献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究

文献情報

文献番号
201620046A
報告書区分
総括
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-026
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 丘(東北医科薬科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 松居喜郎(国立大学法人北海道大学)
  • 伊澤祥光(自治医科大学)
  • 小林英司(慶應義塾大学)
  • 七戸俊明(国立大学法人北海道大学)
  • 白川靖博(国立大学法人北海道大学)
  • 野原 裕(獨協医科大学)
  • 吉田一成(慶應義塾大学)
  • 内山安男(順天堂大学)
  • 渡辺雅彦(国立大学法人北海道大学)
  • 平野 聡(国立大学法人北海道大学)
  • 鈴木崇根(国立大学法人千葉大学)
  • 倉島 庸(国立大学法人北海道大学)
  • 伊達洋至(国立大学法京都大学)
  • 高橋晴雄(国立大学法長崎大学)
  • 柴田考典(北海道医療大学)
  • 平松昌子(高槻赤十字病院)
  • 弦本敏行(国立大学法長崎大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
834,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全な医療の提供には、効率的な手術手技トレーニングが必要である。諸外国では教育手法の一つとして確立している献体による手術手技修練(カダバートレーニング)であるが、我が国においても、2012年に「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」の公表により実施可能となった。現在、ガイドライン公表から3年を経過し、複数の大学で実施が開始されているが、医療技術の高度化に対応するためには、更なる普及・定着が必要と考えられる。そこで本研究では、カダバートレーニングの普及の促進と継続的な実施に必要な諸条件を探索することを目的に、一年間の研究を実施した。
研究方法
1.実施例を調査し、カダバートレーニング運営のために必要なサポートのあり方を探索する。
カダバートレーニングでは手術手技を習得するために、医療機器や手術材料を使用して模擬手術を実施する。医療機器や手術材料は高額であり、献体の登録、保存、管理等の業務にも経費と人的資源が必要となる。それらの必要な経費を受講者からの参加費のみで賄うことは不可能であり、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくては実施できない現状がある。本研究では、実施例における参加者負担と外部資金の導入ならびに企業支援などの運営状況を、全国のカダバートレーニングの実施施設を対象に調査・分析する。
2.外部資金の導入や企業の協力に関する指針を提言し、ガイドラインの見直しの必要性を検討する。
上記の調査から、効率的・効果的な運営を行っている実施施設を抽出し、トレーニングコースを自立し、継続して実施可能とするのための、資金面や運営形態などにおける工夫について検討する。また、海外のカダバートレーニングにおける運営状況の実態調査、アニマルトレーニング等の他の教育手法の調査により、理想的な運営の在り方を探る。さらに、献体制度の無償の精神を保ちつつ、企業などからの外部資金を導入する際の利益相反マネジメントに関する指針を提言し、2012年公表の「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」において、見直しが必要であれば改定を促すべく、関係諸団体に提言する。
結果と考察
研究期間中2回の会議が開催された。第1回は平成28年8月5日に、テーマを「クリニカルアナトミーラボ運営と企業との連携のありかた:事例提示とディスカッション」として開催された。第2回は平成28年10月21日に、テーマを「CSTのありかた:生きた動物(ブタ等)との比較において」として開催された。会議には、外科系医師、解剖学者に加え、生命倫理の専門家、法律家、医療機器メーカー、報道関係者も参加した。
調査では、医療安全の観点からもカダバートレーニングの実施体制の充実が望まれるものの、国内での実施状況は、平成25年度からの3年間で12大学のみでの実施にとどまっていることが明らかとなった。また、普及が進まない理由として、学内で新たな組織を立ち上げる必要があること、本格実施には設備投資が必要であるが、トレーニングの参加費からは賄いきれず、公的資金の導入や、医療機器メーカー等の協力の必要性が浮き彫りとなった。
これらの成果は、日本外科学会CST推進委員会と合同企画「今、手術手技向上のために何をすべきか?」として、平成29年4月29日に、第117回日本外科学会定期学術集会にて公表された。


結論
国民に対して、高度な医療を安全に提供するためには、カダバートレーニングの実施体制の充実が必須である。今後は、有効性を証明し、社会に対する啓発を推進することにより、社会にサポートされるカダバートレーニングの実施体制の確立が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620046C

収支報告書

文献番号
201620046Z