食品中の放射性物質濃度の基準値に関する影響と評価手法に関する研究

文献情報

文献番号
201622030A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に関する影響と評価手法に関する研究
課題番号
H27-食品-指定-016
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(量子科学技術研究開発機構 本部放射線緊急時支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 祥文(福島大学環境放射能研究所)
  • 高橋 知之(京都大学原子炉実験所)
  • 青野 辰雄(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所福島再生支援本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年福島第一原子力発電所(FDNPS)事故により食品の摂取による内部被ばくが懸念された。厚生労働省は平成24年4月以降、介入線量レベルを1mSvとして基準値を適用した。この基準値は、放射性セシウム(Cs)濃度について基準値を設定し、その他の核種については、半減期が1年以上であるストロンチウム-90(Sr-90)、ルテニウム-106、プルトニウム-238、プルトニウム-239(Pu-239)、プルトニウム-240(Pu-240)及びプルトニウム-241を評価対象核種として、放射性Csとの濃度比を推定することにより、その線量への寄与を考慮している。内部被ばく線量に対する放射性Cs及びその他の核種の寄与率は、環境モニタリングによる土壌中放射性核種濃度や、これまでの環境移行パラメータによって推定されており、実際に食品中濃度を測定した結果に基づくものではない。本研究では食品中の放射性Cs及びその他の長半減期放射性核種の濃度変化について調査を行い、基準値作成に用いられた濃度比との比較や食品の摂取に起因する内部被ばく線量に対する放射性Csの寄与率の推定から、食品中の放射性Cs濃度の基準値の妥当性の検証および食品中放射性物質の濃度等に関する科学的知見の集約を行うことを目的とした。
研究方法
FDNPS周辺で営農が再開されている浜通り地域の南相馬市から市場流通作物を購入し、また平成29年度から帰還の規制を解除した浪江町で試験栽培された作物を採取し、農作物中の放射性Cs濃度とSr-90濃度を求め、これまでに求めたデータと比較すると共に、全国のモニタリング結果と比較・検証した。また福島県沖合で採取され市場に流通する水産物を購入し、放射性物質の濃度測定を行った。さらに内部被ばく線量に対する放射性Csの寄与率等の推定では、放射性Cs及びSr-90による内部被ばく線量を推定した。食品中放射性物質濃度等に関する知見の評価検討では、諸外国等における食品中の放射性物質の規制値や知見について、基礎的な資料を作成するため、規制値設定の背景や算出方法等について文献調査を行った。
結果と考察
南相馬市内の圃場で栽培され、市場流通していた作物および平成29年度から営農再開を計画している浪江町の試験圃場から採取した作物中の放射性Csは基準値を下回った。市場流通と試験圃場から採取した作物中Sr-90濃度を比較すると、両地域から採取された作物中の濃度も同様な濃度範囲で、福島県を除く全国調査の作物中Sr-90濃度範囲内にあり、検出されたSr-90濃度は大気圏核実験に由来する濃度と同程度であると考えられる。
水産物中のCs-137濃度およびK-40濃度は、アラ部に比べて可食部でわずかに高い傾向を示し、Sr-90およびPu-239+240濃度は検出下限値以下であった。測定した農作物中放射性Cs濃度およびSr-90濃度、および平成27年度の海産物中放射性Cs濃度を用いて、平成28年度における放射性CsおよびSr-90による内部被ばく線量を推定した。Sr-90による内部被ばく線量の推定については、安定カルシウム(Ca) の摂取量を用いる方法で評価を実施した。これらの内部被ばく線量の評価結果と介入線量レベルを比較検討した。平成28年度採取試料の濃度から推定した放射性Csによる、極めて保守的な方法を用いた内部被ばく線量の評価結果は、介入線量レベルである年間1 mSvを大幅に下回っていた。安定カリウム(K)の摂取量を用いる方法で評価した結果は0.001 mSvのオーダーであった。Sr-90による内部被ばく線量の推定は、19才以下の年齢カテゴリーでは0.001mSvのオーダー、成人では0.001mSv以下であった。東欧における食品中の放射性物質の規制等に関する4つの文献について、食品中の放射性物質の基準値と規制値について、算出根拠、設定理由、設定の考え方等と「食品中の放射性物質に関する研究論文」の収集と整理を行った。
結論
採取した作物中放射性Cs濃度は全て基準値を大きく下回った。また、作物中Sr-90濃度も福島県を除く全国調査の範囲内にあり、事故由来による作物中Sr-90濃度の明らかな増加は認められなかった。福島県内の海域で採取され市場に流通する水産物中放射性Cs濃度は食品の基準値より2桁も低い濃度であった。Sr-90及びPu-239+240濃度は検出下限値以下であり、本事故による影響は確認できなかった。これまでの結果をベースにした計算では、事故に起因するSr-90の寄与は極めて小さく、介入線量レベルである年間1 mSvを大幅に下回っており、基準値の算定値は、妥当であったと考えられる。また国際機関や各国の規制値や基準値について、その根拠や計算方法について情報の収集と整理を行い、資料集を作成した。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,800,000円
(2)補助金確定額
19,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,483,664円
人件費・謝金 2,446,171円
旅費 738,807円
その他 7,562,358円
間接経費 4,569,000円
合計 19,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-07-06
更新日
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