製薬企業等による薬事関連コンプライアンス違反の実態とその背景を踏まえた再発防止策の提案

文献情報

文献番号
201623011A
報告書区分
総括
研究課題名
製薬企業等による薬事関連コンプライアンス違反の実態とその背景を踏まえた再発防止策の提案
課題番号
H27-医薬A-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 理恵(日本大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,303,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度に実施した病院薬剤師をモニターとする広告監視モニター制度のパイロットスタディの結果により、クローズドの環境下での製薬企業による情報提供の実態を把握するのに広告監視モニター制度が有効であることを示した。そこで、本年度は、病院薬剤師によるパイロットスタディを続けるとともに、薬局薬剤師をメンバーとする広告監視モニター制度のパイロットスタディも実施する。また、医師、歯科医師に対しMRの活動について、インターネットを通じた簡単なアンケート調査を実施する。
医療関係者が不適切な情報提供を受け入れない環境を作ることにより、そのような活動をしても得にならない状況を作り出すことが大切である。そこで、医療関係者に対し製薬企業が提供する情報に不適切な場合があり、無批判にそれを受け入れるべきではないことを啓発するためのスライドを作成する。
研究方法
病院薬剤師をモニターとする広告監視では、平成27年度のメンバーに引き続きモニターを依頼した。モニターには昨年度同様、随時事例を報告するよう依頼した。月1回程度打ち合わせを持ち、生じた課題等について情報交換を行った。
薬局薬剤師をモニターとする広告監視では、千葉県薬剤師会の協力を得て6人の保険薬剤師にモニターを依頼した。モニターにはこれまでの経緯及び研究の趣旨を説明したうえで、随時事例を報告するよう依頼した。月1回程度打ち合わせを持ち、生じた課題等について情報交換を行った。
MR活動の実態について、インターネット調査会社が保有するモニターの中から、東京、神奈川、千葉、埼玉在住の経験20年以上の医師70人及び病院薬剤師31人の回答を収集した。
医療関係者への啓発用スライドでは、初めに注意すべき点を示し、次に事例、最後に問題点の解説という構成をとった。スライドの事例は、広告監視モニター制度のパイロットスタディで報告された事例を参考とした。日本大学薬学部薬事管理学研究室の卒業研究生が、MR、薬剤師、医師などに扮した静止画とし、音声を加えた。
結果と考察
病院薬剤師をモニターとする広告監視では、約4か月の間に13製品について14件の事例が報告された。事例の内容では、プロモーション用資材に関するものが7件と多くみられた。プロモーション用資材については、製薬各社で社内審査体制の強化を図っていたはずであるが、依然としてこのような事例がみられたことは、一層の努力が求められよう。また、事例の中には製薬協会員会社以外の会社によるものもあったことから、このような体制づくりを製薬協内だけでなく、業界全体に広げていく必要があろう。
薬局薬剤師をモニターとする広告監視では、約4か月の間に、7件の報告があり、いずれもMRの説明の事例であった。薬局薬剤師に製薬企業から提供される情報を評価するという経験が乏しい印象を受けたが、検討会を重ねるにつれて製薬企業から提供される情報に対する見方も変わってきたように感じた。医療関係者に対する啓発活動の必要性を再確認した。
医師、病院薬剤師へのアンケート調査では、自社の製品に都合のよい情報のみが提供された経験がある者が75.2%、有効性について実際よりも優れているかのような説明を受けた経験がある者が57.4%、社外秘等の資料による説明を受けた経験がある者が68.3%など、クローズドの環境下で不適切なプロモーションが行われている実態が示された。
経験の少ない医療関係者や学生のように処方選択に大きな力を持っていないうちから、製薬企業の提供する情報に不適切な場合があり、無批判にそれを受け入れるべきではないことを認識した上で情報を受け取っていくことを身につけた医療関係者を増やしていくことが、遠回りのようでも有効なのではないかと思われ、これらをターゲットとしたビデオを作成することとした。病院のDI室でMRが薬剤師に「都合のよいデータばかり見せる」事例や開業医の診察室でMRが医師に「適応外使用を推奨する」事例など6つのシナリオを用意した。当面は、広告監視モニター制度と連動させて啓発活動を広めていくことが有効なのではないかと考える。
結論
広告監視モニター制度が今年度から厚生労働省の事業として開始され、昨年度の本研究により得られた知見がそこに活かされている。今年度は病院薬剤師に加えて、薬局薬剤師による広告監視モニター制度のパイロットスタディを実施した。医療現場では製薬企業から提供される情報を評価するという姿勢はあまりないように思え、医療関係者あるいは医学生・薬学生に対する啓発活動が必要だと思われた。
製薬企業の提供する情報に不適切な場合があり、無批判にそれを受け入れるべきでないことを啓発するスライドを作成した。今後啓発活動を広めていくためには、当面は、広告監視モニター制度と連動させていくことが有効なのではないかと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201623011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,303,006円
(2)補助金確定額
1,303,006円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 30,373円
人件費・謝金 1,111,196円
旅費 93,208円
その他 68,229円
間接経費 0円
合計 1,303,006円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-22
更新日
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