薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築に関する総合研究

文献情報

文献番号
201623023A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築に関する総合研究
課題番号
H28-医薬-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
藤吉 圭二(追手門学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝治 武(大阪人権博物館)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の最終的な目標は、薬害事件と関連する資料を対象に、その保存状況の調査、整理を踏まえ、そうした資料を共有・活用するシステムとして「薬害資料データ・アーカイブズ」を構築することである。この達成のため、残された資料をもとに薬害の経験を広く後世に伝え、それを様々な分野で活用できるようなインフラストラクチャーを用意することである。とはいえ、このような最終目標は短時日に実現できるものではない。そこで今年度は、薬害関連被害者団体が所蔵している資料の一部を対象に、薬害関連資料の体系的な管理のための基盤を構築し、「薬害資料データ・アーカイブズ」へとつながるものとすることを目的とした。社会的に影響を持ったどれほど大きな出来事であっても、時代の流れにつれて風化を免れない。薬害の経験は被害を受けた当事者のみにとどめておくべきものではなく、広く社会の経験として将来に向け多面的に生かしていくべきものというべきである。残された記録をベースに、こうした経験の共有を図るのが本研究の目的である。
研究方法
 今年度は「薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築」を目標とし、データベースの構築に欠かすことのできない基盤を作り上げる。具体的には、関係者の高齢化により手当の緊急性が高い資料を対象に、目録記述、目録入力(基本的にファイルレベル)、公開分類(シリーズレベル)などを行なうことである。このため以下のような作業を実施する。
①過去3年間の調査結果を基に薬害資料等を統一的・体系的に整理・保存するための方法について検討し、これを実際の資料に実践する。
②「薬害データ・アーカイブズ基盤構築」のため、資料管理対象団体の選定、入力項目の選定、資料概要・目録記述の作成、形態別目録入力などを行う。
③被害者個人や団体において、資料整理マニュアル(仮)の訂正や整理・保存の実施に当たっての助言・指導を実施する。
④被害者及び被害者団体は全国に存在している。この中で特に資料整理支援が必要な団体の場合は、現地で資料整理、目録入力、公開分類などを行って、マニュアルを訂正する。
結果と考察
 昨年度まで本研究を中心的に担われた金慶南氏を8月に迎え、大阪人権博物館にてワークショップを実施した。これを踏まえ、その後に薬被連当事者と新研究班との関係の再構築、および大阪人権博物館での活動環境の整備を進め、以下のような活動を軸に研究を推進した。(1)大阪人権博物館での資料整理と調査、(2)薬害被害当事者との信頼関係構築、(3)薬害資料整理のためのワークショップ。以下、これら3つの軸について以下にまとめていく。
(1)大阪人権博物館での資料整理と調査
 大阪人権博物館では、かねてより薬害被害者との交流を深めており、その過程で、薬害被害者の遺品や薬害の資料などが保管されるようになっていた。立地も外部から資料整理要員を確保するにも有利であった。夏のワークショップ後には、奈良女子大学関係者を中心に作業チームを編成でき、作業効率の大幅な向上が見られた。
(2)薬害被害当事者との信頼関係構築
研究代表者をはじめ今年度の研究班は新規参加の研究者と薬被連の関係者との打合会を実施し、新たに編成された研究班の研究活動方針等をお示しし、質疑応答などする過程で信頼関係の醸成に努めた。
(3)薬害資料整理のためのワークショップ
 本研究において資料の保管、整理、目録作成は、あくまで被害者団体が主体となって実施していただくべきものであり、研究班の任務は、当事者のそうした主体的な取り組みを専門的な視点からサポートすることにある。この観点から、従来の研究班も被害者団体を訪問して所蔵資料の現況を調査すると共に、資料整理・目録作成の指導を重ねてきている。
結論
 冒頭に示したとおり、本研究の最終的な目標は、戦後の薬害事件に関連する薬害資料を対象に、その保存状況の調査、整理を踏まえ、そうした資料を共有・活用するシステムとして「薬害資料データ・アーカイブズ」を構築することである。この最終目標を念頭に、今年度は、(1)大阪人権博物館での資料整理と調査、(2)薬害被害当事者との信頼関係構築、(3)薬害資料整理のためのワークショップに取り組んだ。この結果、大阪人権博物館での安定した資料整理・調査の目処が立つと共に、今後どのように薬害資料を活用していくかに関する意識を薬害被害当事者の間にも具体的に持っていただくことができた。息の長い作業になると見込まれるが、今後も当事者との信頼関係を大事にしつつ調査、研究を推進していきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623023C

収支報告書

文献番号
201623023Z