臨床研修の到達目標と連動した研修プログラム及び評価方法・指導方法に関する研究

文献情報

文献番号
201620044A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研修の到達目標と連動した研修プログラム及び評価方法・指導方法に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-024
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 臨床疫学センター)
  • 鈴木 康之(岐阜大学 医学教育開発研究センター)
  • 前野 哲博(筑波大学 医学医療系 臨床医学域)
  • 高村 昭輝(金沢医科大学 医学教育学)
  • 高橋 誠(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年12月にとりまとめられた医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(以下、「臨床研修部会」)による『臨床研修部会報告書』において、医師の卒後臨床研修の到達目標と研修医の評価を見直す必要性が指摘されたことを受けて、「臨床研修部会」の下に「臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」(以下、「ワーキンググループ」)が設置された。
本研究の目的は、到達目標を見直すうえでの改訂案を作成することである。具体的には、平成26年度及び平成27年度の厚生労働科学研究の成果および「ワーキンググループ」の議論を踏まえ、① 臨床研修の到達目標に関連する追加的なデータ収集及び目標案について検討すること、②作成した到達目標の達成を可能とする方略を立案し、研修医を適切に指導・評価するための手引きまたはガイドラインの作成について検討すること、を目的とする。
研究方法
研究班会議を9回開催し、前年度に作成された到達目標(案)をたたき台に、ブラッシュアップを繰り返した。この間に4回開催された「ワーキンググループ」および3回にわたる「臨床研修部会」へのプレゼンテーションを通じて提示された様々な意見にも十分配慮して、議論を重ねた。
また、大学医学部卒前教育から卒後臨床研修、専門医養成研修、生涯学習という医師としてのキャリアの全ての学習・研修段階に適用される共通の到達目標とすべく、各段階の学習・研修に関わる省庁・団体・学会・委員会などと調整を図った。
結果と考察
最終案としての到達目標(改訂版)を作成し、平成29年3月23日に開催された平成28年度第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会にて承認された。
到達目標(改訂版)の構成は、前文(医師は、病める人の尊厳と公衆衛生に関わる職業の重大性を深く認識し、望ましい医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)及び医師としての使命の遂行に必要な資質・能力を身に付けなくてはならない。医師としての基盤形成の段階にある研修医は、医師としての基本的な価値観を自らのものとし、基本的診療業務を遂行できる横断的な資質・能力を習得する。)に続いて、A. 医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)、B. 資質・能力、C. 基本的診療業務、という3つの大項目があり、Aには4つの中項目(1.社会的使命と公衆衛生への寄与 2.利他的な態度 3.人間性の尊重 4.自らを高める姿勢)、Bには9つの中項目(1.医学・医療における倫理性 2.医学知識と問題対応能力 3.診療技能と患者ケア 4.コミュニケーション能力 5.チーム医療の実践 6.医療の質と安全管理 7.社会における医療の実践 8.科学的探究 9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢)、Cには4つの中項目(1.一般外来における診療 2.病棟における患者ケア 3.初期救急への対応 4.地域医療連携)が挙げられている。さらに、各中項目には、小項目あるいは説明文が記されている。
 今回の到達目標(改訂版)の特徴として3点挙げられる。第一に、医師としての望ましい行動や態度、その基盤となる基本的価値観(プロフェッショナリズム)、対人関係能力などが重視された内容となっていること、第二に、医学や診療に特有の知識や技術だけでなく、人格や行動規範といった人間の全体的な能力が到達目標となっていて、1990年代以降の教育学で主として<コンピテンシー>と表現されている概念-資質・能力という用語を当てた-に則っていること、そして第三に、大学医学部卒前教育から卒後臨床研修、専門医養成研修、生涯学習という医師としてのキャリアの全ての学習・研修段階に適用される共通の到達目標(水平軸-広さ-についての共通化であり、垂直軸-深さ-は各段階で異なる)とすべく、各段階の学習・研修に関わる省庁・団体・学会・委員会などとの調整のもとで作成されてきたこと、である。この第三の点については、文部科学省の医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)とほぼ同一の到達目標となるよう整合性が図られた。
結論
平成32年度に施行される3回目の臨床研修制度見直しに用いられる到達目標(改訂版)を作成し、平成29年3月23日に開催された平成28年度第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会にて承認された。
到達目標の大項目については、文部科学省のモデル・コア・カリキュラム(改訂版)と整合性が図られた。
方略と評価については、分担研究者、研究協力者間での意見の隔たりが大きく、最終版の作成には至っていない。

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620044C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医師臨床研修制度の次回見直し(平成32年度)に向け、到達目標(改訂版)を作成した。特徴として、①プロフェッショナリズムを全面に押し出したこと、②人間の全体的な能力を対象としたコンピテンシー(資質・能力と表現)という概念を採用したこと、③医師としてのキャリア全般の学習・研修段階に適用される共通の到達目標とすべく、その第一段階として、モデル・コア・カリキュラムとの整合性を図ったこと、などが挙げられる。
臨床的観点からの成果
すべての医師は医学部卒業後、国が定めた卒後臨床研修プログラムを修了しなくてはならない。したがって、本研究班が策定した到達目標(改訂版)は、将来のわが国の医師の臨床能力を決定するだけの影響力を有するものである。医学や診療に特化した知識・技術だけでなく、いわゆるプロフェッショナリズムを全面に押し出した到達目標となっていて、将来の医師の臨床能力の向上に繋がることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究班が作成した到達目標(改訂版)は、医師臨床研修制度の次回の見直し(平成32年度)に活用される。今後、到達目標に方略・評価を加えて、臨床研修病院で有用なガイドラインの作成にも取り掛かる予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究班で作成された案は平成28年度中に4回開催された「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」で検討された。また、「医道審議会医師部会医師臨床研修部会」で3回にわたって到達目標案をプレゼンテーションし、平成29年3月23日の第4回「医道審議会医師部会医師臨床研修部会」において、到達目標最終案が承認された。
その他のインパクト
平成28年7月に大阪医科大学にて開催された第48回日本医学教育学会大会のパネルディスカッションにおいて、「医師臨床研修におけるプロフェッショナリズム関連到達目標の検討状況」という演題、本研究班での検討状況・基本方針について発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
福井次矢「医師臨床研修におけるプロフェッショナリズム関連到達目標の検討状況」第48回日本医学教育学会大会、大阪医科大学、2016年7月29日
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201620044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
1,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,614円
人件費・謝金 0円
旅費 482,360円
その他 286,026円
間接経費 230,000円
合計 1,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-