岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究

文献情報

文献番号
201625020A
報告書区分
総括
研究課題名
岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究
課題番号
H25-健危-指定(復興)-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小林 誠一郎(岩手医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 康司(藤田保健衛生大学 医療科学部)
  • 祖父江 憲治(岩手医科大学 学長)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部)
  • 石橋 靖宏(岩手医科大学 医学部)
  • 中村 元行(岩手医科大学 医学部)
  • 滝川 康裕(岩手医科大学 医学部)
  • 千田 勝一(岩手医科大学 医学部)
  • 酒井 明夫(岩手医科大学 副学長)
  • 大塚 耕太郎(岩手医科大学 医学部)
  • 鈴木 るり子(岩手看護短期大学 地域看護学)
  • 川上 憲人(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 西 信雄(医薬基盤・健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
  • 米澤 慎悦(岩手県予防医学協会 事業推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
75,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、平成23年度に研究に同意した被災地住民約1万人に健康調査を実施することにより、健康状態の改善度・悪化度を客観的に評価し、1.被災者に適切な支援を継続的に実施すること、2.震災の健康影響を縦断的に評価できる体制を構築することにある。本年度は、平成23年度から平成28年度にかけて収集してきた健診結果を用いて、現時点で被災地住民に生じている健康課題を明らかにした。
研究方法
本研究班は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町、陸前高田市、山田町、釜石市平田地区を対象に健康調査を実施した。ベースライン調査は、平成23年度に行われた。対象地域の18歳以上の全住民に健診の案内を郵送し、健診会場にて研究参加の同意を得た。ベースライン調査には10,475人が参加した。平成24年度は7,687人、平成25年度は7,141人、平成26年度は6,836人、平成27年度は6,507人、平成28年度は6,157人が健診を受診した。
健康調査の項目は、身長・体重・腹囲・握力、血圧、眼底・心電図(40歳以上のみ)、血液検査、尿検査、呼吸機能検査である。また、大槌町では歯科健診も実施している。
問診調査の項目は、被災者の生活や健康状態、心情を考慮し、時期に応じて項目の修正を図ってきた。平成23年度の項目は震災前後の住所、健康状態、治療状況と震災の治療への影響、震災後の罹患状況、8項目の頻度調査による食事調査、喫煙・飲酒の震災前後の変化、仕事の状況、睡眠の状況、ソーシャルネットワーク、ソーシャルサポート、現在の活動状況、現在の健康状態、心の元気さ(K6)、震災の記憶(PTSD)、発災後の住居の移動回数、暮らし向き(経済的な状況)である。65歳以上の受診者には平成23年度から活動状況等に関する追加調査を行っている。平成24年度には頭痛の問診を追加した他、平成25年度は、震災による死別や家屋被害、現在の居住環境についても質問項目を追加した。平成26年度には若年者・小児を対象とした健康状態や生活状況についての調査を、平成27年度には健診未受診者を対象とした未受診理由、健康状態、社会関係についての調査をそれぞれ実施した。平成28年度は教育(学校に通った年数)、日中の眠気(エプワース眠気尺度)の項目を追加した。
本研究の実施にあたってはヘルシンキ宣言および疫学研究倫理指針に従う。また、本研究は岩手医科大学医学部倫理委員会の承認を得ている。
結果と考察
6年間の健康状態、生活習慣、社会的支援の推移を分析したところ、男女とも主観的な健康状態には大きな変化はないものの、睡眠障害や心の健康度に所見のある者、社会的支援が少ない者の割合は初年度以降で減少し、平成26年度からはほぼ横ばいとなっていた。また生活習慣についても、喫煙者、運動量が少ない者の割合は減少傾向にあった。一方で、高血圧、糖尿病、脂質異常の有所見者は徐々に増加している傾向が認められた。また居住形態と健康状態、生活習慣、社会的支援の関連性を検討した結果、プレハブ・みなし仮設住宅、および災害公営住宅の居住者において、男性では心の健康や睡眠に問題がある者、喫煙者、運動量が少ない者の割合が多い傾向が認められ、女性でも男性と同様に心の健康や睡眠に問題がある者が多く、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者が多い傾向が認められた。未受診者と受診者の健康状態の比較では、未受診者で、K6が5点以上の精神健康不良の者、不眠が疑われる者、PTSDが疑われる者、健康状態の自己評価が悪い者、ソーシャルネットワークが少ない者が有意に多いことが明らかとなった。また平成25年度から平成26年度に実施した岩手県、宮城県、福島県の3県における調査結果の分析においては、仮設住宅居住者では東日本一般住民とくらべて、自殺念慮の発生率が約3倍高かった。仮設住宅および災害公営住宅の居住者や健診未受診者について、こうした精神健康や生活習慣、社会的支援の問題に対する支援が引き続き重要であることが示唆された。
結論
岩手県の東日本大震災被災者の生活は落ち着きを取り戻しつつあることがうかがえた。一方、仮設住宅および災害公営住宅居住者や健診未受診者では、依然として精神健康や生活習慣、社会的支援に問題を抱える住民の割合が多いことなど、問題が残っていることが明らかになった。また平成25年度から平成26年度に実施した岩手県、宮城県、福島県の3県における調査では、仮設住宅居住者では東日本一般住民とくらべて、自殺念慮の発生率が約3倍高かった。今後も調査を継続し、支援を行っていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201625020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
82,632,000円
(2)補助金確定額
82,632,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,592,851円
人件費・謝金 5,541,777円
旅費 1,518,440円
その他 60,466,932円
間接経費 7,512,000円
合計 82,632,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-29
更新日
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