野生鳥獣保有微生物種の網羅的解析による喫食リスク低減化に関する研究

文献情報

文献番号
201622039A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣保有微生物種の網羅的解析による喫食リスク低減化に関する研究
課題番号
H28-食品-若手-012
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福本 晋也(国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年の野生鳥獣被害と捕獲必要性の増加を受け、野生鳥獣肉の食利用への期待が高まっている。しかしながら、その安全性の担保については理想的状態とは言えず、公衆衛生上のリスク要因であると懸念される。本研究課題は、微生物学的リスク要因を明確にすることで、野生鳥獣肉の食品衛生管理向上に資することを目的とするものである。そこで本研究では、日本で最も増加が問題となっている野生鳥獣であるシカを対象に、その主要生息地域である北海道東部地方を調査モデル地域として研究を実施する。初年度では、エゾシカサンプルの収集・微生物叢について次世代シーケンサーを用いた解析を実施しデータの集積を行う。次年度では、データ解析により食品衛生リスク要因病原微生物種の同定、新興感染症発生要因候補微生物種候補の同定、微生物種毎に疫学情報の解析を実施する。以上の研究の実施により、基礎データ集積によりリスク要因と施策提言根拠を明確化し、野生鳥獣肉食品衛生行政に資することを目的とする。
研究方法
 研究計画の骨子は主として以下の4点により構成される。平成28年度における(1)エゾシカサンプルの収集、(2)次世代シーケンサーによるデータ集積と、平成29年度に実施予定の、(3)データ解析によるエゾシカ保有微生物種の網羅的同定、(4)同定微生物種毎の疫学調査、である。以上の研究データの統合的解析によりエゾシカが保有する病原体種情報を整理しリスク要因を明らかにし、公衆衛生に資することを目指す。
 平成28年度においては、北海道十勝地方においてエゾシカ由来サンプルの採集を実施した。採集サンプルは、血液を主体として、主たる喫食部位である筋肉・肝臓を対象とした。また糞便の収集も実施した。サンプリングは個体トレーサブルに実施した。得られたサンプル由来核酸をDNA-Seq・RNA-Seq解析に供した。また糞便由来DNAについては16S・18Sメタゲノム解析に供した。また、次世代シーケンサーによるデータ解析に先立ち、一部の食中毒関連病原体について疫学調査を実施した。
結果と考察
 平成28年度に採集したエゾシカサンプルは合計189検体であった。捕獲は研究代表者所属機関が位置する十勝地方を中心として、代表者による捕獲、地元猟友会ハンターおよび食肉処理業の協力により実施した。これらのサンプルについて次世代シーケンサーによる解析に供しデータの取得を終了した。えら得たデータについては平成29年度において解析予定である。外観の肉眼的観察による一次スクリーニングにより異常が確認された肝臓について、切開肝臓直接虫体検出法により、肝蛭の感染の検出を実施した。189個体中17個体から肝蛭虫体が検出された。また95%以上と高率に住肉胞子虫に感染が確認された。TAKARA腸管系病原細菌遺伝子検出キットを用いたリアルタイム法による解析の結果、赤痢菌、サルモネラ菌については現在のところ全個体において陰性を示した。腸管出血性大腸菌については130検体中18検体が明確な陽性のピークを示した。リアルタイムPCR法陽性検体について、VT遺電子のサブタイピングの結果、VT1とVT2の両サブタイプが検出された。腸管出血性大腸菌の陽性個体については、研究代表者所属機関である帯広畜産大学の山崎准教授との共同研究により、菌株の分離実験を実施中である。分離後、抗原型の決定や他の病原性関連遺伝子の解析など、エゾシカにおける腸管出血性大腸菌の特性を解析する予定で有り、エゾシカ肉食利用における衛生管理において有用な知見をもたらすものと期待される。
結論
 平成28年度においては、エゾシカサンプルの収集および次世代シーケンサーでのデータ収集を予定していたが、当初の研究計画を十分に達成できたものと考えられる。また、研究計画に先立って実施した食中毒関連病原体の疫学調査においては、多くの個体が住肉胞子虫・肝蛭を保有しており、従来の情報どおり生食は危険であることが再確認された。高率で腸管出血性大腸菌がリアルタイムPCR法により陽性となった結果は、エゾシカにおける腸管出血性大腸菌汚染の更なる詳細な解析の必要性を示唆するものであった。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 909,967円
人件費・謝金 0円
旅費 345,760円
その他 1,437,273円
間接経費 807,000円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
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