機能性化粧品成分の個体差等に基づく安全性評価法の策定に関する研究

文献情報

文献番号
201623017A
報告書区分
総括
研究課題名
機能性化粧品成分の個体差等に基づく安全性評価法の策定に関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院医学研究科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学大学院医学研究科)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田保健衛生大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑発症に関し、ロドデノールの代謝によるメラノサイト傷害の可能性が示唆されているが、一部の患者では塗布部以外にも白斑が波及する難治性白斑が見いだされ、病態や発症機序は未だ明らかでは無い。本研究は、患者由来組織やモデル動物を用い、発症機序のさらなる解明を進める。また白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化に注目して測定方法を検討し、新規美白成分の安全性評価法策定への貢献をめざす。
研究方法
原因究明:ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症例ならびに尋常性白斑患者の病変部皮膚、健常人の正常皮膚を組織学的に比較解析した。また血液の自己抗体等を解析した。機関研究倫理審査委員会の承認を取得し、試料データは連結可能匿名化し研究を進めた。またロドデノール白斑モデルマウスを用いて病態解明を行った。
安全性評価法の構築:ロドデノールおよび類似化合物のチロシナーゼによる代謝活性化を、システインペプチドの結合により測定した。代謝活性化による細胞毒性増強について、代謝物を合成し、あるいは293T細胞にチロシナーゼを発現し解析した。
結果と考察
[I]原因究明:昨年度に引き続き、患者および健常人の皮膚検体の免疫組織学的解析を行い、改善例、難治例に関わらず病変辺縁部においてグルタチオン合成酵素の有意な発現低下を認めた。また、尋常性白斑症例との自己抗体の違い、HLA-DAとチロシナーゼの直接会合によるメラニン産生抑制とロドデノールによる増強、皮膚炎や紫外線とのロドデノールのメラノサイトへの負の影響、ロドデノール白斑モデルマウス病態への細胞接着分子の関連の可能性など、病態形成や個体差との関わり解明に手がかりとなる知見を得た。
[II]安全性評価法の構築:ロドデノールや白斑誘導性類似化合物は共通してチロシナーゼによる代謝活性化を受けることが報告されている。生成するオルトキノン体は不安定であることから、感作試験Direct Peptide Reactivity Assay用システイン含有ペプチドとの結合により測定する方法について反応条件を検討した。またロドデノール代謝物重合体を合成し強い酸化促進作用を明らかにした。一方、代謝活性化による細胞傷害仮説の検証を試みたが、チロシナーゼ高発現細胞においては、4-SCAPは毒性増強が認められる一方、ロドデノールなどチロシナーゼ阻害剤はむしろ内因性チロシン代謝による細胞毒性を抑制する結果を得た。また代謝試験においてマッシュルームチロシナーゼに替えヒトチロシナーゼを用いるために、可溶性酵素の調製方法を確立した。引き続き条件の至適化を行い、測定系の改良を進める予定である。
結論
ロドデノール白斑の発症機序解明のため、患者検体とモデルマウスからの試料を使い、多面的に病態解明を行った。症例におけるグルタチオン合成酵素の低下に加え、ロドデノール影響の個体差への関与が考えられる分子機構・免疫異常を明らかにした。白斑発症機構は単一の要因では説明がつかないことから、各研究のさらなる展開が望まれる。安全性評価法の確立に向けては、白斑誘導性化合物のチロシナーゼによる代謝活性化と細胞毒性との関係、代謝物の酸化促進作用を解析するとともに、代謝活性化をシステイン含有ペプチドとの結合反応により測定する方法を検討した。さらに改良を進め、新たな健康被害防止につなげる予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201623017B
報告書区分
総合
研究課題名
機能性化粧品成分の個体差等に基づく安全性評価法の策定に関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院医学研究科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学大学院医学研究科)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田保健衛生大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑発症に関しては、平成25-26年度厚生労働科学研究において再発防止策の検討と臨床・基礎からの原因究明が行われた。ロドデノールの代謝によるメラノサイト傷害の可能性が報告されているが、一部の患者では塗布部以外にも白斑が波及する難治性白斑が見いだされ、病態や発症機序には未だ不明な点が多い。本研究は、患者由来組織やモデル動物を用い、発症機序のさらなる解明を進める。また白斑誘導性類似化合物に共通するチロシナーゼによる代謝活性化に注目して測定方法を検討し、新規美白成分の安全性評価法策定への貢献をめざす。
研究方法
原因究明:ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症例ならびに尋常性白斑患者の病変部皮膚、健常人の正常皮膚を組織学的に比較解析した。また患者皮膚生検サンプルや血液を用いてメラノサイトやリンパ球、自己抗体を解析した。機関研究倫理審査委員会の承認を取得し、試料データは連結可能匿名化し研究を進めた。またロドデノール白斑モデルマウスを用いて病態解明を行った。
安全性評価法の構築:ロドデノールおよび類似化合物のチロシナーゼによる代謝活性化をシステインペプチドの結合により測定した。代謝活性化による細胞毒性増強について、代謝物を合成し解析した。各種メラノーマ細胞のチロシナーゼ発現量を変化させ、あるいは293T細胞にチロシナーゼを発現し解析した。
結果と考察
[I]原因究明:患者および健常人の皮膚検体の免疫組織学的解析を行い、改善例、難治例に関わらず病変辺縁部においてグルタチオン合成酵素の有意な発現低下を認めた。また、形態的に尋常性白斑と異なるメラノサイト異常、患者末梢血中のリンパ球の異常、ならびにロドデノールによるメラノサイトのオートファジー経路への影響、尋常性白斑症例との自己抗体の違い、HLA-DAとチロシナーゼの直接会合によるメラニン産生抑制とロドデノールによる増強、皮膚炎や紫外線とのロドデノールのメラノサイトへの負の影響、ロドデノール白斑モデルマウス病態への細胞接着分子の関連の可能性など、病態形成や個体差との関わり解明に手がかりとなる知見を得た。
[II]安全性評価法の構築:ロドデノールや白斑誘導性類似化合物は共通してチロシナーゼによる代謝活性化を受けることが報告され、白斑発症との強い関連が示唆される。生成するオルトキノン体は反応性が高く不安定であることから、(1)感作試験Direct Peptide Reactivity Assay用システイン含有ペプチドとの結合反応により測定する方法を検討した。また (2)代謝活性化による細胞傷害の可能性については、個体差の大きなメラノサイトに代替し、メラノーマ細胞や293T細胞のチロシナーゼ発現量を変えて検討を行ったが、仮説を支持する結果は得られなかった。チロシナーゼ高発現により、4-SCAPは毒性増強が認められる一方、ロドデノールなどチロシナーゼ阻害剤はむしろ内因性チロシン代謝による細胞毒性を抑制する結果が得られた。一方、(3)ロドデノール代謝物重合体(メラニン)を合成し強い酸化促進作用を明らかにした。また、(4)代謝試験においてマッシュルームチロシナーゼに替えヒトチロシナーゼを用いるために、可溶性酵素の調製方法を確立した。引き続き条件の至適化を行い、測定系の改良を進める予定である。
結論
ロドデノール白斑の発症機序解明のため、患者検体とモデルマウスからの試料を使い、多面的に病態解明を行った。症例におけるグルタチオン合成酵素の低下に加え、ロドデノール影響の個体差への関与が考えられる分子機構・免疫異常を明らかにした。白斑発症機構は単一の要因では説明がつかないことから、各研究のさらなる展開が望まれる。安全性評価法の確立に向け、白斑誘導性化合物のチロシナーゼによる代謝活性化と細胞毒性との関係、代謝物の酸化促進作用を解析するとともに、代謝活性化をシステイン含有ペプチドとの結合反応により測定する方法を検討した。さらに改良を進め、新たな健康被害防止につなげる予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑発症に関し、患者由来組織やモデル動物を用いた発症機序の解明を進め、病変辺縁部での抗酸化酵素の低下のほか、複数の要因や個体差の関与を示唆する知見を得た。また、ロドデノールや白斑誘導性類似化合物に共通する「チロシナーゼによる代謝活性化」に着目し、ペプチド修飾による測定・細胞毒性による評価の可能性を検討した。次期研究班で要因同定と手法の改良を進め、新規美白成分の安全性評価法の確立を図る。
臨床的観点からの成果
ロドデノール白斑の発症機序解明を患者由来組織やモデル動物を用いて進め、複数の要因や個体差の関与を示唆する知見を得た。次期研究班での症例蓄積・白斑発症関連因子の同定により、治療戦略への貢献が期待される。また成果を取り入れ安全性評価法を構築することにより、化粧品成分・医薬部外品による新たな健康被害防止につながる。
ガイドライン等の開発
ロドデノールや白斑誘導性類似化合物の代謝特性に基づく新規美白成分の安全性評価法として、OECDテストガイドラインに採用されている感作試験法DPRAに「代謝活性化」を組み込む新しい手法の検討を進めた。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、白斑誘導能の評価方法は、医薬部外品の承認申請にかかる参考試験方法として承認審査の際に活用されることが可能である。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ito S, Okura M, Wakamatsu K, Yamatshita T.
The potent pro-oxidant activity of rhodo-den-drol-eumelanin induces cysteine depletion in B16 melanoma cells.
Pigment Cell Melanoma Res. , 30 , 63-67  (2017)
doi: 10.1111/pcmr.12556.

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201623017Z