芳香族アミンの膀胱に対するin vivo遺伝毒性および細胞動態の短期解析

文献情報

文献番号
201624023A
報告書区分
総括
研究課題名
芳香族アミンの膀胱に対するin vivo遺伝毒性および細胞動態の短期解析
課題番号
H28-化学-若手-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,210,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働曝露による膀胱がん多発事例への関与が疑われる5種の芳香族アミン(o-トルイジン、o-アニシジン、2,4-キシリジン、p-トルイジン、アニリン)をラットに経口投与し、膀胱における病理組織学的検索ならびにγH2AXをはじめとする毒性・発がん関連因子の発現解析を通じて、細胞動態への影響と毒性機序に関するデータの取得を目的とする。
研究方法
5種の芳香族アミン(0.8% o-トルイジン、1% o-アニシジン、0.4% 2,4-キシリジン、0.2% p-トルイジン、0.6%アニリン)の塩酸塩を、6週齢の雄F344ラットに4週間混餌投与した。投与2日、1週間、2週間、投与終了時(4週間)および2週間の休薬後に解剖し、膀胱を採材、病理組織学的検索および免疫組織化学的手法によるγH2AX/Ki67発現解析を実施した。
結果と考察
病理組織学的検索において、0.8% o-トルイジン投与群の膀胱には粘膜内出血等の急性毒性から、び漫性の粘膜上皮過形成に至る経時的な病変の変化が認められた。膀胱上皮でのγH2AX(DNA損傷マーカー)/Ki67(細胞増殖関連因子)発現を検索した結果、0.8% o-トルイジンと1% o-アニシジン投与群では、γH2AX陽性細胞の有意な増加が認められた。一方、2,4-キシリジン、p-トルイジン、アニリン投与群では、明らかな膀胱病変およびγH2AX/Ki67発現誘導は観察されなかった。
結論
本研究の結果から、検索した5種の芳香族アミンのうち、o-トルイジンおよびo-アニシジンはラット膀胱に対してin vivo遺伝毒性を有する可能性が示唆された。一方で、病理組織学的検索により、両物質の膀胱粘膜傷害機序は互いに異なることが明らかとなった。今後、o-トルイジンおよびo-アニシジンによる膀胱粘膜の細胞動態について、遺伝子発現解析等の分子生物学的検討を交えて、さらに詳細に検討を加える予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201624023Z