化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法検討に関する研究

文献情報

文献番号
201625019A
報告書区分
総括
研究課題名
化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法検討に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
布施 明(日本医科大学 医学部 救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 林 春男(防災科学技術研究所)
  • 鈴木 進吾(防災科学技術研究所)
  • 河本 志朗(日本大学総合科学研究所)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、“化学・爆弾テロなど特殊事件における迅速でより安全な新たなプレホスピタル対応手法を開発し施策として提案すること”である。
研究方法
3か年計画の中で、初年度のH28(2016)年度は我が国で関係省庁等が作成した報告書等を整理して、事態対処医療を包含した化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する対応手法を検討した。H28(2016)年度救助技術の高度化等検討会報告書(消防庁国民保護・防災部参事官付)の第I編「検討会の概要」及び第IV編「爆弾テロ災害時における消防機関が行う活動マニュアル」の目次より想定される爆弾テロ対応時の留意事項、連絡体制、初動措置の動き等、を基本として、同報告書の第II編「化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアル」より、化学災害又は生物災害時の留意事項、連絡体制、初動措置の動きなどについても整合性を図った。さらに、NBCテロ対策幹事会(事務局:内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付)と取りまとめた「NBCテロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」も加えて検討し、内容を統合した。抽出した内容は、他の報告書等との整合性を比較しやすいようにシーンごとに整理した。
結果と考察
対象事案はCBRNEによるテロ・災害である。大規模集客施設など不特定多数のものが利用する場所での爆発で発生要因が不明の場合は、爆弾テロを想定した活動を行うことが求められる。すなわち発生場所や時間等が予測できず警戒レベルが高くないイベント会場、駅などのソフトターゲットにおける爆弾テロが想定される。爆弾という手段が単独のテロ以外にも化学剤、生物剤、放射性物質等の危険物質を使用した爆弾テロも十分に想定される。また、立てこもり、大型自動車での暴走、銃乱射事案等と爆弾テロの同時発生も考えられる。したがって、CBRNEテロ・災害では、爆弾テロを中心としつつも、多数傷病者活動マニュアル、化学災害、放射性物質等による災害マニュアルとも整合性を持たせた総合的な対応が必要となる。その際に重要なことは、まず、多数傷病者活動マニュアルが基本にあって、その次に爆弾テロ対応マニュアルであり、最後が化学剤、生物剤、放射性物質等の危険物質によるテロ対応マニュアルの順に考えることである。
関係機関活動の主眼は、①災害実態(犯罪の鎮圧、捜査、被疑者の逮捕を含む)、二次攻撃及び二次災害発生の危険性等についての情報共有・災害発生現場の安全性の評価、②化学剤、生物剤、放射性物質等の危険物質を使用した複合的なテロ災害発生の可能性を考慮した活動、③二次災害発生に対する活動隊員の安全管理、④災害発生場所付近の住民等に対する避難誘導、⑤関係者、避難者等からの情報収集、⑥進入統制ライン及び消防警戒区域の設定、⑦迅速な要救助者の救出、⑧爆傷傷病者への応急処置、⑨傷病者の医療機関への搬送、等である。
爆弾テロの初動時は、CBRN対応のため化学防護服の上に防火衣を着装した身体防護措置で活動する場合もあるとされるため、火災の発生がないことを確認後は、レベルA着装による簡易検知活動等を実施することが考慮される。爆破によって建物倒壊等による粉塵等の危険物質が飛散している可能性があるため、空気呼吸器や防塵フィルターが取り付けられたマスク等を着装する。危険物が検知されなかった場合は、多数傷病者活動マニュアルを参考とした装備、資機材、活動を参考とするとされるが、現実的には装備の不完全な隊が初動することが最も多いものと考えられる。装備不完全な隊がどのように初動するかも含めた対応の検討が必要である。
結論
爆弾テロを想定した活動では、当初から化学災害・生物災害の複合を考慮して初動から対応するマニュアルが想定されるが、実際の動きに即した運用であることが望ましい。発災初動での現場活動や救急医療機関の活動においては、原因が特定されていない中での活動も十分に想定される。大規模テロ災害においては二次攻撃の危険性や多数傷病者発生など異なる対応も求められる。“all hazard approach”を基本的な考えとする活動を重視した災害・テロ対応が重要である。
「NBCテロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」はテロ対応に関わる全ての官庁、組織が目を通している報告書であり、その認知度は高い。したがって、このモデルの記述をベースに他の報告書などとの整合性を図るのが適当であると考えられる。2016年に大規模な爆弾テロ等の大量殺傷型テロへの初動措置関する記述が追加されており、テロ対応に必須の内容である。
本研究報告は想定される動きを検討したものであって、必ずしも関係省庁の考えと整合していることを保証するものではないが、妥当性は十分にあるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201625019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,120,000円
(2)補助金確定額
3,120,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 638,690円
人件費・謝金 0円
旅費 338,153円
その他 1,423,157円
間接経費 720,000円
合計 3,120,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-02-21
更新日
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