医療の質の評価指標としてのICF評価セット(日本版)およびデータ収集ツールの作成

文献情報

文献番号
201702004A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質の評価指標としてのICF評価セット(日本版)およびデータ収集ツールの作成
課題番号
H28-統計-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
才藤 栄一(藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学I講座)
研究分担者(所属機関)
  • 出江 紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)
  • 園田 茂(藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学II講座)
  • 水間 正澄(医療法人社団輝生会教育研修局)
  • 山田 深(杏林大学医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類(以下ICF)は世界保健機関の生活機能分類の枠組みで、2001年に採択されて以降、臨床への普及が進められて来た。しかし、現状としては、各国の、特に医療分野においてはまだ本格的な普及には課題がある。
 当研究では、リハビリテーションの臨床を手始めとしてICFの日本の医療現場への速やかな普及と推進を目的に、臨床で使用可能なICF評価セット日本版およびそれを用いたデータ収集の仕組みを作成することに取り組んだ。
研究方法
1. ICF評価セット(日本版)の修正および既存のスケールを用いた情報収集システムの臨床試用と修正
 前年度に作成した情報収集システムを用い、脳卒中患者を対象としたフィールドテストを行った。
2. 自宅環境因子チェックリストの作成と検者間信頼性の検討
 環境因子の情報収集のため、自宅環境因子チェックリスト(Home Environment Checklist)を作成し、信頼性および妥当性の検討を行った。評価には重み付きκ係数、クロンバックのα係数、既知グループ間の点数の比較を行った。
3. ミニマムセットの作成
 簡便な評価のため国際リハビリテーション学会内のICFグループを中心に進められている研究の枠組みに参加し、ICFコアセットの一つでリハビリテーション対象患者に向けて作成されたICFリハビリテーションセットをベースとして、日本版のミニマムセットの作成と検証を行った。
4. 簡潔かつ直感的な説明文の作成
ICFリハビリテーションセットの臨床における普及を進めていくにあたって、リハビリテーション分野における国際共同研究として、各項目の簡潔で直感的な説明文(Simple, intuitive description)を作成するプロジェクトが進められている。前年度に作成した日本語版の検証、英語訳作成、発表を行った。
5. 評点リファレンスガイドの検証
前年度に作成した評点リファレンスガイドについてフィールドテストを行い、重み付きκ係数を用いた検者間信頼性の検証を行った。
結果と考察
1. 脳卒中患者150名を対象としたフィールドテストにおいて、FIM、ABMSII、SIAS、JCS、MoCA、MAS、ROM、感覚(NRS)、疼痛(NRS)、患者質問紙(WHOのModel Disability StudyおよびInternational spinal cord injury surveyの質問項目から抜粋)および自宅環境チェックリストの情報収集を行うことができた。
Rasch分析の結果、項目をグループ分けすることによるTestlet analysisを行うことで、Raschモデルへの適合が得られた。さらに能力推定値を0-100の分布に置き換え、標準化スケールとした。b1:心身機能(精神機能)、b2-9:心身機能(身体機能)、d1-3:活動と参加(認知)、d4,5:活動と参加(運動)、d6-9:活動と参加(社会参加)の6つの項目グループのそれぞれについて換算式を作成した。
2. 自宅環境因子チェックリスト(Home Environment Checklist)の検者間信頼性の検討を行い、すべての項目について臨床使用に良好な信頼性を確認した。
3. ミニマムセットについては、前年度に作成した項目の修正を行い、20項目のミニマムセットおよび25項目からなる回復期用の回復期セットを作成した。
4. ICFの簡潔で直感的な説明文(Simple, intuitive description)の日本語版の作成及び英訳の作成を実施し、発表を行った。
5. 前年度に作成した評点リファレンスガイドを用いた採点について、検者間信頼性の検証を行った。重み付けκ係数は0.63~0.82と、substantial~excellentの信頼性が得られ、リファレンスガイドを用いた場合には先行研究と比較して高い信頼性が得られることを確認することができた。また、解説付きの採点用アプリケーションを作成した。
結論
今年度は、前年度までに作成した、ICFを用いて情報収集を広く行っていくための仕組みについてのフィールドテストによる検証を中心に行った。今後はさらに、広くデータ収集を行って行くためのデータベース構築、より大規模なフィールドテストの実施に取り組む予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201702004B
報告書区分
総合
研究課題名
医療の質の評価指標としてのICF評価セット(日本版)およびデータ収集ツールの作成
課題番号
H28-統計-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
才藤 栄一(藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学I講座)
研究分担者(所属機関)
  • 出江 紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)
  • 園田 茂(藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学II講座)
  • 水間 正澄(医療法人社団輝生会教育研修局)
  • 山田 深(杏林大学医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類(以下ICF)は世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(以下ICD)と対をなす障害分類の枠組みとして、2001年に採択された。ICFは生活機能に関わる非常に多岐に渡る評価項目により構成され、生活機能に関わる領域を網羅的にカバーしている。現在、臨床への普及を促進する取り組みが世界各国で進められている。
 本研究では、日本および国際的なICFの普及に貢献するべく、臨床において使いやすい情報収集の仕組みの構築と医療の質の評価に用いる仕組みの構築に取り組んだ。
研究方法
1. ICF評価セット(日本版)の修正および既存のスケールを用いた情報収集システムの臨床試用と修正
 前年度に作成したデータ収集用の入力システムを用い、臨床場面における試用を行い、使用者のインタビューを通じてフィードバックを受け、修正を加えた。さらに、脳卒中患者を対象としたフィールドテストを行った。
2. 自宅環境因子チェックリストの作成と検者間信頼性の検討
 環境因子の情報収集のため、自宅環境因子チェックリストを作成した。チェックリストの作成にあたっては本邦の臨床場面において広く用いられているリハビリテーション総合実施計画書の記載項目をICFにリンクし、環境因子として同定した項目の情報収集を行うチェックリストを作成した。さらにこのチェックリストを用いて信頼性および妥当性の検討を行った。
3. ミニマムセットの作成
 簡便な評価のため国際リハビリテーション学会内のICFグループを中心に進められている研究の枠組みに参加し、ICFコアセットの一つでリハビリテーション対象患者に向けて作成されたICFリハビリテーションセットをベースとして、日本版のミニマムセットを作成した。
4. 簡潔かつ直感的な説明文の作成
ICFリハビリテーションセットの臨床における普及を進めていくにあたって、リハビリテーション分野における国際共同研究として、各項目の簡潔で直感的な説明文を作成するプロジェクトが進められている。本研究ではこのプロジェクトに参加し、日本語版を作成に取り組んだ。
5. 評点リファレンスガイドの作成
ICFには評点が用意されているものの、評点の基準は、大まかなものしか用意されておらず、採点の信頼性に懸念があった。そのため当研究では国際共同研究として、リファレンスガイドの作成を行った。基準の恣意性を排除するため、認知インタビューとチームディスカッションからなる手順を事前に作成し、それに基づいてガイドの作成を行った。また、それを用いたフィールドテストを行い、重み付きκ係数を用いた検者間信頼性の検証を行った。
結果と考察
1. ICF評価セット(日本版)については、本邦で広く用いられているリハビリテーション総合実施計画書に含まれる項目と国際的に利用されているICFリハビリテーションセットの項目をベースとして作成した評価セットのベータ版を元に、臨床での試用に基づいた臨床家からのフィードバックを受けて修正版を作成した。脳卒中患者150名を対象としたフィールドテストを実施し、Rasch分析によって能力推定値を利用した標準化指標への換算を行った。
2. 自宅環境因子チェックリストの検者間信頼性の検討を行い、すべての項目について臨床使用に良好な信頼性を確認した。また、既知グループ妥当性の確認も実施し、評価スケールとしての妥当性を確認した。
3. ミニマムセットについては、簡便な評価のため国際リハビリテーション学会内のICFグループを中心に進められている研究の枠組みに参加し、ICFコアセットの一つでリハビリテーション対象患者に向けて作成されたICFリハビリテーションセットをベースとして、日本版のミニマムセットを作成した。
4. 国際共同研究で定められた手順により専門家によるワークショップを開催し、日本語版の作成及び英訳の作成を先行研究において確立された手順に従って行った。
5. 臨床家の実際の採点とインタビューに基づき、評点リファレンスガイドを作成した。評点リファレンスガイドを用いた採点について、検者間信頼性の検証を行った。重み付けκ係数は0.63~0.82と、良好な信頼性が得られ、先行研究と比較して高い信頼性が得られることを確認することができた。また、解説付きの採点用アプリケーションを作成した。
結論
ICF評価セット(日本版)とミニマムセットの作成および情報収集を広く行っていくための仕組みの構築に取り組み、フィールドテストを実施し、大規模なデータ収集を行っていく基礎となる仕組みを作成することができた。今後はさらに、ICFの臨床への普及およびその有用性を高める生活機能の評価の仕組みの発展に取り組む予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201702004C

収支報告書

文献番号
201702004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 652,556円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,347,444円
間接経費 0円
合計 2,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-10-24
更新日
-