文献情報
文献番号
201622001A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の安全性確保のための規格基準設定に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
- 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 受田 浩之(高知大学 教育研究部総合科学系生命環境医学部門)
- 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
- 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国の成分規格が設定されていない既存添加物約140品目について,流通実態や今後の成分規格作成の技術的実現性を調査研究し,今後の成分規格作成の優先順序を判断する.また今後の規格設定が可能と考えられる品目については,含有成分の解析と基原確認及び成分規格試験法の検討を進める.また規格試験として,酸化防止剤には抗酸化活性測定法の導入を検討し,酸化防止剤の規格試験法素案を作成する.また日持ち向上剤,苦味料,増粘剤等,複雑な混合物の品目に関しても特性値を指標とした規格試験法の開発を模索する.また第9版公定書に収載予定の酵素の基原に関しては,種の同定に至っていない菌種があることから,種の同定を解析する方法を確立する.
研究方法
既存添加物の流通状況、安全性試験実施状況、成分規格の整備状況を調査した。成分規格未設定の品目について含有成分を解析した。有効成分(指標成分)の標準品設定のため、定量NMRを利用した純度検定等を行った。公的な規格試験法に利用できる抗酸化活性標準操作法の確立を検討した。DPPH法による酸化防止剤評価方法を確立し,含有成分が多種のため分離分析が困難な酸化防止剤の抗酸化活性評価を実施し、活性成分含有量との比較を行った。日持ち向上剤や増粘剤等に関して物理的特性値等を指標とした規格試験法の開発を検討する。第9版公定書に収載予定の酵素の基原に関しては、種の同定に至っていない菌種があることから、種の同定を解析する方法を確立する。
結果と考察
「生コーヒー豆抽出物」について,5-O-Caffeoylquinic acid(クロロゲン酸),Caffeineをはじめとする13種の化合物を単離,同定した.「ムラサキイモ色素」「ムラサキイモ」「ムラサキヤマイモ」:最大吸収波長(ムラサキイモ:515~535 nm,ムラサキヤマイモ: 525~545 nm)によるピークが全く異なっており,それぞれの成分を同定する必要があった.そのため,LC-MSによって,各ピークの同定を実施することとした.ムラサキイモ由来成分は,cyanidin, penidin, peonidinなどの配糖体であり,ムラサキヤマイモ由来成分は,Alatanin類の異性体混合であった.「ゴマ油不けん化物」:汎用的な逆相系クロマトグラフィーを用いたゴマ油不けん化物中のセサモリン,セサミン,セサモール(分解物)の一斉分析法の構築を行った.「ヤマモモ抽出物」においてmyricitrin,「グルコサミン」においてglucosamine,「クローブ抽出物」においてeugenolを1H-qNMRを用いて定量する条件を確立した.「クチナシ青色素」:ゲニピンとベンジルアミンを用いたモデル実験をおこなった.異なる混合比の反応実験から,青色素本体がゲニピンと一級アミンがモル比1:1で反応したユニットの繰り返し構造であることが示唆された.既存添加物の酸化防止剤の一般試験法としてDPPH法を提案し,その具体案を作成した.生コーヒー豆抽出物のDPPHラジカル消去活性を測定したところ,5-O-Caffeoylquinic acid等のカフェー酸誘導体の添加物活性への寄与が大きいことが示唆された.カワラヨモギ抽出物の成分規格案確立のため,HPLC分析法を検討し,国内流通製品の品質確保の指標となる成分について確認した.既存添加物アルギン酸リアーゼの生産菌の一種であるFlavobacterium multivorumについて,種の同定解析を検討した.Flavobacterium属に帰属されるものの,相同性が98.7%以上,すなわち,同種である可能性が考慮される既知種は検索されなかった.従って,本同定解析ではFlavobacterium sp.と推定されることが判明した.
結論
第9版食品添加物公定書に未収載の既存添加物の中から,第10版公定書の作成に備え検証規格の作成を実施した.「生コーヒー豆抽出物」,「カンゾウ油性抽出物」,「カキ色素」,「アンモニア処理ラック色素」,「ゴマ油不ケン化物」,「ヤマモモ抽出物」,「グルコサミン」,「グローブ抽出物」,「クチナシ青色素」, 「カワラヨモギ抽出物」「ベニコウジ色素」等の成分解析行い、一部は規格試験法案を確立した.既存添加物に分類される酸化防止剤の抗酸化力価評価に関する一般試験法案を作成し, DPPH法に基づく一般試験法案が酸化防止剤の力価評価において広い適用性と高い再現性を示すことが明らかとなった.第9版公定書に収載される既存添加物酵素の微生物由来の基原について,16S rDNAまたはITS配列が国際塩基配列データベースGenBankに登録されているのか調査した.基原の使用に関しては一定の判断基準を設定しておく必要があると思われる.
公開日・更新日
公開日
2017-07-04
更新日
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