテリジェンス)、RPA (Robotic Process Automation)の公衆衛生行政への活用を検討した。福田分担においては、医療経済とAIに関する文献調査に取り組んだ。研究代表奥村は、プライマリ・ケアとAIに関する啓発活動に携わった。
最後に、「研究の生産性を高める人材育成」において、研究代表奥村が、海外医療従事者を活用した医療用AI研究の効率化について事例報告を整理した。また、中村分担は、医療用AI研究の生産性向上に向けて、国立情報学研究所と協力し医師学術認証基盤の実現に向けた検討を進めた。
結果と考察
人工知能分野における人材育成策としては、今まで、機械学習の基礎研究者や機械学習の医療応用に関する研究者が想定されてきた。しかし、この分野の研究人材は、既存の教育機関が積極的に育成していることに加え、文部科学省による「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」施策による支援策も既に講じられている。また、自習環境も充実していることに加えて、研究方法論の教育には絶え間ない更新が求められることから、教材とプログラム策定を目的として募集された本研究課題には適さない。
本研究は、そうした情況にある医療用人工知能分野において、技術革新と国際競争力向上に資するため、「意思決定者」、「研究の多様性を高める人材」、そして、「研究の生産性を高める人材」という3種類の人材育成を目標に活動を行った。このように既存の施策を補う試みは知られておらず、今年度の活動により、研究体制の確立を図ることが出来た。
特筆すべき点として、現行研究のサーベイを通じてAIの有望な応用事例の発掘が実現した(神谷・岡本、安藤)。また、この分野の発展に向けて、Funding Agency機能を持った橋渡し支援組織と橋渡し人材の育成が求められる可能性が明らかとなった(藤原)。また、研究支援者を対象とした教材の提供により、各研究チームの研究効率を増すことが出来る可能性が示された(奥村)。
結論
現在の我が国の医療用AI政策は、戦略的な研究開発投資が行われていないことに加えて、薬機法の規制により研究の発展に制約がある。いわば中途半端なアクセルとブレーキが同時に踏まれている状態であり、今後、米国・中国に大きく後れを取る懸念が強い。研究の多様化と効率化の実現により、医療用人工知能技術に関する国際競争力の向上を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2018-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-08-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201703019Z