アジア諸国の献血制度の構築と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201623001A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国の献血制度の構築と普及に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の1970年代及び80年代の献血制度の構築と普及に関する経験とノウハウ、また、カンボジアモデルを完成させ、周辺国に両方の経験を伝達していく。以て、開発途上国における献血制度の普及を促進するという国際貢献を図っていくことが本研究の目的である。
本班では、アジアを中心とする開発途上国での献血思想の普及確立がひとつの活動目標であり、昨年度アジアを中心として7カ国が参加する献血活動に関する国際会議を開催した。この会議に於いて各国が様々な問題を抱えつつ献血活動の活性化に取り組んでいることが明らかとなったが、本年度もさらにこうした理解を深めるため、第三回の国際会議を開催し、リピータードナー確保、安全な血液製剤の確保のための方策を中心テーマとし、それぞれの取り組みと意見交換を行った。
研究方法
アジアを中心にマレーシア、ラオス、フィリピン、ベトナム、カンボジア、タイ、日本の7カ国およびWHOが参加した献血活動に関する第三回目の国際会議を開催し今年度はリピータードナーの確保、献血の安全性確保の問題を中心テーマとして各国の現状、それぞれの問題に対する取り組みについての発表と議論を行った。この会議開催、並びに今後の研究においては、当該国政府及び献血担当部門、WHOとも連携して実施した。
結果と考察
2016年11月23日、24日、マレーシアのクアラルンプールにおいて献血活動に関する第二回の国際会議を開催した(THE 3ND ASIAN MEETING FOR SELF-SUFFICIENCY OF BLOOD AND BLOOD PRODUCTS BASED ON VOLUNTARY NON-REMUNERATED DONATION)。それぞれの献血活動担当者が参加し発表、意見交換を行った。以下、アジア各国からの報告について記載する。
(1) カンボジア
人口1500万人のカンボジアにおいて毎日必要とされる血液製剤は200単位程度と報告された。これは本邦と比較すると極めて少量である。国立輸血センターと地域のセンター(21カ所)において献血が実施され、VNRBDの占める割合は31%程度でで、それ以外は患者家族が対応する「family replacement donor」による献血である。献血ドナーが国民の0.33%であり、WHOが示す目標には達していない。2013年から2017年にかけて献血推進に関する国家戦略プランが実施されており、当班の目的の一つであるカンボジアにおける献血普及のAction Planが実行されていた。
(2) マレーシア
 ほぼ100%VNRBDを達成しているが、血液製剤の必要量は年に6%程度増加しており、献血ドナーの増加率3%程度と乖離しているのが今後の問題点とされた。「教育とコミュニケーション」をテーマとして複数回献血ドナーを確保する方針をとっている。製剤の安全性問題ではデング、チクングニア(chikungunya)、MERS、ジカ熱などの感染症対策が最近の問題である。
(3) ラオス
 2015年にはVNRBD、replacement donorによって36,635名から献血がなされていた。これは国民の0.86%にあたり、2011年の0.45%から増加している。学生が献血者の56%を占め本邦の献血者年齢分布とは大きく異なっていた。医療状況の進歩や人口増加に伴う血液製剤の需要が増大しており、今後国民の1%がドナーとなることを一つの目標にし、2016年からの10年計画が進行中である。
(4) フィリピン
 多数の島々からなる国家のため、血液バンクは一般病院にも設置される場合があり、全国で607カ所であった。地理的問題への様々な対応が行われていた。2015年には全体で38万単位を超える血液製剤が使用されていた。
(5) ベトナム
ベトナムは9200万人の人口に対して、国立センター1カ所、4カ所の広域血液センター、10カ所の地域血液センター、60カ所の病院血液センター、1カ所の赤十字センターによって献血活動を行っている。2015年には96.9%がVNRBDで100%達成まで近づいている。今後は複数回ドナーの確保が必要である。
(6) タイ
 人口6570万人で、国立血液センター(1カ所)、地域血液センター(12)、160のサービスブランチで献血、血液製剤を取り扱っている。ドナー情報の中央管理、若者を中心標的としたキャンペーンなどで、国民の3.5%がドナーとなっている。しかし、地域病院からの血液製剤の要求に対して完全には対応できておらず、今後の問題である。
結論
こうした会議を定期的に開催し、VNRBD達成とその維持に向けた地道な活動の現状、新たな取り組みなど、アジア諸国で国の枠を超えての情報交換が今後も必要である

公開日・更新日

公開日
2017-04-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201623001B
報告書区分
総合
研究課題名
アジア諸国の献血制度の構築と普及に関する研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科))
研究分担者(所属機関)
  • 野崎 慎仁郎(国立大学法人長崎大学 国際連携研究戦略本部・国際関係学)
  • 福吉 潤(株式会社キャンサースキャン)
  • 瀧川 正弘(東京都赤十字血液センター・献血推進)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHO世界保健機関では、2020年までに全ての国が100%献血を実施し、原料血液を確保することを求めているが、開発途上国を中心に未達成の国が多い。本研究の前身として、平成23年度から3年間、カンボジアにおける献血活動の支援を行い、若者の代表である大学生を中心とした献血活動の推進に一定の成果を上げてきた。そこでカンボジア以外の国での献血活動を推進するため、まず、アジア諸国の献血活動に関する意見交換を重ねていくことが重要であり、そこでの議論を基にして、本研究班の献血活動支援を広げていくことが適当と考えられた。一層のアジアにおける献血活動の活性化を目指して3年間の研究を実施した。
研究方法
本邦での1970年代に至る100%献血実施の実績、並びにカンボジアでの学生活動試験の経験をアジア諸国で共有すると共に、献血に関するそれぞれの国の現状、並びに問題点を国も枠を超えて共有し、解決策を共に考えていくために、2014年度より、カンボジア、ベトナム、マレーシアにおいてアジア諸国の献血担当者による国際会議を計3回開催した。
結果と考察
第一回目は各国の現状を共有すると共に、カンボジアでの学生献血運動の高まりの報告を目標とした。第二回目はリピータードナーの確保を中心に議論すること、第三回目は製剤の安全性確保、特に感染症に対する取り組みを一つのテーマとして議論することを目標とした。
第一回目の会議はプノンペン(カンボジア)で実施し、マレーシア、ラオス、フィリピン、ベトナム、カンボジア、オーストラリア、日本の7カ国が参加した。第二回目の会議はハノイ(ベトナム)の国立血液学・輸血研究所にて開催し、マレーシア、ラオス、フィリピン、ベトナム、カンボジア、シンガポール、ドイツ、日本の8カ国が参加した。ドイツはラオスの献血活動をサポートしている。第三回目はクアラルンプール(マレーシア)で開催し、マレーシア、ラオス、フィリピン、ベトナム、カンボジア、タイ、日本の7カ国が参加した。これらの会議においてカンボジアでの学生による一斉献血活動を紹介すると共に、リピータードナーの確保、ドナーケアの重要性、walk-in donorの問題点、新興感染症に対する対応など安全な献血を確保するための方策、を中心テーマとしてとして各国の献血状況の報告と議論を実施した。それぞれの問題に対して各国の対応は様々であり、国の状況などもあって問題への対応も多様であることが明らかになった。また、三回の国際会議を通じて、アジアでの献血活動推進のために各国の献血担当者間でネットワークを構築することが重要であると考えられた。
結論
こうした献血担当者による会議を定期的に開催し、VNRBD達成とその維持に向けた地道な活動の現状、新たな取り組みなど、アジア諸国で国の枠を超えての情報交換は、各国の献血活動推進に有用で有り、こうしたネットワークの維持は今後も必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623001C

収支報告書

文献番号
201623001Z