在宅医療・在宅看取りの状況を把握するための調査研究

文献情報

文献番号
201701008A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療・在宅看取りの状況を把握するための調査研究
課題番号
H28-政策-指定-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 堀田 聰子(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 前田 正一(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
  • 田上 豊(埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の希望に添った看取りを実現するためには、在宅での終末期医療・介護提供体制や提供状況に関する実態を地域毎で把握し、関係者間で課題・阻害要因を共有し、対策を検討するといったマネジメント展開が必要となるが、現時点では、実態把握のための手法すら確立できていない状況にある。そこで、本研究では、在宅看取りの実態を把握するための手法を開発するとともに、死亡診断書に基づく現行の統計管理/運用上の課題の抽出と改善策の提言を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、1)既存データ(「在宅医療にかかる地域別データ集(以下、地域別データ)」「在宅療養支援診療所(以下、在支診)に係る報告書」「人口動態統計死亡小票」など)による看取りの実態把握の現状・課題と改善策の検討、2)在宅看取りに関する既存統計のデータ収集方法・項目等の現状と問題点を把握するための、関係者(研究者(人口学/統計学/医事法学)、厚生労働省、市町村、シンクタンク、臨床家等)へのヒアリングを実施した。
結果と考察
1)地域別データ分析により、自宅死亡の促進/阻害要因の分析ができる(阻害要因:病院病床数/介護施設定員数が多い、促進要因:在支診数が多い)
2)在支診に係る報告書を用いた分析より、種類別活動実態(機能強化(連携型)の場合、自宅での看取り割合に医療機関間のバラツキが大きいなど)が把握できる
3)人口動態調査死亡小票分析より、死亡場所別/死因別/看取った医療機関の所在地別/エリア別の看取りの状況の把握ができる
などがわかった。その一方で、
1)小規模自治体の場合、年間死亡者数が少ない。そのため、医療施設調査に基づく地域別データの看取り件数(月次)では、実績なしの自治体が約4割にものぼってしまう。そのため、同データを活用しにくい状況にある
2)在支診に係る報告書を入手するためには、地方厚生局または事務所に対し、情報開示請求が必要となる。また、資料の多くはpdf提供のため、データ入力に対する費用と手間が生じる
3)柏市では、厚生労働省に対する申出により人口動態調査死亡小票データを入手しているが、その手続きが煩雑であり、かつ、期間も数か月を要する。また、データ入手後のデータ分析に対する負荷も大きい
4)実態を把握するための情報源としては、死亡診断書の内容が転記される「人口動態調査死亡小票」が最も適していると考えられるが、①「人口動態調査死亡票」には死亡診断書と死体検案書の区分を記入する欄が設けられていない(死亡診断書と死体検案書の区別がない)ため、死体検案数を含んだ看取り件数、看取り率になっている。そのため、本来把握したい死亡診断書に基づく死亡者数が把握できない、②死亡診断書には最終的な死亡場所が記載されるため、本人の意向に基づき、在宅療養を続けながら最期は入院で看取った場合も病院死扱いになってしまう(支援プロセスが反映されない)、
など、データ自体の問題とデータ入手/分析に対する問題があることがわかった。
結論
厚生労働省が計画策定上の指標として提示している「市町村別在宅死亡者数」や「在宅死亡割合」を算出する際の元データは「人口動態統計死亡小票データ」であるが、その死亡者数の中には検案死も含まれており精度に課題がある。こうした状況が起こる原因は、人口動態調査死亡票に死亡診断書(検案書)の原本の情報を転記する際、診断書か検案書かの区別をつけるための記入欄が存在しないことにある。この問題を解決するため、現行の人口動態死亡票の様式に、死亡診断書と検案書を区別する欄を設けた上で(様式変更)、死亡診断書(検案書)の原本を各保健所が人口動態調査死亡票に転記する際、原本上部にある記載情報を追加入力するといった運用変更及びシステム改修を行う必要があると考える。また、市町村単位での分析が難しいものに関しては、国で一括して分析し、市町村別データ集として公表していくことも検討すべきと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201701008B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅医療・在宅看取りの状況を把握するための調査研究
課題番号
H28-政策-指定-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 堀田 聰子(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 前田 正一(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
  • 田上 豊(埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の希望に沿った看取りを実現するためには、人生の最終段階における医療・介護提供体制や提供状況に関する実態を地域毎で把握し、関係者間で課題・要因を共有し、対策を検討するといったマネジメント展開が必要となるが、現時点では、実態把握のための手法すら確立できていない状況にある。
そこで、本研究では、既存統計を用いた在宅看取りの実態把握の現状・課題と改善策を検討するとともに、死亡診断書に基づく現行の統計管理ならびに運用上の課題の抽出と改善策を提言することを目的とする。
研究方法
初年度は、①先行研究調査(文献、報告書)、②在宅医療にかかる地域別データ分析、③在宅療養支援診療所(以下、在支診)等における看取りの実態に関するデータの収集及びデータベース化、④人口動態調査死亡小票(以下、死亡小票)のデータ分析などを、最終年度は、①看取りの実態把握に向けた市町村の取り組みについてのヒアリング調査、②死亡診断書の記載および運用上の課題に関する臨床家へのヒアリングなどを行った。
結果と考察
既存データの利活用に関し、
1) 在宅医療にかかる地域別データにより自宅死亡割合の阻害・促進要因が分析できる一方で、同データの看取り数は月次データのため、約4割の市町村では看取り実績なしとなっているなど、改善すべき点があること
2) 在支診に係る報告書データにより在支診の種類別活動実態が分析できる一方で、厚生局への情報開示請求等の手続きやpdf資料のデータ化の問題があること
3) 死亡小票データにより、死亡場所別/死因別/看取った医療機関の所在地別/エリア別の看取りの実態が分析できる一方で、①厚生労働省へのデータ入手に対する申出といった手続き上の問題、②本データの看取り数には死体検案死数が含まれているといったデータの精度上の問題があること
などがわかった。また、死亡診断書に基づく統計管理ならびに運用上の課題として、
1)死亡診断書に記載された死亡場所種別と実際の死亡場所の一致率が、介護老人保健施設等で低いこと
2)死亡診断書情報を死亡小票に転記する際、死亡診断書と死体検案書の区別をつける様式になっていないこと(そのため、死亡小票データの看取り数には検案死がふくまれてしまうこと)
などがわかった。
結論
看取りに関する重要指標である「自宅看取り率」の精度向上を図るためには、現行の死亡小票の様式に、死亡診断書と検案書を区別する欄を設け(様式変更)、死亡診断書(検案書)の原本を死亡小票に転記する際、原本上部にある記載情報を追加入力するといった運用変更・改修を行う必要がある。また、死亡診断書を記載する医師が、多様化する死亡場所を適切に選択することが難しい実態を踏まえて、死亡診断書情報を死亡小票転記者が、死亡者の住所と施設一覧表を比較・確認しながらデータ修正を図るといった運用を加えることが望ましいと考える。
また、市町村単位での分析が難しいものに関しては、国で一括して分析し、市町村別データ集として公表していくことも検討すべきと考える。市町村によるデータ活用を進めるためには、現行の地域別データ集の改善(看取り数は年ベースに変更するなど)を図るとともに、介護保険事業計画策定に用いられる「地域包括ケア『見える化』システム」と連携・連動し、看取りに関する現状分析と対策の検討、効果検証を市町村単位で実施できる仕組みに変えていく必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201701008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
在宅看取りの約7割を在宅療養支援診療所(在支診)がカバーしているが、医療機関ごとの活動実態は明らかとなっていない。本研究では、厚生局が行っている活動報告データ分析により、①届出種類は「従来型」が約8割を占めているが、そのうち約3割は年間死亡者数なしであること、②死亡者数に占める在宅死亡者割合の分布状況をみると、在宅看取り中心と入院看取り中心の医療機関が混在していることなどの実態を明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
在宅看取り提供体制を整備する主体は市町村である。したがって、市町村自身が、在宅医療・看取りに関する現状と課題を把握し、関係者を交えた会議にて課題の共有と対策の検討を実施し、対策の効果を定期的にモニタリングするといったマネジメントが必要となる。現状把握に関しては、本研究のなかで、厚生労働省が整備している「在宅医療にかかる地域別データ集」の課題の整理と改善策の提案を行うことができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
研究代表者及び研究分担者1名が構成員として参加している、厚生労働省医政局主催の「全国在宅医療会議及びワーキンググループ」にて、現在の自宅看取り率には検案死が多く含まれているといった課題があることを指摘するとともに、「在宅医療にかかる地域別データ集」の改善点の指摘などを行っている。
その他のインパクト
東京都国立市において,事例ベースでの看取り等に関する課題抽出,ロジックモデルの導入などの新たな手法を取り入れた地域医療計画の策定に貢献した(2019年3月公表)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
田上豊、山口乃生子、星野純子他
埼玉県における地域での看取りに関わる要因分析
保健医療福祉科学 ,  (Vol.7) , 26-31  (2018)
原著論文2
Igarashi A, Yamamoto-Mitani N, Yoshie S, et al.
Patterns of long-term care services use in a suburban municipality of Japan: a population-based study
Geriatr Gerontol Int.  (2016)
原著論文3
Kimura T, Yoshie S, Tsuchiya R, et al.
Catheter replacement structure in home medical care settings and regional characteristics in Tokyo and three adjoining prefectures
Geriatr Gerontol Int.  (2016)
原著論文4
Kimura T, Yoshie S, Tsuchiya R, Kawagoe S, et al.
Cooperation between Single-Handed and Group Practices Ensures the Replacement of Gastrostomy Tubes and Tracheal Cannulas in Home Medical Care Settings
Tohoku J. Exp. Med.  (2017)
原著論文5
Feg M, Igarashi A, Yamamoto-Mitani N, et al.
Characteristics of care management agencies affect expenditure on home help and day care services: A population-based cross-sectional study in Japan.
Geriatr Gerontol Int.  (2017)

公開日・更新日

公開日
2022-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201701008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,230,000円
(2)補助金確定額
4,230,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 907,805円
人件費・謝金 897,341円
旅費 76,080円
その他 2,349,649円
間接経費 0円
合計 4,230,875円

備考

備考
自己資金852円

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-