文献情報
文献番号
201622004A
報告書区分
総括
研究課題名
非定型BSE(牛海綿状脳症)に対する安全対策等に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(宮崎大学医学部)
- 岩丸 祥史(農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門)
- 柴田 宏昭(自治医科大学 先端医療技術開発センター)
- 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
- 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞生化学部)
- 長谷部 理絵(北海道大学 大学院獣医学研究科)
- 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場)
- 室井 喜景(帯広畜産大学 畜産学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
24,391,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
英国で発生して世界各地に広がったBSE(定型BSE, C-BSE)は大きな社会問題となったが、飼料規制などの管理措置が機能した結果、その発生は制御下にある。しかし、能動サーベイランスの結果、C-BSEとは性質が異なるBSE(非定型BSE, L-BSEおよびH-BSE)が、主に高齢牛で発見され、ヒトへの感染リスクやC-BSEの原因となる可能性が指摘されている。本研究では、食品を介する非定型BSEの感染拡大を防ぐための安全対策等に貢献することを目標として、これまでに培った技術・経験および科学的知見を活用して、I) 非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明に資する研究、II) 非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究、III) 潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEがC-BSEの起源となる可能性の推定、に資する研究を実施した。
研究方法
I-1) L-BSE接種牛におけるPrPSc蓄積の経時的解析を継続した。
I-2) C-, L-, H-BSE感染動物における病態の相違を調べるための網羅的遺伝子発現解析を継続した。C-, L-, H-BSE感染動物の神経病変を解析した。
I-3) C-,L-, H-BSE感染動物のPrPScの生化学性状の相違を解析した。
II-1) L-BSE経口接種したカニクイザルの経過観察を継続した。
II-2) H-BSEを脳内接種および経口接種したカニクイザルの経過観察を継続した。
II-3) L-BSE実験感染牛の発症牛の可食部位のプリオン感染価を調べた。
III-1) シカ組換えPrPを用いるRT-QuIC法を用いて、高齢牛を対象に潜在的なL-BSEが存在する可能性を調べた。
III-2) C-, L-BSE, およびH-BSEを識別するRT-QuIC法およびPMCA法を応用して、非定型BSE試料の熱処理や化学処理が定型BSEを誘発する可能性を検討した。
I-2) C-, L-, H-BSE感染動物における病態の相違を調べるための網羅的遺伝子発現解析を継続した。C-, L-, H-BSE感染動物の神経病変を解析した。
I-3) C-,L-, H-BSE感染動物のPrPScの生化学性状の相違を解析した。
II-1) L-BSE経口接種したカニクイザルの経過観察を継続した。
II-2) H-BSEを脳内接種および経口接種したカニクイザルの経過観察を継続した。
II-3) L-BSE実験感染牛の発症牛の可食部位のプリオン感染価を調べた。
III-1) シカ組換えPrPを用いるRT-QuIC法を用いて、高齢牛を対象に潜在的なL-BSEが存在する可能性を調べた。
III-2) C-, L-BSE, およびH-BSEを識別するRT-QuIC法およびPMCA法を応用して、非定型BSE試料の熱処理や化学処理が定型BSEを誘発する可能性を検討した。
結果と考察
・C-, L-BSE脳内接種牛のPrPSc検出時期を調べた結果、嗅脚ではL-BSEで12ヶ月早くPrPScが検出され、C-, L-BSE感染牛では脳内のPrPScの蓄積動態に明瞭な差が認められた。
・C-, L-, H-BSEプリオン感染ウシPrP過発現マウス (TgBovPrP) の網羅的遺伝子発現解析により、C-, L-, H-BSEプリオン感染TgBovPrPで共通して発現が上昇する遺伝子群には、ミクログリアで発現が上昇する自然免疫系に関連する遺伝子が多く含まれていた。一方、C-, L-, あるいはH-BSEプリオン特異的に発現が上昇する遺伝子群の存在も明らかとなり、各々の病態が異なることが示された。
・C-BSEのPrPScが熱処理によりPrPScの分子サイズが変化するという、これまでに報告がない生化学的特徴を有することを見出した。
・L-BSE感染牛脳乳剤を経口接種したカニクイザルの経過観察を継続し、本年度、投与後3.7年の個体の血漿から一過性にPrPScが検出された。発症は認められていないが、L-BSEが経口的にヒトに感染する可能性を示唆する結果である。
・H-BSE感染牛脳乳剤を経口接種したカニクイザルは、接種後1.4年を経過したが、著変は認められていない。
・TgBovPrPを用いたバイオアッセイにより、L-BSE感染牛の可食部 (骨格筋:上腕三頭筋、半腱様筋、大腰筋、最長筋) に脳の1/10,000程度の感染価が存在することを明らかにした。また、H-BSEの感染価を測定するための感染価-潜伏期標準曲線を作成した。
・組換えシカPrP (rCerPrP) を基質に用いることで、C-BSEとL-BSEプリオンを一回の反応で、高感度に検出・識別できるRT-QuIC法を確立した。この方法を用いて、これまで潜在的なL-BSEウシは見つかっていない。
・L-BSE感染ウシ脳乳剤の熱処理、酸、塩基処理後にC-BSE特異的PMCA法によりC-BSE様プリオンの検出を行ったが、検出されなかった。
・C-, L-, H-BSEプリオン感染ウシPrP過発現マウス (TgBovPrP) の網羅的遺伝子発現解析により、C-, L-, H-BSEプリオン感染TgBovPrPで共通して発現が上昇する遺伝子群には、ミクログリアで発現が上昇する自然免疫系に関連する遺伝子が多く含まれていた。一方、C-, L-, あるいはH-BSEプリオン特異的に発現が上昇する遺伝子群の存在も明らかとなり、各々の病態が異なることが示された。
・C-BSEのPrPScが熱処理によりPrPScの分子サイズが変化するという、これまでに報告がない生化学的特徴を有することを見出した。
・L-BSE感染牛脳乳剤を経口接種したカニクイザルの経過観察を継続し、本年度、投与後3.7年の個体の血漿から一過性にPrPScが検出された。発症は認められていないが、L-BSEが経口的にヒトに感染する可能性を示唆する結果である。
・H-BSE感染牛脳乳剤を経口接種したカニクイザルは、接種後1.4年を経過したが、著変は認められていない。
・TgBovPrPを用いたバイオアッセイにより、L-BSE感染牛の可食部 (骨格筋:上腕三頭筋、半腱様筋、大腰筋、最長筋) に脳の1/10,000程度の感染価が存在することを明らかにした。また、H-BSEの感染価を測定するための感染価-潜伏期標準曲線を作成した。
・組換えシカPrP (rCerPrP) を基質に用いることで、C-BSEとL-BSEプリオンを一回の反応で、高感度に検出・識別できるRT-QuIC法を確立した。この方法を用いて、これまで潜在的なL-BSEウシは見つかっていない。
・L-BSE感染ウシ脳乳剤の熱処理、酸、塩基処理後にC-BSE特異的PMCA法によりC-BSE様プリオンの検出を行ったが、検出されなかった。
結論
・嗅脚などを採材することで、L-BSEの確実な摘発が可能になる。
・C-, L-, H-BSEプリオンが惹起する神経変性の性質は異なる。
・C-BSEのPrPScが熱処理により分子サイズが変化するという、新規の生化学的特徴を見出した。
・L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を明らかにした。
・L-BSE感染牛の可食部に脳の1/10,000程度の感染価が存在する。
・C-BSEとL-BSEプリオンの高感度検出および識別を一回の反応で実施可能なRT-QuIC法を確立した。
・L-BSEプリオンが単純な化学処理によりC-BSE様に変化する可能性は低いと考えられる。
・C-, L-, H-BSEプリオンが惹起する神経変性の性質は異なる。
・C-BSEのPrPScが熱処理により分子サイズが変化するという、新規の生化学的特徴を見出した。
・L-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を明らかにした。
・L-BSE感染牛の可食部に脳の1/10,000程度の感染価が存在する。
・C-BSEとL-BSEプリオンの高感度検出および識別を一回の反応で実施可能なRT-QuIC法を確立した。
・L-BSEプリオンが単純な化学処理によりC-BSE様に変化する可能性は低いと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2017-07-04
更新日
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