人口動態統計死亡票の複合死因情報を活用した集計・分析方法に関する調査研究

文献情報

文献番号
201702006A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態統計死亡票の複合死因情報を活用した集計・分析方法に関する調査研究
課題番号
H29-統計-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、人口動態統計では、死亡票に記載されている複数の死因から、世界保健機関が勧告する「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」に準拠し、直接に死亡を引き起こした一連の事象の起因となった疾病もしくは損傷等を表す単一の「原死因」を用いて死因統計の集計・分析を行っている。これは、一連の病的事象を起こす原因を防止するという公衆衛生的な観点に基づくものであるが、現在のわが国では生活習慣病が死因の上位を占め、一人が複数の疾患を抱えることも多くなってきていることから、原死因以外の死因に着目する必要性が高まっている。
このような問題意識の下、社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会は、平成26年11月に出した報告(「疾病、傷害及び死因に関する分類に係る部会審議の際に出された意見に基づく報告」)の中で、「中長期的には、基礎疾患の情報や介入の状況、合併症、予後等、死亡診断書・死体検案書から得られる複合的な要因を把握できるような分析がなされることが望ましい。」との方向性を打ち出している。しかしながら、人口動態統計死亡票の原死因以外の複合死因情報については、近年、はじめて二次利用が可能となったところであり、わが国ではこのような複合死因データを全人口ベースで取り扱った経験が多いとはいえない。一方、諸外国においては、従来から複合死因のデータの活用事例が存在している。
本研究は、諸外国において先進的な複合死因分析を実施している国について、研究者との意見交換や文献レビュー等による情報収集を実施し、わが国に複合死因分析を導入するための課題や妥当性等に関する基礎資料を作成することを通じ、複合死因集計・分析手法に関する提言を行うことを目的として研究を行う。わが国で複合死因データや手法を全人口ベースで扱う先行研究は限定的であることから、この点は本研究の特色であり、独創的な点となっている。
研究方法
本研究においては、諸外国において先進的な複合死因分析を実施している国について、研究者との意見交換や文献レビュー等による情報収集を実施し、わが国に複合死因分析を導入するための課題や妥当性等に関する基礎資料の作成を行った。
研究代表者石井および研究分担者林は、これまで、死亡統計や死因分析に関する研究実績を有するとともに、フランスの国立人口研究所(INED)を始めとした国際的な死因研究者との協力体制を構築しており、研究遂行においてもこのような国際的ネットワークを活用することで効率的に研究を遂行した。
結果と考察
複合死因集計・分析手法に関する先行研究レビューについては、先進的な研究動向に関する情報を得ることを目的に、国際的な複合死因に関する研究ネットワークであるMultiCause Networkに参加した。同ネットワークではこれまでに行われてきた複合死因集計・分析に関する様々な先行研究を収集しており、この中から105種類の先行研究について文献リストを作成するとともに、レビューを行って分析概要を取りまとめた。
また、欧米において複合死因の集計・公表・分析が行われている背景には、米国はMMDS、欧州はIRISという、死因統計データシステムが普及していることによるものであると考えられる。いわば原死因特定のためのシステムを使う中で、副産物としてデジタル化された複合死因データが作成され、それを有用な形となるよう分析している、という状況が見て取れる。
結論
本研究では、社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会の報告に示された、死亡診断書・死体検案書から得られる複合的な要因を把握できるような分析の実施という中長期的課題への対応に関し、複合死因集計・分析手法に関する先行研究レビューや複合死因に関する諸外国の調査をとりまとめることを通じて、人口動態統計の集計表の充実や分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献を行うことができたものと考える。
さらに、本研究の成果は、死亡統計で用いるための死因分類について、ICD との関連性を維持しながらも、先進諸国の中でもトップクラスの平均寿命を擁するわが国の長寿化を背景とした死亡・疾病の状況を、より的確に捉えられるような独自の分類の提案や、これを活用した集計・分析検討のための基礎資料としての活用も可能であろう。
また、現在、わが国の医療費の増加の要因の一つとして、高齢者医療費の伸びが挙げられるが、今後高齢化によって死亡者数が増加する中、本研究の成果を活用した複合死因の集計・分析の将来的な充実によって、死亡に直結している疾病構造のさらなる解明が進展し、医療費の適正化や医療資源配分の検討など医療政策の企画・立案に結びつく成果が期待できるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201702006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会の報告に示された、死亡診断書・死体検案書から得られる複合的な要因を把握できるような分析の実施という中長期的課題への対応に関し、複合死因集計・分析手法に関する先行研究レビューや複合死因に関する諸外国の調査をとりまとめることを通じて、人口動態統計の集計表の充実や分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献を行うことができたものと考える。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
海外で行われている複合死因統計の集計・分析は様々な観点から行われており、わが国に適用可能なものも多いことから、本研究の成果は将来における複合死因集計・分析の企画・立案に資するものと考える。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201702006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,400,000円
(2)補助金確定額
2,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 962,491円
人件費・謝金 250,500円
旅費 1,037,429円
その他 149,771円
間接経費 0円
合計 2,400,191円

備考

備考
差額は自己資金(191円)による。

公開日・更新日

公開日
2018-10-24
更新日
-