畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
199800594A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α2アドレナリン受容体刺激剤であるxylazine(XZ)は動物の輸送時における鎮静剤として汎用されているが、その代謝物の2,6-dimethylaniline(DMA)はラットの鼻腔に対して発癌性を示し、畜産食品中への残留によるヒトへの影響が懸念されていることから、XZの国際基準の策定は未だなされていない。この食品中の安全性確保のために、XZおよびDMAの鼻腔腫瘍プロモーション作用の有無を明確にすることを目的として以下の実験を行った。
ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(Tgマウス)は短期間の被験物質投与により遺伝毒性発がん物質の検出に非常に感受性が高いことが示されていることから、DMAの発がん性の有無をこれらの動物を用いて検討した。
その他、内寄生虫用剤のトリクラベンダゾール及びモキシデクチンについて残留検査法を検討した。
研究方法
N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine(DHPN) 2400 mg/kgをイニシエーターとしてラットに単回投与後、1000ppm のXZ ないし300あるいは3000ppm のDMA混餌飼料を52週間にわたり投与した。
雌雄のヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子を導入したトランスジェニックCB6F1マウス(rasH2マウス)および同腹仔の非導入野生型CB6F1マウス(Non-Tgマウス)にDMA 3000 ppm 混餌飼料あるいは基礎飼料を26週間自由に摂取させた。
トリクラベンダゾールの検査法は、トリクラベンダゾール及びその代謝物を酸化した後、高速液体クロマトグラフィーによる検査法を検討した。モキシデクチンの検査法は、イベルメクチン試験法(平成7年12月厚生省告示第218号)を基に、高速液体クロマトグラフィーによる検査法を検討した。
結果と考察
ラットの52週間実験のDHPN+DMA 3000ppm群では、鼻腔に対して発癌プロモーション作用が認められたが、その他の群では認められなかった。一方、 DHPN+XZ群では甲状腺に対し発癌プロモーション作用を示す成績が得られた。
rasH2マウスの実験は投与を終了し、現在、組織標本を作製中である。
トリクラベンダゾールの定量下限は、肝臓、筋肉及び脂肪においてそれぞれ0.01ppmであった。添加回収試験を行った結果、各試料に対する回収率は平均で85%以上であり、相対標準偏差はいずれの試料も5%以内であった。モキシデクチンの定量下限は、筋肉、脂肪、肝臓及び牛乳においてそれぞれ0.005ppmであった。添加回収試験を行った結果、各試料に対する回収率は平均で90%以上であり、相対標準偏差はいずれの試料も5%以内であった。
結論
動物用医薬品の残留基準値設定に必要な資料として代謝物の安全性に関する情報が要求されている。今回、家畜の鎮静剤として用いられているxylazine(XZ)およびその代謝物である2,6-dimethylaniline(DMA)の鼻腔腫瘍プロモーション作用の検討ならびにrasH2マウスを用いたDMAの鼻腔腫瘍誘発の有無の検討を行った。その結果、DMAの鼻腔腫瘍プロモーション作用が示唆されたがXZにおいては確認されなかった。一方、XZには甲状腺腫瘍プロモーション作用があることが明らかとなった。
残留検査法に関しては、トリクラベンダゾール及びモキシデクチンについての残留検査法を検討し、実用に適する検査法を確立した。FAO/WHOから国際規格として勧告されている各種動物薬については、我が国もそれらの物質についての規格設定が必要であり、今回の動物薬についての検査法の確立はその残留規制を円滑にするものである。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-