文献情報
文献番号
201703011A
報告書区分
総括
研究課題名
機械学習を活用した診療情報の体系的な把握・分析に基づく、疾患との新たな関連性を発見するための研究
課題番号
H29-ICT-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
- 市川 学(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
- 江藤亜紀子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
- 冨田奈穂子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 佐々木秀直(北海道大学大学院 医学研究院 神経病態学分野神経内科学教室)
- 眞野 訓(順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者
冨田奈穂子
国立保健医療科学院(平成29年4月1日~29年12月31日)→ 任期終了に伴い辞職
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省が管理する難治性疾患データベースを活用し、人工知能を用いて診断基準の妥当性、診断基準との関連性が高い項目を明らかにするとともに、早期における診断が困難とされる神経疾患、腎臓疾患を取り上げ、専門医による診断と人工知能による診断との乖離を検証するものである。これらの検証を踏まえ、専門医以外により提供された診療情報から確実に対象となる疾患を絞り込めるプログラムを開発し、都道府県等での実装を目指す。
研究方法
研究資料については、厚生労働省に登録された特定疾患治療研究事業・臨床調査個人票データベースを活用する。なお、当該データの利用については、厚生労働省健康局難病課より利用承認を得ている(健疾発0708第1号。平成22年7月8日)。また、地域における神経疾患のデータベースとして平成27年度よりAMEDの研究支援を受けて開始されたHokkaido Rare diseases Consortium for MSA (HoRC-MSA) との連携を図る。
結果と考察
人工知能としてChainerを用いたが、当初2層で構築したものの回答を導くことが困難であり、最終的には3層構造とした。機械学習を行う上で欠損の多いデータは除外するか、欠損した情報を補完する必要が認められた。今回使用した臨床調査個人票データに関して、開眼時立位能力の項目として「支持なしで立位可能な場合」と「自力立位不可能な場合」の双方を選択しているケースが相当数散見された。このようなケースをそのまま機械学習にかけた場合、誤った解釈を招くこととなるため論理的な個人票の設計が求められる。MSA及びSCAの解析に介して、解析に適さない症例が、MSAで4,949例中1372例、SCAで7,073例中2,241例が認められる等、今後の人工知能の実装における課題である。人工知能によるMSAの診断結果に関する検証では、SND及びOPCAはほぼ人工知能の診断結果と専門医の判定は一致することが認められた。一方で、SDSはSNDとOPCAに含まれるものがそれぞれ15%ずつ認められた。SCAに関しては、孤発性および痙性対麻痺でほぼ全数が専門医の診断と一致したが、常優性では80%、他遺伝性および常劣性は全数で専門医の診断の一致が認められず、孤発、常優性及び痙性対麻痺に分類される等、診断プロセスにおける課題が示唆された。腎臓に関しては、神経難病と異なり、診断そのものを機械学習するのではなく、長期的な予後観察(本研究では観察期間は最大3年間)で人工透析に至った症例を1として、状況が維持されているものをその他0として機械学習にかけることで、重症化するケース、そうでないケースを予測することが可能となる。
結論
稀少疾患は、症例が少ないが故に疾患概念を構築することが難しい。このため、わが国においては平成13年度より全国規模で稀少疾患に関する患者情報を登録する特定疾患調査解析システムより症例の集積が行われてきたところである。そこで、本研究においては、これらデータベースを用いて人工知能による機械学習を試みることで、症例数が少なく、臨床所見、画像診断、遺伝子診断を総合的に組み合わせることで正確な診断が得られる多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCA)を取り上げ、人工知能による診断プロセスの妥当性について検証を試みた。また、腎臓疾患についても初診時における臨床所見と検査所見から重症化の可否との推計が人工知能で可能となるかについて検証を試みた。
公開日・更新日
公開日
2018-08-30
更新日
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