食品中の有害物質等の評価に関する研究

文献情報

文献番号
199800584A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の有害物質等の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 合田幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 内山貞夫((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
34,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性及び健全性を確保するために必要な情報は、食品汚染物に関する情報と食品中の天然有害物情報である。食品中の化学物質の継続的なモニタリングとそれらに対する人間の暴露状態即ち日常の経口摂取量の把握とは、化学物質による食品汚染に関するリスクアナリシスの一環として食品衛生行政研究に不可欠な二本柱である。最近特に内分泌攪乱作用を示す環境ホルモンによる食品汚染が大きくクローズアップされていることから、そのような化合物も含んだ本研究の実態調査と暴露量調査は極めて重要な意味を持つ。好酸球増多筋肉痛症(EMS)に関し今後の同様な食中毒発生を未然に防止することを目的に、1998年に公表された研究論文を検索した。アフラトキシンの試験法については、多機能固相カラムとHPLCを利用した方法の有用性を評価した。脳卒中易発性ラットへの投与で大豆油に比べ生存期間が短縮すると報告されている菜種油について、原因物質の可能性があるとされている植物ステロール類の確認と混餌投与ラットの心臓及び血管中濃度を調べた。
研究方法
1.日常食の汚染物摂取量及びモニタリング調査研究:1)FAO/WHO合同食品及び飼料汚染物モニタリング計画に対応して定められた項目について、食品中の含量を調査したデータの全国的な集計処理と保存を行った。更に全国10ヶ所で実施したトータルダイエットスタディーの結果につき我が国のデータを作成した。2)モニタリングデータ収集に際しては誤入力をサーチするチェックプログラムを組み込んだウィンドウズ用Excelによるデータ収集を実施した。3)トータルダイエットの3試料を保存し後時代に備えた。2.必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究:主に1998年に発表されたトリプトファン、EMS及び有毒油症(TOS、toxic oil syndrome)に関する論文を、データベースとしてMEDLINE、CA、SCISEARCHを用いて検索した。3.アフラトキシン告示試験法の改良に関する研究:多機能固相抽出カラムで精製し、分析に蛍光検出HPLCを利用した方法を検討し、ナッツ類等への応用性を調べた。4.菜種油湯中のステロール類の検索と評価に関する研究:菜種油に含まれる植物ステロールをGC/MSで帰属確認しSIM法で定量した。菜種油投与ラットの心臓及び血管中の蓄積植物ステロール並びに生体機能の変化を調べた。
結果と考察
1.国内及び輸入食品汚染物のモニタリング件数は今年度約19万件が追加され1998年初頭現在234万件に上った。これらのデータから食品汚染物の検出レベルの経年変化、全国平均値及び汚染食品の種類、汚染レベル等が明らかとなった。また重金属、農薬等の1日摂取量を明らかにした。なお各食品群に関し定量下限値の1/2を用いても、汚染物の摂取量はそのADIを超えることはなかった。2.検索より得られた14の文献を化学分析、生体への影響、動物モデルに分けて解説した。店頭販売されている5-OH-Trp製品及びメラトニン製品からEMS関連トリプトファン製品中不純物と類似の成分が同定されている。3.多機能固相抽出カラムとHPLCを利用した方法では、毒性の高い溶媒を使用せずに現行の通知で分析が規定されたナッツ類、米、ソバ等の分析が可能であった。また多くの香辛料ではアフィニティーカラムを組み合わせることで分析が可能となった。4.26週間混餌投与したラット(SHR)の心臓及び大動脈血管中には、大豆油投与に比べ2~3倍量の植物ステロールが蓄積されていた。菜種油及びコレステロール0.6%添加菜種油を投与したSHR-SPラットでは血圧上昇、アラキドン酸投与によるTXA2産生の増大傾向、
総及びウアバイン感受性Na+-K+ATPase活性の高値、摘出大動脈収縮反応の有機名増強が観察された。
結論
1.全国約63自治研究機関との緊密な協力により行われているモニタリング調査、及び10機関との協力により行われているトータルダイエットスタディーによる汚染物摂取量調査結果から、我が国における食品汚染のバックグランドレベル及び摂取量が明らかとなり、我が国の食生活の安全性を検証できる。2.EMS発症と関連することが指摘され、不明であった二種不純物の構造が判明した。市販ロリプトファン関連商品(5-OH-Trp)中にPeak Xと命名された不純物が同定され、EMS様症状の発生が危惧されている。これら不純物を摂取したヒトの免疫、代謝系影響されEMSの発症に至る考えが大勢を占めるが、現在でも特定の不純物が原因であるとした結論は得られていない。3.多機能固相抽出カラムとHPLCを利用したアフラトキシンの分析方法は簡便で、高毒性溶媒を利用せず、従来法とほぼ同等の精度と正確さで分析可能である。今後確認分析法としての多次元検出器及びTLCの利用等細部の検討が必要である。4.菜種油投与による血圧上昇と細胞膜の脆弱化との関連性は低いが、含有植物ステロールが膜の構成を妨害することで膜の機能に影響を与える可能性が示唆された。

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