文献情報
文献番号
201622020A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の分析法に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究分担者(所属機関)
- 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
- 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
- 菊地 博之(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品中に残留する農薬等の分析法開発に資する以下の5課題について実施する。28年度は課題4を除く4課題について実施した。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査
欧米等の残留農薬等の分析法開発方針、開発方法及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。28年度は農薬の残留分析法について調査しまとめた。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
アミノグリコシド系抗生物質は極めて極性が高いため、効率的に精確な分析値を得ることが困難なことから、当該物質の簡易・迅速、高感度・高精度な分析法の開発を目的として、28年度はLC-MS/MSによる測定条件について検討した。
課題3:試料調製方法の検討(28年度のみ実施)
分析に用いる試料量を減らせば分析時間の短縮が期待できるが、精確な分析値を得るのに必要な試料量は明らかとなっていないため、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにすることを目的とした。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施予定)
偽陰性・偽陽性の少ないスクリーニング分析法とするための要件を明らかにし(29年度)、分析法の性能評価方法及び性能基準を確立するとともにスクリーニング分析法のガイドライン(案)を作成(30年度)する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
抗生物質の残留分析はバイオアッセイ法からLC-MS/MS法への移行が進んでいるが、コストなどの理由からバイオアッセイ法が現在も汎用されている。そこで、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案することを目的として、28年度は欧米等のバイオアッセイ法の整備状況及び試験の実施状況等を調査した。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査
欧米等の残留農薬等の分析法開発方針、開発方法及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。28年度は農薬の残留分析法について調査しまとめた。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
アミノグリコシド系抗生物質は極めて極性が高いため、効率的に精確な分析値を得ることが困難なことから、当該物質の簡易・迅速、高感度・高精度な分析法の開発を目的として、28年度はLC-MS/MSによる測定条件について検討した。
課題3:試料調製方法の検討(28年度のみ実施)
分析に用いる試料量を減らせば分析時間の短縮が期待できるが、精確な分析値を得るのに必要な試料量は明らかとなっていないため、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにすることを目的とした。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施予定)
偽陰性・偽陽性の少ないスクリーニング分析法とするための要件を明らかにし(29年度)、分析法の性能評価方法及び性能基準を確立するとともにスクリーニング分析法のガイドライン(案)を作成(30年度)する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
抗生物質の残留分析はバイオアッセイ法からLC-MS/MS法への移行が進んでいるが、コストなどの理由からバイオアッセイ法が現在も汎用されている。そこで、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案することを目的として、28年度は欧米等のバイオアッセイ法の整備状況及び試験の実施状況等を調査した。
研究方法
課題1:欧米等の農薬の残留分析法開発に関するガイドライン等について調査し、分析法の開発方針及び評価基準についてまとめた。
課題2:構造等を考慮してアプラマイシン等11化合物を選択し、MS/MS条件及びLC条件を最適化した。
課題3:常温磨砕又は凍結粉砕により試料調製し、試料の採取重量を変えて通知のLC/MS一斉試験法Ⅰ(農産物)で試験溶液を調製し、各試料量での分析値のばらつきを求めた。
課題5:欧米等の情報の調査、担当部署へのメールでの聞き取り調査及び文献調査を実施した。日本のバイオアッセイ法の実施状況等は、検疫所等に対して、聞き取り調査を実施した。
課題2:構造等を考慮してアプラマイシン等11化合物を選択し、MS/MS条件及びLC条件を最適化した。
課題3:常温磨砕又は凍結粉砕により試料調製し、試料の採取重量を変えて通知のLC/MS一斉試験法Ⅰ(農産物)で試験溶液を調製し、各試料量での分析値のばらつきを求めた。
課題5:欧米等の情報の調査、担当部署へのメールでの聞き取り調査及び文献調査を実施した。日本のバイオアッセイ法の実施状況等は、検疫所等に対して、聞き取り調査を実施した。
結果と考察
課題1:抽出法(抽出効率)は、添加試料の評価では実際の残留試料からの抽出を反映することができないことから、各ガイドライン等における抽出法に関する方針を中心にまとめた。また、各ガイドライン等における分析法の評価基準についてまとめた。
課題2:MS/MS測定にESI(+)を用いることで、適切な測定イオンの選択が可能であった。また、両性イオン型官能基を修飾した親水性相互作用クロマトグラフィー用分析カラムを用いることで良好なピーク形状が得られた。
課題3:①試料調製方法(使用装置、操作方法を含む)によって試料の均質性は大きく異なること、②均質化が比較的困難な食品では、試料中の農薬の分布によっては試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があることが示された。
課題5:欧米等のバイオアッセイ法は、試料をそのまま又は緩衝液で抽出するのみである。一方、日本では試料から抽出後精製を行う点で大きく異なっており、マトリックスの影響を比較的受けにくい方法であると推察された。
課題2:MS/MS測定にESI(+)を用いることで、適切な測定イオンの選択が可能であった。また、両性イオン型官能基を修飾した親水性相互作用クロマトグラフィー用分析カラムを用いることで良好なピーク形状が得られた。
課題3:①試料調製方法(使用装置、操作方法を含む)によって試料の均質性は大きく異なること、②均質化が比較的困難な食品では、試料中の農薬の分布によっては試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があることが示された。
課題5:欧米等のバイオアッセイ法は、試料をそのまま又は緩衝液で抽出するのみである。一方、日本では試料から抽出後精製を行う点で大きく異なっており、マトリックスの影響を比較的受けにくい方法であると推察された。
結論
課題1:抽出法は添加回収試験では評価することができないため、適切な抽出効率を確保するためには、抽出法は変更せずに実施することが求められる。抽出法を変更する場合には、抽出効率の評価が必要である。欧米等の分析法の評価パラメータは概ね同じであるが、目標値は異なる場合があるため、国際的整合性を考慮して適切に設定する必要がある。
課題2:得られたLC-MS/MS測定条件を用いることで、アミノグリコシド系抗生物質11化合物について良好なピーク形状が得られた。繰り返し測定においてピーク面積の減少傾向が見られた事から、原因を調査する必要がある。
課題3:均質化が比較的困難な食品では、農薬によっては試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があったことから、試料量(野菜・果実の場合)は10±0.1 gが適切と考えられた。
課題5:調査した国では、様々なバイオアッセイ法がスクリーニング検査に用いられていた。しかし、いずれの方法もマトリックスの影響により誤判定となる可能性があり、また検出感度が低く基準値判定には適用できない等の課題が認められた。
課題2:得られたLC-MS/MS測定条件を用いることで、アミノグリコシド系抗生物質11化合物について良好なピーク形状が得られた。繰り返し測定においてピーク面積の減少傾向が見られた事から、原因を調査する必要がある。
課題3:均質化が比較的困難な食品では、農薬によっては試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があったことから、試料量(野菜・果実の場合)は10±0.1 gが適切と考えられた。
課題5:調査した国では、様々なバイオアッセイ法がスクリーニング検査に用いられていた。しかし、いずれの方法もマトリックスの影響により誤判定となる可能性があり、また検出感度が低く基準値判定には適用できない等の課題が認められた。
公開日・更新日
公開日
2017-11-28
更新日
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