アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201623002A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 梶原 武久(神戸大学大学院 経営学研究科)
  • 伊藤 浩和(一般社団法人 日本血液製剤機構)
  • 野崎 慎仁郎(長崎大学国際連携研究戦略本部)
  • 鶴田 達彦(一般財団法人 化学及血清療法研究所・分画事業部門事業推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度の普及を通じてアジア諸国への国際貢献を行う方策について、調査研究を行うことが目的である。具体的に協力できる分野やシステム、技術の選択と同定を行い提示する。併せて、わが国の血漿分画製剤事業の国際的な位置づけや特徴、課題、今後の方向性などを同定していく。
研究方法
IMFのWorld Economic Outlook October 2016、世界銀行Data base、THE PLASMA FRACTIONS MARKET IN ASIA AND PACIFIC 2009、BioPlasma Asia2016および調査会社からの購入資料などの公表資料などを用いて分析した。
血漿分画製剤事業に関するBio Plasma World Asia2016 やIPFA International Plasma Fractionation Association)の会議に出席して海外の情報を入手して分析した。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の承認を得ている。
結果と考察
血漿分画製剤の消費量を示す1人あたりの消費金額と1人あたりの名目GDPとの間には強い相関性が認められた。
将来的にはアルブミン製剤と血漿由来の血液凝固第Ⅷ因子製剤の使用量は増加するものと思われる。特にアルブミン製剤の消費が増えるものと思われる。しかし、IVIG製剤は高価なことから、ほとんどのアジア諸国でIVIG製剤の消費が爆発的に増える事態は、所得の伸びを考慮すると考えにくい。2万5,000US$を越えると血液凝固第Ⅷ因子製剤は、血漿由来より遺伝子組み換え製剤を使用するようになる。
 経済発展の状況や人口学的に見た血漿分画製剤製造体制の確立について、わが国が協力できる国は上記の国々であろう。とりわけ、日本から距離が近くて未だ分画製剤の製造体制を独自に構築していないフィリピン、ベトナムが重要であるとの結論を得た。国内事業者の海外事業は、成長する海外市場を視野に入れることによって、技術水準を維持・向上するための設備や研究開発に対する投資の捻出や優秀な若手人材の確保を可能とするものであり、一考に値すると考えられる。受託分画と現地分画施設への技術支援やコンサルティングを柔軟に組み合わせながら実施することが、他国の分画事業者との差別化において有効である。また、国内事業者がアジア諸国を対象に血漿分画製剤事業を行うにあたっては、コンソーシアムを設立する必要がある。
フランスの分画事業者であるLFBが、マレーシアと技術協力による工場建設に向けた契約締結に至った。しかしながら、昨年の同会議において、LFBのアジア戦略担当者が、この契約の頓挫とアジア戦略自体の見直しを表明した。マレーシア以外にも、自国で工場建設の意思を示した国が複数あるものの、具体的に工場を建設した国はタイのみであり、その他の国では、血漿分画用に供与出来る血漿の品質及び量の面や、先進国に比して十分に育成されていない医薬品市場・血漿分画市場における経済性の面で実行に移せずにいる。
WHO世界保健機関では、2020年までに全ての国が100%献血を実施し、原料血液を確保することを求めているが、開発途上国を中心に未達成の国が多い。安全かつ安定した献血ドナーをどのように確保していくのかは、それぞれの国にとって極めて重要な問題である。
今後、製造コストや原料血漿価格の削減、企業体質の改善、国際販売力の強化、規制緩和などについて、ドイツの効率性とコスト意識に立脚した血液事業を参考にすることで、アジア諸国との血液製剤製造受委託の道もより明るくなり将来性が開けることが期待される。
結論
経済発展の状況や人口学的に見た血漿分画製剤製造体制の確立について、わが国が協力できる国は限られる。とりわけ、日本から距離が近くて未だ分画製剤の製造体制を独自に構築していないフィリピン、ベトナムが重要である。
本研究において、わが国がアジア諸国に対してこの分野でできる貢献策は、アジア諸国の経済発展の度合いや医療提供体制の将来像を良く検討したうえで血漿分画製剤の製造に資するリカバリー(回収)血漿が調製できるように技術支援を行うことや収集した血漿の有効利用、受委託体制の確立、人材開発や献血から検査に始まる血液事業の基盤整備のための国際協力が重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201623002B
報告書区分
総合
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 梶原 武久(神戸大学大学院 経営学研究科)
  • 松田 利夫(北里大学薬学部 社会薬学部門)
  • 佐川 公矯(福岡県赤十字血液センター )
  • 伊藤 浩和(一般社団法人 日本血液製剤機構)
  • 小林 英哲(一般財団法人 化学及血清療法研究所 品質保証部)
  • 野崎 慎仁郎(長崎大学国際連携研究戦略本部)
  • 鶴田 達彦(一般財団法人 化学及血清療法研究所・分画事業部門事業推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度の普及を通じてアジア諸国への貢献を行う方策についての調査研究を行う。そして協力できる事業や技術の選択と同定を行い、技術移転に伴う問題点を提示することにより国際貢献を図っていくことが研究目的である。
研究方法
IMF、世界銀行Data base、THE PLASMA FRACTIONS MARKET IN ASIA AND PACIFIC 2009、BioPlasma Asia2016および調査会社からの購入資料などの公表資料などを用いて分析した。血漿分画製剤事業に関するBio Plasma World Asia2016 やIPFA International Plasma Fractionation Association)の会議に出席して海外の情報を入手して分析した。また、献血者および一般国民、そして医療機関に対するアンケート調査を実施した。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の承認を得ている。
結果と考察
結果および考察
ラオスのような小国での血漿分画製剤を製造することは経済的にも無駄であり、日本が製造委託を受けるなど支援すべき対象となり得ると考える。医療施設の規模別にアルブミン製剤の採用状況を解析すると、大規模施設では国産品の採用が多く、また国産品と輸入品の両方を採用している施設が多かった。血漿分画製剤事業は成長性と収益性がともに低い成熟事業であると見なされていることから、国際化に際しては価値提案、利益公式、バリューチェーンの3要素からなるビジネスモデルを検討して事業展開を行なうことが不可欠である。国内事業者にとって海外事業は貴重な成長の機会として技術水準の維持・向上を目的とした設備投資や研究開発の原資の捻出や優秀な若手人材の確保による技術継承を可能とするものであり、血漿分画事業の強化に繋がることがわかった。悪意の献血防止のために台湾、シンガポール、アメリカ合衆国、オーストラリアで悪意の献血者を対象とした立法措置が講じられていることがわかった。国民の血液事業の認識の低さが本調査により明らかとなった。今後、一層の血液事業に関する国民の認識を高め、理解を得るような普及・啓発活動を強化していく必要がある。同じく献血者の意識については、調査対象が複数回献血者群であるにもかかわらず、輸血用血液製剤および血漿分画製剤に関する知識は乏しいことが判明した。血液事業および血漿分画製剤事業に関する必要十分な情報や知識の普及・啓発が必要である。血漿分画製剤の事業構造に関して国外と国内の分画事業者に共通する部分として、一般的な製薬事業者と比較して原材料費の占める割合が高く、その中でも特に原料血漿価格の占める割合が高いことが挙げられる。原料血漿価格の差が直接原価に影響してくることになる。血漿分画製剤の消費量を示す1人あたりの消費金額と1人あたりの名目GDPとの間には強い相関性が認められた。今後、製造コストや原料血漿価格の削減、企業体質の改善、国際販売力の強化、規制緩和などについて、ドイツの効率性とコスト意識に立脚した血液事業を参考にすることで、アジア諸国との血液製剤製造受委託の道もより明るくなり将来性が開けることが期待される。
結論
世界的な企業統合が進み国内市場が縮小していくと予想される中では、こうした事業環境の相違を明らかにして事業の国際展開を考えていかねばならない。国民や献血者の血液製剤及び血液事業に関する考えが把握できた。これらについての認知度は概して低いが、アジア諸国に対する国際貢献のために血漿分画製剤の輸出や技術協力については、肯定的な意見が多かった。また、国内における製造コストの問題、特に原料血漿の確保に要する費用がかかることなど、血漿分画事業の構造が明らかとなった。これらの課題を克服して、海外事業者とも伍して行ける事業モデルを構築して、アジア諸国に対する貢献を進めていく必要がある。経済発展の状況や人口学的に見た血漿分画製剤製造体制の確立について、わが国が協力できる国は上記の国々であろう。とりわけ、日本から距離が近くて未だ分画製剤の製造体制を独自に構築していないフィリピン、ベトナムが重要であるとの結論を得た。わが国がアジア諸国に対してこの分野でできる貢献策は、アジア諸国の経済発展の度合いや医療提供体制の将来像を良く検討したうえで血漿分画製剤の製造に資するリカバリー(回収)血漿が調製できるように技術支援を行うことや収集した血漿の有効利用、受委託体制の確立、人材開発や献血から検査に始まる血液事業の基盤整備のための国際協力が重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
諸外国の血漿分画製剤の最新の、しかも効率的な製造方法に関する情報が入手でき、わが国の製造事業体においてもその成果が活用できる。また、国内事業者の製造体制の強化や海外戦略の展開を考える際の基礎的資料としても位置づけられる。
臨床的観点からの成果
諸外国の血漿分画製剤の製造や臨床使用等に関する情報を活用することにより、医療従事者や患者の製剤選択の幅を広げ、輸血医療を中心とする医療の質の向上にも寄与する。加えて、適切な製剤選択や適切に使用することにより、血漿分画製剤の国内自給率の向上や医療費削減にも繋がる。
ガイドライン等の開発
血漿分画製剤の使用に関するガイドラインの作成や血漿分画製剤の製造に関わる生物学的製剤基準の改定等に役立つものと考える。さらに、厚生労働大臣が策定する血液製剤の需給計画の策定にも役立つ。
その他行政的観点からの成果
血漿分画製剤の製造等においてわが国がこれまで蓄積してきた知見や経験を活かし、先端的な科学技術を活用した技術協力を強化することは、保健分野において諸外国に貢献し、日本の存在感を高めることならびに血液製剤の安全性確保や安定供給、医療の進歩など当該国の国民福祉の向上に大きく寄与する。同時に、わが国の血漿分画製剤製造体制の強化、献血血液の安全性向上にも寄与する。また、昨今の新型コロナウイルス対策にも寄与する。
その他のインパクト
血液製剤の輸出を原則禁じている輸出貿易管理令の見直しにも繋がる。そして、国民が血液事業の現状を一層知ることを促進し、また、血漿分画製剤の輸出の是非について議論する際の基礎資料となる。平成30年11月19日に大阪市で行なわれた第32回日本エイズ学会学術集会・総会で「HIV感染の歴史から学ぶ世界の血液製剤供給 - アジア諸国における血液製剤事業 - 」というテーマで発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
献血血液の使用/不使用についてのALTの基準見直しに関する研究論文
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
危機管理の観点からの血漿分画製剤の安定的確保および供給体制の構築について.アジア諸国の血漿分画製剤需要の将来予測とわが国の協力の在り方に関する研究
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
内閣府が行っている規制緩和対象項目の中に「輸出貿易管理令」があり、現在その是非が敢闘されている。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Daisuke Ikeda, Makiko Sugawa and Kazuo Kawahara.
Study on Evaluation of alanine Aminotransferase(ALT) as Surrogate Marker in Hepatitis Virus Test.
Journal of Medical and Dental Sciences. , 63 , 45-52  (2016)
10.11480/jmds.630302
原著論文2
Woonkwan Hyun, Kazuo Kawahara, Makiko Sugawa et al.
The Possibility of Increasing the Current Maximum Volume of Platelet Apheresis Donation
Journal of Medical and Dental Sciences. , 65 (2) , 89-98  (2018)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
2022-06-09

収支報告書

文献番号
201623002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 404,909円
人件費・謝金 3,649,119円
旅費 844,705円
その他 2,101,268円
間接経費 0円
合計 7,000,001円

備考

備考
1円の差額は利子が発生したため

公開日・更新日

公開日
2017-11-10
更新日
-