血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201623025A
報告書区分
総括
研究課題名
血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制のあり方に関する研究
課題番号
H28-医薬-指定-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 昌重(一般社団法人 日本血液製剤機構・戦略本部経営戦略部)
  • 友清 和彦(一般財団法人 化学及血清療法研究所・分画事業部門事業推進部)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
法令違反など人為的原因による供給危機を防止するために、製造事業者のコンプライアンス・ガバナンス体制のあり方を検討する。加えて、血漿分画製剤を製造している国内3社を主体にした危急時の代替的製造体制の構築や平時と緊急時の法体制や各種規則等についての比較研究を行なうことにより、血漿分画製剤の平時・有事における安定的確保・製造供給体制のあり方を提示することが研究目的である。
研究方法
現行法令や健康危機管理事象に対する種々の行政計画などを分析して、その問題点を同定することで危機管理事象が生じた際の血液事業が円滑に運営されるための計画策定の可能性を検討した。併せて、米国AABBの災害対応ハンドブックの内容を明らかにし、その特性を分析した。血漿分画製剤の安定供給のための関係者の役割の同定および安定供給のシステム化に関する研究については、日本血液製剤機構や外資メーカー等の公表資料を用いた。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の審査を受けている。
結果と考察
1)血液製剤の確保等に関する主な法令等の内容と問題点
 健康危機管理に関する法令や災害対策基本法に基づく防災基本計画、武力攻撃を受けたときに国民の保護のための措置等を定めた厚生労働省国民保護計画などの記述内容を分析したが、血液製剤の製造供給体制に関して有事の計画の策定を特に定めたものはなかった。
2)米国AABBの災害対応ハンドブック
米国における血液センター、病院の血液バンクおよび輸血サービスの血液供給に影響を与える災害またはテロ行為への対応と準備を支援するものである。重要事項としては、①血液の医療的ニーズの決定、②施設間の血液の運搬、③国及び災害を受けた地域における血液供給の状況に関して、国の血液関係機関および一般市民に対する共通の広報事項の伝達に関するものであった。
3)血漿分画製剤の製造および供給面に内在するリスク
 血漿分画製剤を高脆弱性から低脆弱性までに分類した。高脆弱性に該当するものとして血液凝固因子製剤、免疫グロブリン製剤及びC1-インアクチベーターがあげられる。中脆弱性に該当するものとして組織接着剤、IVIGがあげられる。IVIGは製剤により特定の疾患に対する適応がないことから代替品として使用するにあたり有効性・安全性の検証が求められる。低脆弱性に該当するものとして免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、アルブミン製剤が該当した。
4)血漿分画事業の特殊性とコンプライアンス/ガバナンス体制について
化血研、メドウエイ事案共に、コンプライアンス/ガバナンスとリスクマネジメントが問われた事案である。両事案共に、公的事業であること、安定供給の責任があることが圧力となった経緯を踏まえると、事業計画立案段階からガバナンスが働かないために、無理な事業計画を押しとおそうとする姿勢が結果的に不祥事に繋がったと見るべきであろう。
危急時の血液製剤の安定的確保を図るための法制度や行政計画などが欠落している。危急時の血液製剤の確保といった事後的対応システムから脱却していないことに由来していると考えられる。
米国AABBの災害対応ハンドブックは、災害等による血液製剤需要に適切にこたえられるように、平素より準備計画を策定し、実際の場面でそれを発動し、結果を評価してハンドブックの内容を改善している。事前対応システムとなっている。加えて、わが国では具体的な災害等による血液事業への影響を軽減するための事前計画は策定されていない。その主たる要因は、事業継続計画(BCP)を策定しても、それが単一の企業、官庁、関係部局等で、関係者を包括した横断的なBCPが策定されていないことによる。米国のAABBの災害対応ハンドブックは関係者を網羅して、事務局も定めて具体的内容を盛り込んで策定されていることも日米間の大きな差異である。
 血漿分画製剤の安定供給に際しては①血漿の確保、②血漿分画製剤の製造工程、③原材料の輸送および製品の流通の3つの段階に分けられ、各段階におけるリスクとして、原料血漿の不足、品質管理上の技術的欠陥、大規模災害が示唆された。これらのリスクを軽減するためには、平時からの関係者の有機的な連携が必要である。
分画製剤事業については、製剤供給工程の上流から下流までが同一の理念の基で事業活動が展開されることであり、そのような価値及び理念の共有化をベースに、事業体のコンプライアンス/ガバナンスは論じられる必要があろう。
結論
血液事業は未だ事後的対応を主体とした運営がされている。早急に事前対応型システムも踏まえた形での課題解決を指向した検討が必要である。そして、平時より関係者を包括した形で、血液製剤の安定供給及び製造供給体制の在り方を構築していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201623025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 228,472円
人件費・謝金 731,083円
旅費 535,111円
その他 1,505,401円
間接経費 0円
合計 3,000,067円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-11-10
更新日
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