食品由来薬剤耐性菌の発生動向及び衛生対策に関する研究

文献情報

文献番号
201622014A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来薬剤耐性菌の発生動向及び衛生対策に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 五十君 静信(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 川西 路子(農水省動物医薬品検査所)
  • 小西 典子(東京都健康安全研究センター)
  • 倉園 貴至(埼玉県衛生研究所 臨床微生物学)
  • 浅井 鉄夫(岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 富田 治芳(群馬大学大学院 細菌学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOは耐性菌の世界的コントロールをめざし、2015年のWHO総会においてglobal action planを示し、各国に今後5年間の耐性菌対策の行動計画を作成することを求めた。このaction planにおいては“One Health”の立場からのintegrated surveillanceの構築を求めている。今回の研究班では、家畜由来耐性菌モニタリングシステムJVARMと院内感染症耐性サーベイランスJANISのデータの相互変換の構築とその効果の評価を行うこと、及び食品由来細菌の耐性状況のデータを組織的に収集し、動物―ヒトのデータに繋ぐ体制の構築を行うことを目的とする。食品由来細菌やヒトからの食中毒関連細菌の薬剤耐性のデータの収集においては地方衛生研究所を中心とした体制を組むことにした。国内で分離された臨床、食品および家畜由来耐性菌の比較解析を行い、その関連性を解明することにより、”One Health”における surveillanceの構築を目指した。
研究方法
(1)食品、家畜および医療分野の検査手法(薬剤の種類、遺伝子検査法など)の標準化を行い、第3世代セファロスポリン耐性大腸菌、サルモネラ等の腸内細菌の耐性の相互比較を行った。 (2)国内で市販される国産鶏肉及び輸入鶏肉を供試検体とし、ESBL産生大腸菌,VREを分離した。ESBL産生確認のためにCTX, CAV, CAZディスク、AmpC産生確認のためにCTX, ボロン酸, CAZディスクをそれぞれ用いたディスク拡散法(DDST)を行った。各々の耐性遺伝子型の確認には各種特異的プライマーを用いたPCR法を用いた。必要に応じてDNAシークエンス解析(Big Dye primer法)、PFGE解析、MLST解析を行った。
結果と考察
a)WHOが実施するサーベイランスGLASSが求める血液由来、尿由来、便由来の各菌について、年齢、性別、外来入院別で各種薬剤の耐性の割合をJANIS上で集計し、WHO-GLASSが求める形式に変換できるプログラムの開発ができつつある。b)サルモネラについてはJANISのデータは数が少ないので、地方衛生研究所におけるデータを利用する方向での検討を行った。H28年度に17か所の研究協力地研を選定し、各地研で分離された患者及び食品由来サルモネラ属菌について18種類の抗菌剤に対する薬剤感受性試験を実施した。感受性検査のプロトコルを標準化し、用いる試薬・器具類も同一のものを使用し、共通の感受性-耐性判定基準を用いて判定した結果が出そろい、WHOへの報告に利用できる方向である。c)JANISとJVARMとの連携;相互比較:一部改編したJANIS集計用プログラムに、JVARMデータを入力し、アンチバイオグラムを作成できるようにした。JANISで測定されるヒト用の薬剤とJVARMで測定される動物用の薬剤の耐性相関を確認した。その結果、ERFX、OTC、ABPCについては、相関係数、感度、特異度ともに良好な値を示し、それぞれの薬剤での耐性を比較できることが確認された。しかし、AMKとKMについては相関係数が低く、今後検討が必要である。さらにコリスチンについて、測定法間での相関が低い傾向があったが、同一の測定法を用いる限り比較可能であることが確認された。d)市販流通する食肉からのコリスチン耐性大腸菌の検出:市販食肉中のmcr-1 保有大腸菌の検出率は鶏肉で12.7%,豚肉で2.0%であった。mcr-1 保有大腸菌が検出された鶏肉は、国産が6検体,ブラジルが1検体,豚肉はスペイン産であった。
結論
JVARMとJANISで得られてデータの相互比較が可能となった。その結果、JVARMとJANISで測定薬剤の異なるフルオ ロキノロン系抗菌剤及び第3世代セファロスポリンについて、いずれの薬剤においても高い相関が認められた。第3世代セファロスポリンに対しては、ブロイラーにおいては2010年以降耐性率が急激に低下してきているが、ヒト臨床分離株では継続的な耐性率の上昇が認められている。市販の鶏肉から分離される菌の耐性率はかなり高いことが反映しているかもしれない。コリスチンの耐性菌が食品等から分離されてきている。ヒトからの実態調査が必要であろう。地方衛生研究所を中心としたサルモネラの耐性菌情報はJANISから得られる情報を補充できることが判明した。このデータをJANISサーバーに取り込み、GLASSへの報告に用いる体制が整いつつある。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
19,435,000円
差引額 [(1)-(2)]
565,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,943,259円
人件費・謝金 259,600円
旅費 1,677,183円
その他 2,555,514円
間接経費 0円
合計 19,435,556円

備考

備考
補助金交付額の算定方法が千円未満の端数切捨であることにより生じる自己負担556円。

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-