文献情報
文献番号
201625015A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
- 長岡 宏美(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
- 森本 洋(北海道立衛生研究所 感染症センター感染症部)
- 磯部 順子(富山県衛生研究所 細菌部)
- 佐々木 麻里(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
- 中西 典子(神戸市環境保健研究所 感染症部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
20,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
公衆浴場等の水系施設における不適切な衛生管理は、重篤な肺炎等となるレジオネラ症等の感染症の原因となる。そこで、公衆浴場等の水系施設の適切な消毒法の検討とその効果の実証を行う。また、水系施設の衛生状態を確認するためにレジオネラ検査は不可欠であり、その改良、評価を行っていく。これまでに成果を上げてきた消毒法や検査法の改善点について、どのように還元し、普及を目指すかも課題である。
研究方法
各研究項目は、1から数名の研究分担者及び研究協力者が参加し、実施された。
結果と考察
社会福祉施設の入浴設備にモノクロラミン消毒装置を設置し、適用終濃度3 mg/Lのモノクロラミン管理を行うことで、レジオネラ不検出を維持できた。週1回2時間、レジオネラに有効であった10 mg/Lモノクロラミンによる配管洗浄を併用していたが、時間の経過とともに高い従属栄養細菌数が検出された。分離菌株の殺菌試験の結果、20 mg/Lのモノクロラミン消毒による対策が必要と考えられた。また、25Mプールのモノクロラミン消毒を実験的に行なったところ、塩素臭がなく、一般細菌、レジオネラは不検出であった。
入浴施設のシャワーから生じる飛沫は、利用者が吸い込む危険があり、給湯系の衛生管理は重要である。レジオネラ属菌が継続して検出された入浴施設のカラン、シャワーは、高濃度塩素処理により、不検出となった。3医療機関の水道水試料を検査したところ、全機関からレジオネラ属菌が検出された。給水・給湯系の構造、材質などの調査と、水質の理化学検査を行なったが、レジオネラ属菌の菌数、菌種等との相関は不明であった。給水の末端では残留塩素濃度が不十分になることがレジオネラ属菌検出の最大の要因と考えられ、調査対象の1医療機関について、受水槽に次亜塩素酸ナトリウム添加装置を設置した。
河川水はアメーバ共培養法で6/20検体(30.0%)から、 Legionella属菌が検出された。道路沿い、浴室中の空気を捕集し、検査したところ、Legionella属菌は分離されなかったが、それぞれ7割前後の検体からLegionella属菌の遺伝子がqPCRにより検出された。
試作された抗 Legionella pneumophila血清群1抗体結合免疫磁気ビーズを用いて、通常の培養検査では分離されなかったL. pneumophila血清群1を入浴施設の浴槽水から分離することができた。本手法は、レジオネラ症患者発生時の感染源特定の一助となると考えられた。
レジオネラ属菌迅速検査法として、qPCR法、EMA qPCR法、PALSAR法、LAMP法、LC EMA qPCR法について、浴槽水などの実検体349検体を用いて、平板培養法に対する感度、特異度などの評価を行った。 LC EMA qPCR法が、平板培養法の菌数を反映している方法であると考えられた。比色系パルサー法については、検水を注射筒を用いてフィルターでろ過後、そのフィルターごと溶菌処理する方法について検討し、良好な結果を得た。
従来用いられてきたL. pneumophilaの遺伝子型別法であるSBT法よりも簡便で、かつ同等以上の識別能力をもつと期待されるMLVA法の検討を行った。従来法を改良した。SBT法では32種類のST (sequence type)に分けられた臨床由来の48株について、MLVA法による解析を行ったところ、36のMLVAタイプに分類でき、本法の有用性が確認された。
公衆浴場における水質基準等に関する指針について、検討の結果、原湯等における糞便汚染指標菌を大腸菌群から大腸菌に変更し、大腸菌検査に特定酵素基質法を適用することは妥当と考えられた。
培養アカントアメーバにL. pneumophilaを感染させる際に、ヘパリンなどの硫酸基を分子構造中に一定の割合で含む硫酸化多糖を添加すると感染率が上昇することを見出した。同じ高分子糖鎖で非硫酸化多糖のヒアルロン酸は、逆に感染抑制の作用を示した。
民間会社が実施した外部精度管理サーベイについて、助言を行い、方法の改善を図った。公的、民間合わせて全国165の検査機関が参加し、本研究班からは71地衛研が参加した。昨年度同様ろ過濃縮による報告結果が良い傾向にあった。いくつかの研修会において、斜光法を含めたレジオネラ属菌標準的検査法の普及に努めた。
入浴施設のシャワーから生じる飛沫は、利用者が吸い込む危険があり、給湯系の衛生管理は重要である。レジオネラ属菌が継続して検出された入浴施設のカラン、シャワーは、高濃度塩素処理により、不検出となった。3医療機関の水道水試料を検査したところ、全機関からレジオネラ属菌が検出された。給水・給湯系の構造、材質などの調査と、水質の理化学検査を行なったが、レジオネラ属菌の菌数、菌種等との相関は不明であった。給水の末端では残留塩素濃度が不十分になることがレジオネラ属菌検出の最大の要因と考えられ、調査対象の1医療機関について、受水槽に次亜塩素酸ナトリウム添加装置を設置した。
河川水はアメーバ共培養法で6/20検体(30.0%)から、 Legionella属菌が検出された。道路沿い、浴室中の空気を捕集し、検査したところ、Legionella属菌は分離されなかったが、それぞれ7割前後の検体からLegionella属菌の遺伝子がqPCRにより検出された。
試作された抗 Legionella pneumophila血清群1抗体結合免疫磁気ビーズを用いて、通常の培養検査では分離されなかったL. pneumophila血清群1を入浴施設の浴槽水から分離することができた。本手法は、レジオネラ症患者発生時の感染源特定の一助となると考えられた。
レジオネラ属菌迅速検査法として、qPCR法、EMA qPCR法、PALSAR法、LAMP法、LC EMA qPCR法について、浴槽水などの実検体349検体を用いて、平板培養法に対する感度、特異度などの評価を行った。 LC EMA qPCR法が、平板培養法の菌数を反映している方法であると考えられた。比色系パルサー法については、検水を注射筒を用いてフィルターでろ過後、そのフィルターごと溶菌処理する方法について検討し、良好な結果を得た。
従来用いられてきたL. pneumophilaの遺伝子型別法であるSBT法よりも簡便で、かつ同等以上の識別能力をもつと期待されるMLVA法の検討を行った。従来法を改良した。SBT法では32種類のST (sequence type)に分けられた臨床由来の48株について、MLVA法による解析を行ったところ、36のMLVAタイプに分類でき、本法の有用性が確認された。
公衆浴場における水質基準等に関する指針について、検討の結果、原湯等における糞便汚染指標菌を大腸菌群から大腸菌に変更し、大腸菌検査に特定酵素基質法を適用することは妥当と考えられた。
培養アカントアメーバにL. pneumophilaを感染させる際に、ヘパリンなどの硫酸基を分子構造中に一定の割合で含む硫酸化多糖を添加すると感染率が上昇することを見出した。同じ高分子糖鎖で非硫酸化多糖のヒアルロン酸は、逆に感染抑制の作用を示した。
民間会社が実施した外部精度管理サーベイについて、助言を行い、方法の改善を図った。公的、民間合わせて全国165の検査機関が参加し、本研究班からは71地衛研が参加した。昨年度同様ろ過濃縮による報告結果が良い傾向にあった。いくつかの研修会において、斜光法を含めたレジオネラ属菌標準的検査法の普及に努めた。
結論
公衆浴場等施設の衛生管理の向上を目指して、消毒法の検討と、検査法の検討を二本柱として、研究を実施した。
今後も、効果的な消毒法・検査法の確立および普及、浴場等の衛生管理要領等の改正のための知見等を得るために、研究を継続実施する。
今後も、効果的な消毒法・検査法の確立および普及、浴場等の衛生管理要領等の改正のための知見等を得るために、研究を継続実施する。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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