医療費適正化に向けた生活保護受給者の医薬品処方および生活習慣病の実態調査:大規模レセプト分析

文献情報

文献番号
201701015A
報告書区分
総括
研究課題名
医療費適正化に向けた生活保護受給者の医薬品処方および生活習慣病の実態調査:大規模レセプト分析
課題番号
H29-政策-指定-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 由光(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石崎 達郎(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活保護受給者の生活習慣病有病状況および医薬品処方の実態について、平成28年度特別研究にて明らかになった課題を解決し、新たな検討を行うために、(1)生活保護受給者の健康管理支援の観点から、代表的な生活習慣病である糖尿病 、高血圧症、脂質異常症について検討を行う。レセプトに記載されている傷病名だけでなく、医薬品処方のデータも活用することでより正確な有病状況を推測し、生活保護受給者の生活習慣病の有病の実態を明らかにする。(2)医療扶助の適正化の観点から、生活保護受給者の医薬品の情報の集計を行い、医療費算出のための基礎情報を収集する。また、3疾患に係る後発医薬品の数量シェアについても検討を行う。(3)複数の医療機関から同一内容の処方が短期間で処方されている重複処方のより詳細な実態を明らかにする。(4)医療扶助実態調査が対象とするレセプトを用いた分析の限界について検討を行う。NDBでは、より詳細なレセプト情報が含まれているため、医療扶助分析の比較対象としてのNDBの利活用の可能性について検討する。また、NDBについて、全額公費負担医療レセプトの利活用の可能性について検討を行う。さらに、生活保護受給者の比較対象として、生活習慣病の有病状況に関する政府統計のレビューを行う。
研究方法
統計法第33条による調査票情報の提供についての申出を行い、平成27年医療扶助実態調査で対象とされた平成27年6月審査分のレセプトを取得し、5月診療分を用いてレセプトデータ分析を行った。傷病名、医薬品の分類を行い、有病割合、医療費、医薬品費、後発医薬品シェア(数量ベース)、重複処方の実態を明らかにした。NDBについては、第三者利用に関する利用者に向けた利便性向上策の動向についてレビューを行ったうえで、特別抽出による公費負担医療レセプトの利活用の可能性について検討を行った。患者調査、国民健康・栄養調査、人口動態調査を用いて、全国民における高血圧、糖尿病、脂質異常症の有病割合を調べた。
結果と考察
平成27年医療扶助実態調査で対象とされた平成27年6月審査分のレセプトのうち、5月診療分を用いてデータ分析を改めて行った。糖尿病、高血圧症、脂質異常症の有病者数は、それぞれ167,123名(生活保護受給者2,161,442名を分母としたときの有病割合7.7%)、449,966名(20.8%)、241,067名(11.2%)であった。また、3疾患のいずれかの疾患を有する者は551,043名(25.5%)、3疾患すべてを有する者は60,159名(2.8%)であった。県別有病割合(年齢調整)では、割合が高い県と低い県で2.6~2.9倍の差があった。糖尿病患者では、医薬品費(53.1億円)のうち糖尿病治療薬24.7%(13.1億円、一人当たり平均7,858円)、高血圧症患者では、医薬品費(114.0億円)のうち高血圧症治療薬17.2%(19.7億円、一人当たり平均4,368円)、脂質異常症患者では、医薬品費(64.0億円)のうち脂質異常症治療薬11.2%(7.2億円、一人当たり平均2,984円)であった。後発医薬品シェア(数量ベース)は、糖尿病治療薬62.6%、高血圧症治療薬57.9%、脂質異常症治療薬64.0%であった。処方が多い医薬品ほど重複処方も多い傾向がみられ、生活習慣病治療薬においても同様の傾向であった。1患者が利用している薬局数が2施設以上の患者が21.1%いた。
結論
平成27年において、生活保護被保護者のうち、糖尿病、高血圧症、脂質異常症の有病者数は、それぞれ167,123名(有病割合7.7%)、449,966名(20.8%)、241,067名(11.2%)であった。糖尿病患者では、医薬品費(53.1億円)のうち糖尿病治療薬24.7%(13.1億円、一人当たり平均7,858円)、高血圧症患者では、医薬品費(114.0億円)のうち高血圧症治療薬17.2%(19.7億円、一人当たり平均4,368円)、脂質異常症患者では、医薬品費(64.0億円)のうち脂質異常症治療薬11.2%(7.2億円、一人当たり平均2,984円)であった。後発医薬品シェア(数量ベース)は、糖尿病治療薬62.6%、高血圧症治療薬57.9%、脂質異常症治療薬64.0%であった。1患者が利用している薬局数が2施設以上の患者が21.1%いた。生活保護受給者の状況を検討するためには、比較対象として公的医療保険加入者の状況を把握することも必要であり、NDBサンプリングデータセットなどを用いた検討も必要である。さらに、医療扶助レセプトには含まれない他の公費負担医療を受けている受給者もいることから、生活保護受給者の医療の実態解明のためには、他の公費負担医療レセプトに関する情報が求められる。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201701015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,310,000円
(2)補助金確定額
10,348,000円
差引額 [(1)-(2)]
962,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,287,919円
人件費・謝金 3,198,076円
旅費 968,127円
その他 284,629円
間接経費 2,610,000円
合計 10,348,751円

備考

備考
補助金交付額が1000円単位であるため、端数処理をおこなったため。

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-