文献情報
文献番号
201701005A
報告書区分
総括
研究課題名
真のエイジング・イン・プレイス実現に向けた包括的実証研究
課題番号
H28-政策-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院 )
- 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院 公共経営研究科)
- 柏木 聖代(横浜市立大学 医学部 看護学科)
- 松田 智行(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
- 植嶋 大晃(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
要介護高齢者が長く在宅で過ごすことは地域包括ケアを推進するにあたり中核となるものであるが、それを実現するには、本人、家族そして地域の選択を尊重した、真のエイジングインプレイスを目指すことが重要である。我々は全国介護レセプトを用いた独自の指標として在宅期間を算出したが、関連する要因までは明らかになっていない。そこで本研究では、在宅日数を用い、地域差に焦点を当てて在宅期間の促進要因や阻害要因を同定することを目的とする。さらに、国民生活基礎調査等を用いた介護負担に関する分析や、モデル地域のレセプトを用いた分析、茨城県つくば市の調査および事例検討会の記録を用いた分析も合わせて、在宅生活の限界点を引き上げるための政策課題を明らかにする。
研究方法
今年度は、在宅生活継続に関連する市区町村の要因を明らかにするために、全国を俯瞰した観点から、全国介護レセプトを用いた市区町村を単位とする分析(以下、エコロジカル・スタディ)により、急変時や終末期における支援体制の整備が在宅生活の継続を促進する可能性を示した。次に家族介護者については、国民生活基礎調査による全国的な観点からの分析と、つくば市のアンケート調査による地域の実情に目を向けた分析を行い、脳梗塞と認知症では長時間の介護に関連する日常生活動作の支援が異なること、介護の動機が介護負担に関連することを明らかにした。また、多職種での在宅生活支援に関する研究として、地域の現場における個別の困難事例の集積であるつくば市事例検討会について、困難事例の問題点の類型化および支援方法のプロセス評価まで含めた実施方法について検討を行った。
結果と考察
全国介護レセプトを用いたエコロジカル・スタディについては、申請を行っていた全国データの提供を受け、前年度に行っていた予備的分析に基づいて、在宅日数から算出した市区町村の指標を目的変数とした分析を行った。本研究により、在宅での生活を支援するサービスに加え、急変時の支援体制や終末期の支援体制が重度要介護高齢者の在宅生活に関連する可能性があることが明らかとなった。本研究の結果は国内学会において発表した。国民生活基礎調査を用いた分析については、全国介護レセプトと同時期にデータの提供を受け、介護時間を目的変数とした分析を行った。身体清拭、体位交換・起居、服薬は脳梗塞患者においてのみ長時間の介護に関連した一方で、口腔清掃、着替え、入浴は認知症患者においてのみ長時間の介護に関連した。また、トイレ動作、食事は脳梗塞、認知症の双方において長時間の介護に関連した。本研究の結果から、長時間の介護に関連する日常生活動作は脳梗塞と認知症で異なり、疾患の特性に応じて異なる支援が必要であることが明らかになった。本研究の結果は国際学会において発表した。つくば市の調査を用いた研究については、平成26年に実施した調査について、介護負担を目的変数とした分析を実施した。本研究により、介護の動機や、家族介護者が介護の方針に対し意見を述べることができないこと、要介護者が認知症であることが高負担感と関連があることが明らかとなった。つくば市の事例検討会のデータを用いた研究については、地域ケア個別会議の困難事例の問題点の類型化および支援方法のプロセス評価まで含めた実施方法を整理した。今後さらに、キーワードの分類内容や実施方法を発信することにより、より地域間の比較が可能となり、地域特性を踏まえた地域ケア会議の運用に寄与できると考える。なお、本研究の結果は国内学会において発表した。また、分担研究者(植嶋)が、平成30年1月中旬にオランダに出張し、オランダにおけるヘルスサービスリサーチや疫学調査、在宅医療の実態について視察を行った。オランダでは実施した政策が科学的に評価され、その結果や実態に合わせた修正が行われている。本視察により、本課題を進める上で有用な知見が得られた。
結論
今年度の研究により、在宅生活の継続を促進するためには、本人だけでなく、本人を取り巻く地域の環境や、家族の状況を考慮する必要があることが考えられた。次年度は、今年度の研究に加え、全国介護レセプトを用いた在宅介護サービスの提供状況や、モデル地域のレセプトを用いた在宅医療介護サービスの提供状況および在宅生活継続との関連を明らかにする。これらの結果をまとめ、在宅生活継続の促進要因および阻害要因を明らかにし、政策に反映する方法について提言を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2018-11-27
更新日
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