文献情報
文献番号
201622034A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を基盤とした国内外で流行する病原大腸菌のデータベース化と検査態勢の整備に関する研究
課題番号
H27-食品-若手-018
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
井口 純(国立大学法人 宮崎大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
- 勢戸 和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
海外からの食品の輸入や旅行者の往来が頻繁な昨今において、国際的な流行状況にも注意を払いながら、我が国における病原大腸菌の侵入や汚染実態を監視し、食の安全を確保する必要がある。本研究では、世界で流行する毒素原性大腸菌(ETEC)に注目し、世界流行株と国内分離株の細菌学的または遺伝学的な解析を行い、検査基盤の強化を図るとともに、国際的な流行状況下における国内の動向を把握することを目的とした。
研究方法
国内分離株の解析では、1995年から2015年の間に大阪府立公衆衛生研究所または大阪市立環境科学研究所で、下痢症患者から分離されたETEC 263株のうち、前年度の研究で明らかにした血清型とエンテロトキシン型の結果を基に代表株146株を選抜して用いた。7種類のhousekeeping遺伝子の配列情報を基に系統解析を行い、患者の疫学的情報(旅行歴の有無など)、O血清群、エンテロトキシン型、colonization factor antigen型を踏まえた詳細な比較解析を行った。海外分離株の解析では、世界20カ国で分離された362株のゲノム情報を用いた。さらにETECを標的とした検査法の開発と、家畜・野生動物におけるETEC保菌調査を行った。
結果と考察
世界的に流行するETECの動向と、国内で流行するETECの傾向、そしてそれぞれの表現型や遺伝子型の特徴が明らかとなった。海外分離株のゲノム情報を基に新規10種類のO血清群遺伝子型(Ogタイプ)を見出し、その一つであるOgN5は世界で流行するETECの主要Ogタイプの一つであることを明らかにした。ETECの新たな検査法として、3種類の新規Ogタイプ(OgN5、OgN4、OgSB16)を特異的に判定出来るPCR法を開発した。さらに、国内事例で最優勢であるO159を標的とした免疫磁気ビーズを作製し、その実用性を評価した。以上の成果により、世界的に流行するETECの動向と、国内で流行するETECの傾向、そしてそれぞれの表現型や遺伝子型の特徴が明らかとなった。
結論
国内で分離されたETECの輸入事例株と国内事例株の特徴が明らかとなり、国内事例株の傾向は中国へ旅行した帰国者から分離されるETECの傾向と共通していた。さらに海外で分離されるETECの特徴も明らかとなり、10種類の新規Ogタイプを見出した。ETEC検査法として、主要な3種類のOgタイプを判定出来るPCR法を開発した。以上の成果はETECの検査や監視を強化する上で重要な基盤情報になると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-11-28
更新日
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