文献情報
文献番号
201623004A
報告書区分
総括
研究課題名
GMP,QMS,GTP及び医薬品添加剤のガイドラインの国際整合化に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 信豪(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 品質管理部)
研究分担者(所属機関)
- 檜山行雄(国立医薬品食品衛生研究所)
- 坂本知昭(国立医薬品食品衛生研究所)
- 木嶋敬二(日本医薬品添加剤協会)
- 宮本裕一(埼玉医科大学)
- 木村和子(金沢大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品、医療機器、再生医療等製品(及び特定細胞加工物)、医薬品添加剤及び医薬品の流通規制の5つの分野に関するガイドライン等について、国際的な状況を調査し、国内の各ガイドライン等に取り込むことで、製造者、流通関係者やそれぞれの当局調査員等の理解、浸透を促し、最終的に高品質の各製品を流通させることを目的とする。
研究方法
品質リスクマネジメント及び医薬品品質システム:日本製薬団体連合会の品質委員会の協力を得て作成した業界向けアンケートを日薬連経由で実施し、その結果を取りまとめ、問題点を分析した。その結果、系統的な管理モデルや関連文書の参考事例の作成を行った。 PIC/S Annex1改訂作業への参加:現行のAnnex1を見直し、改訂事項として特に重要と考えられる項目について抽出し、各項目について分科会を設置し、現行のAnnex1と製造管理及び品質管理の実態について分析した。 GMP省令改正:最新の国際標準を目指すとともに、昨今の不正問題や製造販売承認書と製造実態の相違の防止等を踏まえた改正案を策定し、医薬品製造所における品質保証体制の充実に資することを目的とし、平成28年度より検討を開始した。さらにサイトマスターファイルの導入を目指し、事例作成に着手した。 改正QMS省令施行後のQMS実地調査における指摘事項の収集と分析:指摘事例を収集し、省令の条文ごとに整理した。等 再生医療等製品の製造に関するベリフィケーション:平成27年7月28日付のQ&A(その2)の運用理解のために新たなQ&Aを作成した。 医薬品添加剤:「医薬品添加剤GMP自主基準(案)」及び「関連質疑応答集(案)」の最終化を行った。 医薬品の流通基準:PIC/S GDPガイドライン翻訳、EU地域での運用に関するヒアリング等を実施し、日本版GDPガイドライン素案作成を行った。
結果と考察
GMP分野:「品質リスクマネジメント」及び「医薬品品質システム」の実施についての理解を促す管理モデル概念図を作成した。さらに関連手順書の事例やリスクアセスメントシートを作成した。PIC/S Annex1の改訂作業については、日本の意見を取りまとめ、PIC/S側に提示し、PIC/S内で最終化作業が行われている。GMP省令改正は、グローバル基準となったICH Q10の考えは、経営者の責務や医薬品品質システムの導入といった、最近の不正問題や承認書との相違の改善するための間接的な方策となり得ると考えている。さらに関係者との議論が必要である。 QMS分野:QMS制度の改正に伴い、新制度下で高度管理医療機器の調査を行うようになった登録認証機関とPMDAのQMS調査での指摘事例を完成させた。これにより、両者の調査スキルの向上と医療機器製造業者への改善を促すことができる。 GCTP分野:再生医療等製品の特性を考慮した製造管理・品質管理のあり方や品質確保については、使用する細胞自体が未知な部分が多いことから課題が多い。「ベリフィケーション」にフォーカスを当て、引き続き、Q&Aの整備を議論している。 医薬品添加剤分野:自主基準及びそれを補足するQ&A案を作成完了した。今後はこれらを広く周知することで、医薬品添加剤の適切な製造・品質管理業務を遂行する環境を整えたい。 医薬品の流通基準分野:医薬品の流通段階の規制については、業界自主基準はあったものの、厚労省としての明確な基準はなかった。そのため、PIC/Sガイドラインを参考にしつつ日本版GDPガイドライン素案が完成したことは意義が大きい。最近の国内の偽造薬流通問題を勘案すると本ガイドラインの更なる充実が望まれるところであり、規制としての位置づけも早急に検討しなければならないと考える。
結論
医薬品、医療機器、再生医療等製品、医薬品添加剤の製造は、いずれも世界各国で行われており、それぞれグローバルな製造管理及び品質管理の基準や流通段階の品質確保の基準も作成されている。これらの基準の作成や改訂作業は、技術的な進歩と並行して絶えず行われている。我が国の基準においても最新のグローバル基準を取り込むことはもちろんのこと、逆に我が国から諸外国へ基準案を提案しグローバル基準作成に参画することも国際貢献という意味でも必要である。このような研究活動を継続的に実施することは、流通するそれぞれの製品の品質保証や品質確保に直結し、最終的に使用者の安心、安全を高めることができる。これは行政の大切な役割である。それぞれの製造者は様々な組織体であり十分なリソースが確保されている場合もあれば、そうで無い場合もある。本研究ではなるべく中小の企業にもグローバル基準が浸透するよう考慮し、事例等の策定に取り組んでいきたいと考える。このように業界全体の底上げを進めると共に、間接的に国内製品の海外輸出にも貢献できることを期待する。
公開日・更新日
公開日
2017-06-12
更新日
-