Deep Learning技術を用いた腎生検病理画像の自動分類による病理診断の効率化と診断補助に関する研究

文献情報

文献番号
201703010A
報告書区分
総括
研究課題名
Deep Learning技術を用いた腎生検病理画像の自動分類による病理診断の効率化と診断補助に関する研究
課題番号
H28-ICT-一般-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
  • 河添 悦昌(東京大学 医学部附属病院)
  • 松尾 豊(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 中山 浩太郎(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 宇於崎 宏(帝京大学 医学部)
  • 堂本 裕加子(新谷 裕加子)(東京大学 医学部附属病院)
  • 柏原 直樹(川崎医科大学 医学部)
  • 清水 章(日本医科大学 大学院医学研究科)
  • 長田 道夫(筑波大学 医学医療系)
  • 南学 正臣(東京大学 医学部附属病院)
  • 鈴木 祐介(順天堂大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は生検腎病理画像のデータベースを構築し、人工知能手法のひとつで深層学習の手法である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による画像識別を活用した腎病理診断手法を開発する。またこのプロセスから得られる知見を腎糸球体病理画像診断プロセスの標準化に役立て腎病理診断の効率化と診断補助に資することを目指す。
研究方法
平成29年度は次の1)~4)を実施した。1) 研究参加施設より蛍光抗体画像と生検腎光学顕微鏡画像(Whole Slide Image:WSI)の提供を受けデータベースを構築した。2) 物体検出を行う深層学習の技術を活用して、高解像度のWSIから微小な糸球体を検出する手法を開発した。3) 腎病理のエキスパートによる協議のもと、本研究で用いる糸球体の分類所見項目を定義し、複数の病理医による所見付けの一致度を評価した。4) 本研究で開発した糸球体所見を入力登録するWebシステムを用いて、糸球体画像に所見付けを行った。また、糸球体の硬化病変を分類するCNNを試作するとともに、CNNの着目点の可視化を試みた。
結果と考察
1) 病理画像の収集に関して、研究参加施設より112,210枚の蛍光抗体画像と6,491枚の光学顕微鏡画像の提供を受けデータベースを構築した。
2) 糸球体を検出する手法に関して、物体検出を行う深層学習の手法(Faster R-CNN)を活用して、高解像度のWSIから微小な糸球体を検出する手法を開発した。計800枚のWSIに含まれる約33,000個の糸球体領域を人手により注釈付けし開発手法の評価を行った。PAS、PAM、MT、Azanの各染色画像における検出精度(F値)はそれぞれ、0.93、0.93、0.90、0.88であり、先行研究より高い精度を達成した。
3) 糸球体の分類所見項目の定義に関して、腎病理の専門家の協議のもと、PAS、PAM、MT、Azanの4種類の染色に対して、それぞれ10項目、6項目、4項目、4項目の病理所見定義を行った。また、PAS染色の10項目に対する5人の病理医の所見付けの一致度(κ値)は、0.224~0.522であり、0.4(中等度の一致度)越えたものは、Mesangial hypercellularity、Sclerosis、Crescent、Collapsed/Ischemic glomerulusの4項目であった。各所見項目について高い一致率が得られるよう今後の検討を必要とする。
4) 糸球体所見を分類するCNNに関して、PAS染色における糸球体硬化の有無を分類するCNNは、Accuracy が0.96と高い精度を示した。また、CNN着目点をGrad-Camにより可視化する手法は、分類結果を解釈するために有用であると考えられた。今後は、糸球体硬化以外の所見項目についても精度良く分類するための方法を検討する必要がある。
結論
生検腎病理画像のデータベースを構築し、人工知能手法のひとつで深層学習の手法である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による画像識別を活用して、WSIから糸球体部分を切り出す自動手法を確立した。これにより切り出された糸球体画像に対して自動的に所見分類をする手法を検討し、教師データとしての専門家所見の一致度を上げるための所見付け標準化を進める必要性が認識された。またこのプロセスから得られる知見を腎糸球体病理画像診断プロセスの標準化に役立て腎病理診断の効率化と診断補助に資することができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201703010Z