文献情報
文献番号
201621012A
報告書区分
総括
研究課題名
振動工具作業者における労働災害防止対策等に関わる研究
課題番号
H28-労働-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 池上 和範(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
- 足立 弘明(産業医科大学 神経内科学)
- 大成 圭子(産業医科大学 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、振動工具取扱い者における振動障害の早期スクリーニングに対する神経伝導速度(NCV)検査の有用性を提供することを調査目的の一つとする。また、今回の調査では非侵襲的かつ客観的な測定が簡便といった特徴をもつレーザー血流画像化装置(LSFG)に着目し装置の妥当性も同様に検証する。上記の調査を3年間に渡って継続し症例を収集し、従来不明であった振動ばく露量と振動障害の病態の相関を解明し、特殊健康診断での早期発見・早期治療に活用することを検討する。これらの測定装置を用いた振動工具による病態評価を行うことで、作業関連疾患の予防のための健康診断情報の発信と、産業医の就業判定に関する科学的かつ客観的な判断根拠の一助になり、意義のある研究と考えられる。労働者の早期治療と社会復帰を目標とすることも可能であり、さらには危険因子をつかむことで今後の一次予防に向けた職場環境の改善に繋がり事業所全体の労働者の労災発症予防に結び付けることになる。また、作業関連疾患の予防のために健康診断情報の活用が期待される。
研究方法
研究への参加同意が得られた福岡県内の成人男性65名を対象とした。「取扱い群」(35名)と,「対照群」(30名)の 2群に分けた。被験者に対し、健診機関等で主に使用されている特殊健診の問診票に加えて、振動工具使用に関する作業状況を詳細に聴取した。
被験者に対し、神経内科医による診察を行い振動障害に関する所見を取り記録した。神経学的な所見としては、具体的に筋力、筋萎縮、深部腱反射、感覚障害、運動失調症状等に関し所見を取った。神経伝導検査は産業医科大学病院内で日本光電社のニューロパック X1 を用いて実施した。
また、末梢循環障害の病態を把握するためにレーザー血流画像化装置による皮膚血流検査を実施した。末梢循環機能は検査室温の影響を受けるため、人工気候室を用いて温度・湿度を一定の環境に調整した上で行った。
測定は季節による変動を考慮して夏期と冬期の2回行った。
被験者に対し、神経内科医による診察を行い振動障害に関する所見を取り記録した。神経学的な所見としては、具体的に筋力、筋萎縮、深部腱反射、感覚障害、運動失調症状等に関し所見を取った。神経伝導検査は産業医科大学病院内で日本光電社のニューロパック X1 を用いて実施した。
また、末梢循環障害の病態を把握するためにレーザー血流画像化装置による皮膚血流検査を実施した。末梢循環機能は検査室温の影響を受けるため、人工気候室を用いて温度・湿度を一定の環境に調整した上で行った。
測定は季節による変動を考慮して夏期と冬期の2回行った。
結果と考察
本研究では質問紙より回答される「1日あたりの使用時間」は,年間の平均的な使用時間である点と,各年齢での正確な使用日数が算出困難なため,日振動ばく露量の概念は使用せずに質問紙による観察期間中の累積ばく露量を,「生涯振動ばく露量」として相対値的に利用した。被験者に対し、分担研究者による診察を行い振動障害に関する所見を取り記録した。筋力検査、感覚検査、神経伝導検査、皮膚温検査、末梢循環障害検査を実施した。振動ばく露量による神経伝導速度への影響について弱い負相関傾向が見られた。また、LSFGを用いた冷水浸漬負荷検査では多変量解析の結果、5分回復率は全ての測定領域で生涯振動ばく露量により低下する傾向を示し、振動工具の取扱量によって回復率が低下する可能性が示唆された。
結論
今回の結果では振動曝露量による神経伝導速度への影響について弱い負相関傾向が見られた。今後、振動曝露量をより正確に調査し、季節変動、身長、体重、現病歴などの情報を組み合わせることによって、曝露量による振動障害と神経伝導速度との精緻な分析が必要であると思われる。また、LSFGを用いた検査と質問紙による評価方法は,予防的観点からその有用性が高いことが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2017-06-06
更新日
-