文献情報
文献番号
201703009A
報告書区分
総括
研究課題名
病理デジタル画像・人工知能技術を用いた、病理画像認識による術中迅速・ダブルチェック・希少がん等病理診断支援ツールの開発
課題番号
H28-ICT-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 毅(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 高澤 豊(がん研究会がん研究所)
- 宮路 天平(東京大学 医学部附属病院)
- 山口 拓洋(東北大学 大学院医学系研究科)
- 野村 直之(メタデータ株式会社)
- 宮越 徹(インスペック株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は「病理デジタル画像データの深層学習・人工知能(以下AI)による病理画像認識診断支援ツールの開発研究」である。現在日本の病理専門医は約2,400名で、人口10万人当たりアメリカの3分の1以下である。さらに常勤病理医勤務病院の約50%が1人病理医である。このような状況下で最終診断である病理診断のW-checkが行えない、または病理医不在のため患者が術中迅速病理診断を受けられないなどの問題が生じている。さらに希少がんでは診断の不一致などの問題が生じている。希少症例はがん研有明病院に症例数が多く、これらの症例を用いてAI活用による病理診断支援ツール開発を行う。なお、この分野でのAI支援ツールの成功事例はまだ少なくまた他施設が共通で使用できるプラットフォームの構築は世界的に見てもまだない。世界に先駆けてAPIによるAI病理診断支援システムのプラットフォーム構築を行うことが本研究の目的である。
研究方法
当初は、乳癌のセンチネルリンパ節のみであったが、新たに腺癌のリンパ節、約1,000個を追加して、約1,000,000枚の人工知能用アノテーション付きデジタル画像(P-WSI)を作成し、深層学習に用いた。また、脂肪性腫瘍に関しては、がん研有明病院に蓄積された約23,000例の骨および軟部腫瘍をWHO分類(2013)に基づいて再分類し、希少がんの抽出を行った。さらに脂肪性腫瘍に加えて、線維性腫瘍も行うこととし、効率よく学習させるための症例の絞り込みを行った。
結果と考察
<結果>大量のアノテーション付き画像をデジタル画像から切り出すため、病理デジタル画像(Whole Slide Image:WSI)をモニター上で切り出すためのツールを開発した。具体的には指定した矩形領域内の座標を設定された解像度で一枚ずつ画像を自動で切出すソフトウェアツールを開発し、効率的に大量の深層学習用画像を取得することができるようになった。さらにデータセットの大規模化、トレーニング・パラメータセットの多種化、繰り返し(epoch)数を増やすため、アノテーション付き教師データを作成することが必要となり、ANNONというアノテーション付与ツールを新規に開発し、教師データ作成の生産性と精度向上が実現できるようになった。
また、医療現場での活用を意識し、大容量のWSIを迅速に転送するための遠隔病理診断支援ネットワークインフラの工夫と実際のAI病理診断支援ツールの開発も行った。大容量のWSIを転送するにあたっては、画像をジグソーパズルのピースのように細分化して送る他社製品を活用した。また術中迅速診断に対応するために、WSIを作成するバーチャルスライドスキャナーで病理組織画像をスキャンしている最中に、迅速に取り込んだ画像ピースを次々に送るハードウエアシステムの開発にも成功した。
AI病理診断支援ツールは、具体的には、病理医不在病院等からWSIをアップロードし、インターネット回線を使って画像を転送してもらい、AIサーバ内のAI病理診断支援システムで自動判定後、判定結果を濃淡色のヒートマップで返却するシステムで、依頼元のコンピュータのモニター上のWSIにオーバーラップ表示するシステムで、すでにプロトタイプの作成を完了している。2月には実際に、がん研有明病院と東京大学の間で、AI遠隔病理診断支援ツールを使用したAPI自動病理診断の実証実験を行ったが、ネットワークインフラに関する新たな課題および、他施設のHE染色標本では精度が上がらないなどの課題が検出され、現在その改良に取り組んでいる。また、脂肪性腫瘍のAI病理診断支援システムに関しては、世界的に見てもまだ実例がないが、基礎実験を繰り返していく中で課題が見えてきており、このシステムに関しても、平成30年度の完成を目指す。
なお、研究を確実に進めるため、平成28年度に3回、平成29年度に6回、進捗状況および課題提出のための全体会議を行い、研究の遂行にあたった。
<考察>
研究結果に示したように、平成29年度は、AI病理診断支援システム実装に向けて、新たなシステムの開発と実証実験までたどり着いたが、様々な新たな課題が浮き彫りになった。しかし、いずれも解決の策は考えられており、平成30年の完成を目指して、加速的に研究を進めることとする。
また、医療現場での活用を意識し、大容量のWSIを迅速に転送するための遠隔病理診断支援ネットワークインフラの工夫と実際のAI病理診断支援ツールの開発も行った。大容量のWSIを転送するにあたっては、画像をジグソーパズルのピースのように細分化して送る他社製品を活用した。また術中迅速診断に対応するために、WSIを作成するバーチャルスライドスキャナーで病理組織画像をスキャンしている最中に、迅速に取り込んだ画像ピースを次々に送るハードウエアシステムの開発にも成功した。
AI病理診断支援ツールは、具体的には、病理医不在病院等からWSIをアップロードし、インターネット回線を使って画像を転送してもらい、AIサーバ内のAI病理診断支援システムで自動判定後、判定結果を濃淡色のヒートマップで返却するシステムで、依頼元のコンピュータのモニター上のWSIにオーバーラップ表示するシステムで、すでにプロトタイプの作成を完了している。2月には実際に、がん研有明病院と東京大学の間で、AI遠隔病理診断支援ツールを使用したAPI自動病理診断の実証実験を行ったが、ネットワークインフラに関する新たな課題および、他施設のHE染色標本では精度が上がらないなどの課題が検出され、現在その改良に取り組んでいる。また、脂肪性腫瘍のAI病理診断支援システムに関しては、世界的に見てもまだ実例がないが、基礎実験を繰り返していく中で課題が見えてきており、このシステムに関しても、平成30年度の完成を目指す。
なお、研究を確実に進めるため、平成28年度に3回、平成29年度に6回、進捗状況および課題提出のための全体会議を行い、研究の遂行にあたった。
<考察>
研究結果に示したように、平成29年度は、AI病理診断支援システム実装に向けて、新たなシステムの開発と実証実験までたどり着いたが、様々な新たな課題が浮き彫りになった。しかし、いずれも解決の策は考えられており、平成30年の完成を目指して、加速的に研究を進めることとする。
結論
今年度は、画像切り出しツールの開発、アノテーションを効率的に付与する教師データの作成ツールの開発に成功し、またAPIによるAI病理診断支援システムのプロトタイプの作成を完了した。実装のための実装実験を2月に行い、新たな課題が浮き彫りとなったが、平成30年度研究では実装できる目途もたっており、研究の最終年度に向けて、加速的に開発研究を進めたいと考えている。
公開日・更新日
公開日
2018-09-12
更新日
-