経済情勢等が労働災害発生動向に及ぼす影響等に関する研究:多変量時系列解析による数理モデルの開発と検証

文献情報

文献番号
201621014A
報告書区分
総括
研究課題名
経済情勢等が労働災害発生動向に及ぼす影響等に関する研究:多変量時系列解析による数理モデルの開発と検証
課題番号
H28-労働-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松田 文子(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 榎原 毅(名古屋市立大学 大学院 医学研究科)
  • 酒井 一博(公益財団法人 大原記念労働科学研究所 )
  • 池上 徹(公益財団法人 大原記念労働科学研究所 )
  • 余村 朋樹(公益財団法人 大原記念労働科学研究所 )
  • 石井 まこと(大分大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働災害は長期的には減少しているが、小売・飲食業や保健衛生業などの第三次産業では増加傾向にある。第12次労働災害防止計画においても、重点業種別の対策が提唱されているが、労働を取り巻く諸環境の要因(経済情勢、産業構造の変化、就業形態、自然・気象条件、産業技術革新等)が及ぼす影響について科学的根拠に基づく解析はほとんど行われておらず、行政政策評価に資する知見が切望されている。
そこで、本研究では、マクロ経済学・金融工学等で応用されている多変量時系列解析手法(Kariya, 1993)を用いて、経済情勢が業種別労働災害の発生に及ぼす影響を明らかにすることを最終目的とする。
研究方法
 各研究班(数理モデル班,経済情勢班,労働経済班,労災分析班,気象天災班)で調査した各種指標を持ち寄り、各指標の利用可能性についてブレーンストーミングを行った。各指標は①データ期間、②データ密度(年単位・四半期単位・月単位など)、③データの質(発行元や信頼性)、④データの利用可能性(入手先)、⑤データ加工の手間、⑥データ欠損の度合いの6側面で検証を行い、最終的に投入する変数の定義方法および優先度について議論を重ねた。
結果と考察
最終的に抽出された変数は計212変数であった。各変数により収集期間が異なるため、最大公約数的な期間を検討した結果、直近50年間程度が年単位データの利用可能な最大の範囲であることが分かった。また、月単位の粒度を細かくした時系列変動解析についても行えるよう、月単位のデータセットの生成可能性についても検証を行った。月単位で利用可能なデータ利用可能期間は直近25年間程度と考えられた。また、年単位データの解析可能期間と想定される1973~2012年のデータセットにおいて、完全データの変数(欠損がない変数)は全変数の27%に過ぎなかった。また、同じ統計であっても出処が異なると当該年の統計値が異なるものも存在し、欠損値補完の処理方針についても研究組織内で適宜ディスカッションを行った。
 抽出した変数については、経済情勢関連については、主に国内総生産、産業別労働生産性、景気動向指数、設備投資・技術革新指数(機械受注指数など)、各種経済指数(企業物価指数、失業率、鉱工業生産指数、消費者物価指数など)など。労働経済関連については、産業構造、就業形態(非正規雇用、外国人労働、高齢労働等)や社会政策、労働力人口(業種別就労人口)などを示す各種指標を、気象・天災関連については、自然災害(台風、豪雨など発生日時および被害数)、気温のほか、大震災など経済活動にも影響を与えると考えられる事象については月単位データとして抽出・データ生成を行った。また、従属変数(アウトカム)として利用する労働災害関連の指標については、業種別度数率、強度率、労働損失日数、労災申請件数などの利用を想定しているが、代理アウトカム指標の利用可能性も視野に人口動態統計から死因別死亡率などの情報も収集を行った。
 本研究課題として扱う経済動向としては、いわゆる一般的に扱われる事の多いIndexを主要要因として位置づけ、その他補助的変数の選定をモデル投入時に探索的に行うこととした。
個々の指標について質的側面についても適切に理解をしておく必要性が提案され、議論を重ねてきた。各指標について、それぞれ想定される背景因子が存在すると考えられるため、モデル投入を行う前に適切な調整法を検証することも必要となるため、平成29年度では各指標についてプロファイル情報(サンプリング方法、データ収集方法、変数の特徴など)を一覧化し、整理することとした。
これら各指標の特性を把握し、モデル投入する変数の優先度を付け、基礎解析として時系列解析へ変数投入すべきかの検証を行うこととした。また変数の特徴としては、定常・非定常時系列、トレンド・ランダムウオーク性の解析、スペクトル解析による時系列推定モデルの検討を行い、各変数の持つ時系列情報の特性を事前に明らかにしておくこととした。
結論
 経済情勢が業種別労働災害の発生に及ぼす影響を明らかにするために、主に時系列モデルに投入する主要アウトカム・要因の抽出と定義の設定を行った。現段階で抽出された変数は計200以上におよんだ。暫定的に年単位データは1973~2012年前後の50年間、月単位データは1992~2012年の約20年間を対象データ期間とするのが合理的と判断された。ただし、完全データの変数が少ないこと、また自己回帰モデルによるトライアル解析からも死亡災害件数の予測には自己回帰モデルでは不十分なことから、指標について各プロファイルを明らかにして、モデル投入を行う前に適切な調整法を検証することが重要となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201621014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,510,000円
(2)補助金確定額
3,510,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,008,352円
人件費・謝金 552,329円
旅費 1,014,572円
その他 124,751円
間接経費 810,000円
合計 3,510,004円

備考

備考
4円の差額は預金利息

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-