医師国家試験のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201620045A
報告書区分
総括
研究課題名
医師国家試験のあり方に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-025
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高木 康(昭和大学医学部 医学教育学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,182,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の医師国家試験は、多肢選択肢問題(MCQ)形式500題(一般問題:200題、臨床問題:200題、必修問題:100題)により行われている。しかし、医師に必要な解釈や問題解決能力を評価するには問題作成に十分な吟味と工夫が必要であり、多大な知力と労力を費やしている。本研究は、諸外国のCBT(computer-based testing)の現状(問題形式、作成過程、評価基準等)を調査して明らかとし、CBTシステム構築の長所・短所を検討し、これを我が国の医師国家試験に応用し、パイロット的な試験問題を作成して、検証することにある。今年度は、医師国家試験への導入の前段階として、急増している外国医師等による医師国家試験の受験資格認定調査へのパイロットとしての導入の有用性についても検討する。認定受験者は世界各国から集まり、多様な教育システム(年限、授業科目、時間数等)で教育を受けており、より客観的・公正な選抜方式の1つとしてCBT活用の可能性を検討する。この際には医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)のCBTとの整合性も考慮する。
研究方法
1.諸外国の医師国家試験との比較研究:カナダと韓国を視察する。特にコンピュータを使用した試験システムとその内容についての詳細な調査だけでなく医師国家試験全般についても調査を行う。
2.コンピュータを用いた試験の国家試験への応用の検討:コンピュータを用いた試験(CBT)の現行の試験形式以外の領域への応用の検討を行う。CATOで採用されている臨床推論を評価する「後戻りできない機能」や動画や音声などのマルチメディアを活用した問題の有用性について検討する。
3.医師国家試験・外国医師等による医師国家試験の受験資格認定調査のパイロットとしての試験問題の研究:CBT形式での医師国家試験の試作問題を作成し、試行してCBT形式の問題の問題点を明らかにして、改善のポイントを明確にする。また、外国医師等による医師国家試験受験資格の認定者は年々増加しており、プレ調査でのマルチメディアを活用したCBTの有用性について検討する。
結果と考察
1.諸外国での医師国家試験の現状:1)カナダ CBT:評価試験と資格試験(研修医になる資格)をCBTで行いる。資格試験はMCQとCDMを組合せて行っている。OSCE:NAC試験と資格試験(単独で診療する資格)をOSCEで行い、資格試験では医療面接と身体診察、画像診断、検査の解釈、治療計画なども出題されている。2)韓国 OSCE・CPX:シミュレーターを利用したOSCEと患者での医療面接と身体診察を行うCPXをそれぞれ6ステーションで行っている。学力試験:現在は冊子形式であるが、タブレットPCを利用したSBTを開発中である。ネットワークを必要としないため、活用範囲は広い。
2.コンピュータを用いた試験の有用性の検討:1)CCS:救急症例を提示し、患者への対応をコンピュータに入力して、患者・病態に対する適切な対応を臨床推論する。2)順次回答形式CBT:診察手順にしたがったMCQ問題を4連問にして出題する。医療面接、身体診察、臨床検査・画像検査解釈、診断、病態生理の設問により臨床能力を評価できる。3)マルチメディアを活用したCBT:マルチメディア(音声、動画など)を活用したCBTを行うことでtaxonomyの深い問題を作成できる。
3.考察:我が国ではCATOの共用試験でCBTが実施されている。このCBTを海外のCBTと比較すると、概要はほぼ同等な内容である。深い知識を評価するにはマルチメディアを使用したCBTもその有効な手段の1つと考えられる。平成30年度にはPCC-OSCEを準国家試験として導入する計画であるが、この際にマルチメディアを活用したCBTを1つのステーションとして利用することも考慮すべきかもしれない。
結論
 我が国の医師国家試験は冊子による筆記試験が行われている。この様式では、深い知識を評価するのは必ずしも容易ではなく、補完する手段を考える必要がある。マルチメディアを活用したCBTはその1つの手段であり、今後はいかなるマルチメディアをいかに活用するかを検討し、技能をも評価可能なCBTの開発が必要である。また、視察した3か国では医師国家試験としてOSCEが併用されており、学力試験とOSCEの両方を合格することが必須となっている。我が国でも医科大学・医学部によるPCC-OSCEの実施が計画されており、マルチメディアを使用したCBTとOSCEにより国民の健康増進に貢献する医師の育成が行われることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カナダではCBTとOSCEを活用して評価試験と資格試験を行っており、CBTにより臨床推論能力、診断決定能力を、OSCEにより診療能力を評価していた。韓国では冊子方式の筆記試験に代わり、タブレットPCを利用したSBT(Smart device Based Test)を開発途中であり、ネットワークを必要としない方法として有用性が高い。このSBTにマルチメディアを活用した方法を組み入れることで、医師としての技能評価の可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
医師としての臨床能力を評価する医師国家試験の1つの方法としてPCC-OSCEが平成32年度から導入予定である。マルチメディアを活用したCBTは知識だけでなく、医師としての技能を評価できる可能性があり、外国医師等による医師国家試験の受験資格認定希望者に対する問題の試作を検討した。
ガイドライン等の開発
マルチメディアを活用したCBTの活用として、外国医師等による医師国家試験の受験資格認定希望者に対する調査を考えており、まずは我が国での医学部学生によるトライアルを行い、試作問題の評価を行う。一定の評価が得られた場合には、調査の1領域として評価として活用を依頼する。
その他行政的観点からの成果
外国医師等による医師国家試験の受験資格認定希望者は年々増加しており、適切な評価方法が求められている。CBTはグローバルスタンダードであり、これにメルチメディアを活用することで、taxonomyの深い知識・技能評価も可能となり、また人的資源の削減にもつながる。近い将来の導入が期待される。
その他のインパクト
マルチメディアを活用したCBTの医師国家試験への導入は未だ世界のどの国でも行われていない。その有用性を理解している国も多く、我が国で導入された場合には大きなインパクトがある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-04-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201620045Z