カーボンナノチューブ等の肺、胸腔及び全身臓器における有害性並びに発癌リスクの新規高効率評価手法の開発

文献情報

文献番号
201624013A
報告書区分
総括
研究課題名
カーボンナノチューブ等の肺、胸腔及び全身臓器における有害性並びに発癌リスクの新規高効率評価手法の開発
課題番号
H28-化学-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 病理学・分子毒性学)
  • 内木 綾(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学分野)
  • 山村 寿男(公立大学法人 名古屋市立大学大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺内に吸引された炭素繊維は肺胞・肺胞壁、胸膜に沈着して持続的異物炎症を誘発する。それらの有害作用の評価には通常は吸入曝露試験が要求され、それによってMWCNT-7(H社)は肺に発がん性を示すことが判った。MWCNTは事業者によって形状・物性が異なるため、個々の製品についての試験が必要であるが、吸入曝露試験には専用設備と高額な稼働費のために実施は極めて限定される。我々は吸入曝露に代わる短期間気管内投与(TIPS法)によってMWCNT-N(N社)に肺と胸膜中皮発がん性を示すことを報告した。本研究ではこのTIPS法によって投与したMWCNTについて、短期観察にて肺胞、気管・気管支、胸膜腔の炎症の発生機序と、投与後2年間の経時観察によって発がん性の有無を明らかにし安価にして信頼性の高い発がん性評価法を確立することを目的とした。
研究方法
1)検体には鉄を含まないフラーレン(FL)、フラーレンウィスカー(FLW)、多層より柔軟な二層カーボンナノチューブ(DWCNT)(Sigma-Aldrich)を用いる。1.短期TIPS投与による炎症・増殖性病変の解析では、MWCNTは気相分散後にt-butylalcohol(TBA)に懸濁凍結して(Taquann法)、投与直前に凍結乾燥後直ちにPF68コポリマー含有生食中に分散させ125μg/0.5mlを15日間に8回(計0.25~1mg/ラット)投与後屠殺した。1)肺胞細気管支と胸膜腔の洗浄液よりMφを採取し、一定量のMφの培養上清のヒトがん細胞・胸膜中皮細胞・肺線維芽細胞等に対する増殖活性を観察している。肺凍結試料からはRNA、蛋白を抽出して炎症性サイトカインと酸化損傷の解析を行う。肺固定標本では肺胞上皮と胸膜中皮の増殖を検討する。2.上記短期TIPS投与後2年までの観察による病変の可逆性と、発がん性について検討する(経過中)。1、2において、陽性対照としてMWCNT-N(長さ2~4μm・直径30~80nm)およびMWCNT-7(長さ3.5μm・直径30~80nm)を用いている。2)MWCNTをTIPS投与したラットの気道障害とクリアランスの測定を行った。蛍光シリカビーズをPBSに懸濁し、TIPS投与後に気管と肺を摘出し蛍光ビーズを回収した。
結果と考察
1)1.MWCNTを貪食させた培養上清の肺胞と胸膜中皮細胞に対する増殖活性試験は、層数の少ない単層、二層CNTについて、陽性対照のMWCNT-7と同様にヒト肺がんと胸膜悪性中皮腫細胞に対する増殖刺激作用がみられた。また、このモデルにおいてFLとFLWを投与した実験では鉄の含量、DWCNTでは層数と肺、胸膜中皮の障害・発がん性についての重要な情報が得られつつある2.2週投与後2年観察する長期試験は経過中である。2)MWCNT吸入暴露直後に肺内に取り込まれたビーズの蛍光強度はMWCNT群で約50%低下していることがわかった。このTIPS法については、以下のことが言える。実際の暴露経路を考えるとラット・マウスでは複雑な構造の鼻腔でトラップされ、ヒトは口から直接肺に吸気が入る場合が多々あるので(タバコ等)、気管内投与が現実にそぐわないとは言い切れない。その意味で、リスク評価上妥当性がある。検体の液相分散性においてTaquann法にて分散後のものを使用することによって改良が加えられてきた。本法の胸腔洗浄液の解析は線維状物質に特異的とも言える胸膜病変の発生について多くの有用な情報が得られつある。MWCNTに対するMφの動態に注目した解析法は、肺胞上皮細胞と胸膜中皮の増殖の機序の解析として有効であり、早期病変の検出法の開発につながると考える。厚生労働省の有害物質リスク対策における「職場で使用される化学物質の発がん性評価の加速化」作業では前がん病変を指標とした中期発がん性試験」が通例の2年発がん性試験の代替法として採用されている。本法における経時観察によって前がん病変を把握できれば、発がん性リスク評価の高速化に大いに貢献できる。「2週TIPS投与―2年無処置観察モデル」は、2年吸入曝露法に比べ圧倒的に低コストであり、有害・発がんリスク評価の加速化が可能となる。
結論
H28度の申請の1.検体をTIPS法にて2週間の短期に投与したラットについて、1)1.肺、気管、胸腔、胸腔洗浄液等の炎症/毒性/増殖病変とその作用因子解析にける炎症反応の解析と、2)2.投与後2年までの経時観察による慢性毒性/発がん性観察の試験系において、現在1.について結果が得られつつある。2.については、MWCNT-Nについてすでに肺と胸膜中皮に発がん性が見出されおり(Cancer Sci. 2014)現在進行中の長期実験で同様の結果が観察されれば、短期試験の病変との関連を明らかにして、試験期間の短縮に利用することが出来る。

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201624013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,400,000円
(2)補助金確定額
14,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,415,419円
人件費・謝金 5,348,108円
旅費 398,270円
その他 915,203円
間接経費 3,323,000円
合計 14,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
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