効果的なリスクコミュニケーション手法の検討とツールの開発

文献情報

文献番号
201622025A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的なリスクコミュニケーション手法の検討とツールの開発
課題番号
H28-食品-一般-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 淳吉(慶應義塾大学 文学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹村 和久(早稲田大学 文学学術院)
  • 織 朱實(上智大学 地球環境学研究科)
  • 高木 彩(千葉工業大学 社会システム学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品のリスクコミュニケーションの対象者にあわせた具体的なコミュニケーション手法を検討する。第1に,対話集会や説明会のような対面場面での手法を検討する。第2に,個人で意思決定する場合に有効なコミュニケーション手法や活用可能なツールの開発を行う。それぞれの場面で適切な手法について検討した上で,その効果を測定する。実施可能なリスクコミュニケーション手法を提案する。
研究方法
食品分野に限らず,リスクコミュニケーションの事例について,広く資料を収集する。実際に行われているリスクコミュニケーションの事例を調査し,その問題点も明らかにする。特に,対面での対話の手法について,活用可能な技法が蓄積されているファシリテーション研究の成果も調査する。
以上をもとに,過去の効果的な事例,および社会心理学をベースとした理論的アプローチにより,対面場面での効果的なリスクコミュニケーション手法の手順を開発する。主として,自体に能動的にかかわることで事態にコミットメントし,熟慮にもとづく理解の促進と態度変容が起こるような設計を行う。さらに効果については,理解の促進だけではなく,実際にリスク削減の行動変容につながって行くのかどうかについても心理実験の手法で検討を行う。
結果と考察
対話集会や説明会のような対面場面を想定したリスク情報の伝達と質疑という従来の方法に対し,意見集約や政策決定における市民参加のワークショップ型会議で実際に活用されている手法を調査した上で,効果的な手法としてリスクコミュニケーションのアクティブ手法を開発した。アクティブ手法により,食品添加物への否定的イメージは事前から事後にかけて減少する一方で,肯定的イメージは増加しており,食品添加物の正しい理解が促進していたといえる。全体的に実験参加者が手法実施により食品の安全性に対する関心と食品添加物への正しい理解が高まっていた。政策に関する議論への参加意欲が高い人では関心度と理解度がより高まる傾向があった。また,行政への信頼感が低い人では,食品添加物への理解度がやや低まる傾向があった。特に食品添加物が食品の危険性を取り除く役割についての理解度がやや低まる可能性が示された。行動変容に関してもリスクコミュニケーションのアクティブ手法に効果があったことが確かめられた。
以上のリスクコミュニケーションのアクティブ手法は社会心理学の知見にもとづき,様々な実践から効果的な方法を導き出したものである。この基本的な手法は食品の安全確保だけではなく,他分野への転用も可能なものであり,そのことを動画の中で強調した。
今後は,アクティブ手法で取り上げた個々の要素をより活用できるようなツールの作成を進め,動画に限らずわかりやすく伝えるためのツール作成を行っていくことが検討された。
結論
これまでのリスクコミュニケーションの実践の調査と態度・行動変容理論を活用した手法を整理し,主体的に考える思考リスト法と,集団で意見をまとめる集団決定法を応用したリスクコミュニケーションのアクティブ手法を開発した。アクティブ手法の効果を確認するため,食品添加物の正しい理解を目的としたリスクコミュニケーションの実践を大学生および一般の人々を対象として行った。その結果,アクティブ手法は食品添加物の否定的反応を低め,肯定的反応を高める効果をもっていた。実践の事前事後の質問紙調査からはアクティブ手法により食品の安全性に対する関心と食品添加物への正しい理解が高まっていた。また,行動変容を検討するために開発したセカンドプライスオークションへの参加からもアクティブ手法を用いたリスクコミュニケーションが効果をもつことが確認された。このような理解と行動変容に効果をもつアクティブ手法を中心とした効果的なリスクコミュニケーションが実務に活用されるよう普及啓発を目的とした短編動画を作成し,インターネット上に公開して実務者をはじめ国民が閲覧できるようにした。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,342,585円
人件費・謝金 615,115円
旅費 0円
その他 735,300円
間接経費 807,000円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-26
更新日
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