腫瘍性病変をエンドポイントとするオルガノイド系を用いる食品添加物等の遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発

文献情報

文献番号
201622007A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍性病変をエンドポイントとするオルガノイド系を用いる食品添加物等の遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発
課題番号
H27-食品-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
研究分担者(所属機関)
  • 筆宝義隆(千葉県がんセンター 研究所 発がん制御研究部)
  • 戸塚ゆ加里(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 発がん・予防研究分野)
  • 落合雅子(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物等の生体における遺伝毒性評価法として、レポーター遺伝子をマウス・ラットに導入した遺伝子突然変異検出系の開発により評価精度が向上したが、発がん性については長期試験の時間・使用動物削減・経費面の課題と短・中期試験からの予測による不確実性を克服する評価法の開発を要する。我々はマウスの大腸・肺等の正常組織から3次元培養法によりオルガノイドを調製し、臓器毎の発がん機序に基づく遺伝子改変操作を加えてヌードマウスに皮下移植すると腫瘍様組織を形成し、既知の発がん物質処置により当該組織の増殖活性・異型性・浸潤性を指標とする悪性化が誘導できることを見出した。本研究では、レポーター遺伝子導入マウス等から調製したオルガノイド系につき、遺伝毒性試験法としての適用性と腫瘍性病変をエンドポイントとする発がん性試験法としての妥当性を検証し、遺伝毒性・発がん性短期包括的試験法の開発を目指す。
研究方法
平成27年度;マウス正常器官・組織を用いて、主に小腸や大腸、肺などのオルガノイド調製法の検討と調製条件の違いによる試験結果のばらつきをなくすための検討を行った。更に大腸のオルガノイドに対しレンチウイルスを用いて種々のがん関連遺伝子の発現を変化させることによる発がんへの影響を解析した。また、大腸についてはPhIP、肺についてはNNKの発がん性を検討した。遺伝毒性については、gpt deltaマウス由来の肝臓のオルガノイドについて、背景データとしてのspontaneousな変異頻度を調べた。平成28年度;胆嚢、子宮のオルガノイド調製法の検討を行った。また、遺伝毒性発がん物質としてアクリルアミド(AA)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)、非遺伝毒性発がん物質としてトリエタノールアミン(TEA)、非遺伝毒性非発がん物質として1-メチルナフタレン(1-MN)、ペリルアルデヒド(PA)の発がん性を検討した。遺伝毒性については、PhIPを被験物質とし、変異頻度と変異スペクトルを指標とした解析を行った。
結果と考察
平成27年度;オルガノイド調製法については、マウスの組織採取時週齢に注意を要することを明らかにした。また、大腸オルガノイドに対しApcやPten遺伝子をノックダウンすると腺がんを形成することを示した。オルガノイドを用いる化学物質の発がん性については、PhIPの発がん性が確認され、NNKについては検証を継続した。遺伝毒性については、肝臓オルガノイドのspontaneousな変異頻度が、肝臓組織から直接ゲノムDNAを抽出した場合の変異頻度と同程度であることを確認した。平成28年度;胆嚢、子宮のオルガノイドを樹立するための調製法を明らかにした。また、肺あるいは肝臓オルガノイドを用いた検討でAA、BaP、MNU及びTEAでは発がん性を示す結果が得られた。 一方、1-MNについては対照群と差がみられず、PAについては対照群との差の有無について再確認が必要であった。遺伝毒性については、PhIPの変異頻度と変異スペクトルについて、大腸オルガノイドを用いる方法とin vivo試験法と同様の結果が得られることを示した。
結論
平成27年度、発がん性については、遺伝毒性発がん物質2物質を用いて発がん性試験法としての妥当性の検証を開始し、更に、安定した結果が得られるよう条件設定検討を行った。遺伝毒性についても臓器をオルガノイド化することによる影響を明らかにするなど基礎的検討を行った。平成28年度は、発がん性について遺伝毒性発がん物質3物質、非遺伝毒性発がん物質1物質、非遺伝毒性非発がん物質2物質の検討を行い、遺伝毒性発がん物質のみならず、非遺伝毒性発がん物質についてもその発がん性を検出可能である可能性を示した。遺伝毒性については、1物質を用いた検討にて、in vivo変異原性試験で得られた結果と類似した結果が得られることを示した。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,552,486円
人件費・謝金 4,157,597円
旅費 117,406円
その他 634,511円
間接経費 2,538,000円
合計 11,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
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