水道水質の評価及び管理に関する総合研究

文献情報

文献番号
201625014A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水質の評価及び管理に関する総合研究
課題番号
H28-健危-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院生活環境研究部)
  • 大野 浩一(国立保健医療科学院生活環境研究部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
  • 越後 信哉(京都大学大学院工学研究科)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院生活環境研究部)
  • 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部)
  • 高木 総吉(大阪府立公衆衛生研究所衛生化学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部)
  • 宮脇 崇(福岡県保健環境研究所・計測技術課)
  • 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部)
  • 西村 哲治(帝京平成大学薬学部)
  • 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
28,994,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水源から浄水・給配水に至るまでに多種多様に存在する微量化学物質や病原生物等の水質リスクを明らかにし,適切に管理するための評価手法を検討する.
研究方法
微生物,化学物質・農薬,消毒副生成物,リスク評価管理,水質分析法の5課題群-研究分科会を構築し,研究分担者14名の他に47もの水道事業体や研究機関などから83名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
塩素の消失に伴う蛇口水の汚染が懸念されているが,実態調査対象の医療機関では開栓直後の初流水でレジオネラが検出された.トウガラシ微斑ウイルスの除去率は各種ウイルスと同程度であることが再現し,ウイルス指標として有効と考えられた.クリプトスポリジウムの河川汚染実態から養豚排水の対策が汚染の低減に必要と考えられ,低減方法を検討した.浄水において検出最大濃度が1µg/Lを超えた農薬はブロモブチドとピロキロンであり,昨年に比べて減少した.基準改正に伴い新たに追加された農薬が検出農薬数の1/4を占め,分類見直しの測定指標値が有効である一方,8農薬がリスト掲載農薬類への追加を検討すべき候補として抽出された.フィプロニル等の分解物と平成25年に登録されたイプフェンカルバゾンの実態調査を開始した.ネオニコチノイド系は5農薬が検出された.テフリルトリオンについて検討を進め,分解物CMTBAは個別農薬評価値への算入は必要ないことを確認した.化学物質の検出状況としては,1,2-エポキシプロパン(酸化プロピレン)等の検出濃度が仮の評価値に比べて高かった.化学物質の基礎情報と検出状況についてデータベースを作成し,インターネットで公表できるようにした.浄水処理対応困難物質のうちクロロホルム前駆体6物質について,オゾン処理,GAC処理ともにクロロホルム生成能の大幅な低減に効果があることを示した.新規消毒副生成物であるハロアセトアミド類の実態調査を行い,浄水中に普遍的に存在していること(総濃度0.3-3.8 µg/L),ジハロアセトアミドの濃度・検出頻度が高いことを示した.ハロ酢酸生成実態と低減対策を示した.カルキ臭原因物質として有機物質が無視できない可能性を示した.フェルニルアラニンの塩素処理由来の臭気に関して,2-クロロ-2-フェニルアセトアルデヒドが新たに検出され,全臭気の60%が説明できた.また,クロラミン類生成原因物質の除去についてオゾンやPAC処理の効果は限定的であった.カルキ臭の予測手法として揮発性窒素分析(TPN)を取り上げ,官能試験による測定の長期トレンドにTPNが追随する傾向があることを示した.トリクロラミンの活性炭処理での挙動と反応機構を数値計算モデルにより把握することができた.農薬の分解物に対する毒性評価法として,オキソン体以外の有機リン系農薬分解物の検出する方法の第一段階として,コリンをLC/MS/MSにて定量するコリンエステラーゼ活性阻害性試験を構築した.飲料水質評価値の算定のための暴露評価法の開発の第一段階として,浴室におけるトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンの濃度を実測し,トリハロメタン類と揮発性を比較した.水質管理項目に記載されている有機化学物質を中心とした8物質の亜急性参照値を設定した:水質管理項目の目標値に対して概ね4-30倍高い値となった.一方,ニッケルの国際的評価の情報を収集し,アレルギー反応を基に許容値等が設定される方向にあることが示された.アレルギー反応が急性影響であり,さらに体内吸収率の違いを考慮する必要があると考えられた.水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドをDNPHで誘導体化した試料をLC/UVあるいはLC/MS/MSにより測定する方法および水道水中の臭素酸をLC/MS/MSにより測定する方法の妥当性評価を実施した.これら分析法は水道水の標準検査法として利用可能と考えられた.また,標準物質を用いずにデータベースに登録された物質のスクリーニング分析を行うためのGC/MS用データベースに153種の農薬を登録できた.
結論
クリプトスポリジウム汚染の実態,ヒト感染ウイルスとトウガラシ微斑ウイルスなどとの処理性の比較,ネオニコチノイド系農薬やテフリルトリオン,ハロアセトアミド等新規消毒副生成物,カルキ臭原因物質の活性炭処理性挙動,亜急性参照値の算定,ニッケルの安全性評価状況,網羅的ターゲットスクリーニング分析手法におけるGC-MS用データベースの構築,ホルムアルデヒドのLC-MS分析法の開発など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた.これらの成果は学術論文や学術集会で多数公表されるとともに,厚生労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資された.

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201625014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,734,000円
(2)補助金確定額
30,580,000円
差引額 [(1)-(2)]
154,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 17,172,163円
人件費・謝金 2,069,020円
旅費 5,819,859円
その他 3,779,084円
間接経費 1,740,000円
合計 30,580,126円

備考

備考
154,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-02-16
更新日
-