国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究

文献情報

文献番号
201622011A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究
課題番号
H27-食品-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 司(公益財団法人日本乳業技術協会)
  • 平井 昭彦(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,396,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、乳等省令における試験法に関連する情報収集と修正が必要と考えられる試験法について検討し、最適な試験法の策定の可能性も含めて、将来的な展望を示すことを目的とする。特に、海外の乳及び乳製品に関する試験法を規定する成分規格に関する情報を収集し、乳等省令と比較することで国際的にも対応可能な試験法の確立を目指す。
研究方法
1. 海外における乳及び乳製品の試験法と乳等省令による試験法の比較
 乳等省令において定められる乳及び乳製品の試験法で、EUのISO法及び米国のOMA法で該当するものを検索し、最新法と考えらるものにについて順次比較を実施した。平成28年度については、乳の乳脂肪分、無脂乳固形分、クリームの乳脂肪分、脱脂粉乳の水分についての試験を実施した。そのうち、乳の乳脂肪分および無脂乳固形分については4試験室(東京都健康安全研究センター食品化学部食品成分研究科、株式会社明治品質科学研究所、雪印メグミルク株式会社品質保証部分析センター、公益財団法人日本乳業技術協会)による共同試験を実施し、クリームの乳脂肪分、脱脂粉乳の水分については公益財団法人日本乳業技術協会で試験を行った。
2. 乳等省令で規定される細菌数の直接個体鏡検法(ブリード法)の代替染色法の検討
 材料として、2016年9月に東北地方の農場で採取され、冷蔵で輸送された生乳1検体(R1)および関東地方の生乳販売農業協同組合連合会生乳検査所で検査した後に冷蔵で輸送された生乳5検体(R2-R6)を用いた。ブリード法は、乳等省令および一般社団法人J-milkの生乳検査マニュアルに従い実施した。
結果と考察
4試験室で実施した乳の乳脂肪分および無脂乳固形分の試験では、ばらつきの指標である室間再現相対標準偏差については、ISO法、OMA法が0.4%、乳等省令法は2.4%となり、乳等省令法の方がばらつきの大きい結果となった。これは、析出した脂肪柱についてゲルベル乳脂計の目盛りを直接目視で読み取る容量法である乳等省令法と、抽出した脂肪の重量を化学天びんで測定する重量法であるISO法およびOMA法との原理の違いによる精度の差と考えられた。乳の無脂乳固形分については、乳等省令法、OMA法ともに全固形分を定量し、別に求めた乳脂肪分を差し引くことによって算出する方法であった。全固形分の定量法では、乳等省令法の方が、ばらつきが小さく、全固形分はわずかに高値になる傾向が見られた。クリームにおける乳脂肪分の試験法では、乳等省令法・ISO法・OMA法共通して原理的に同じ重量法であるものの、脂肪抽出を行う器具に違いがあり、乳等省令法には「リヨーリツヒ管」が、ISO法及びOMA法には「マジョニア管」が規定されている。測定値の比較では、ISO法とOMA法は同等の結果となったが、乳等省令法は平均すると約0.4%低値となる傾向がみられた。ブリード法の代替染色法の検討では、BPV染色液およびブロードファーストバーレイについてニューマン染色液との同等性が示唆されたが、染色条件や分裂像の判断基準に関する検討が必要と考えられた。
結論
米国及びEUでは、乳及び乳製品の成分規格に関する試験法は、OMA法やISO法などの国際的に認められた試験法を参照法とし、妥当性が確認された最新の方法が公的試験法として随時採用されている。これらの公的試験法と乳等省令における試験法との比較から、本年度実施した品目における測定結果のわずかな違いは、乳等省令における試験法の精度や測定原理の違いによるものであることが明らかとなった。引き続き実施する他の品目における試験法の比較結果を踏まえつつ、国際的な整合性を持ち現行法の長所も取り込みうる試験法の検討が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,396,000円
(2)補助金確定額
4,396,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,732,285円
人件費・謝金 7,800円
旅費 368,584円
その他 390,581円
間接経費 0円
合計 4,499,250円

備考

備考
収入として、自己資金 103250円があるため、支出合計が相当額増えている。
 (4396000円 + 103250円 = 4499250円)

公開日・更新日

公開日
2018-07-09
更新日
-