高齢化社会における死因究明の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201620043A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢化社会における死因究明の推進に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-023
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 純一(公益社団法人 日本医師会)
  • 澤 倫太郎(公益社団法人 日本医師会(日本医師会総合政策研究機構))
  • 上野 智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社)
  • 水谷 渉(公益社団法人 日本医師会(日本医師会総合政策研究機構))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,364,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の進展に伴い、在宅において死亡する高齢者数も今後益々増えていくものと見込まれる。加えて孤独死等の増加や大規模災害の発生時の検案等、死因を究明することが困難な事例も増加していくものと考えられる。政府は死因究明等推進計画を策定し(平成26年6月)、今後は死因究明の充実に向けた取り組みを進めることとされている。本研究は、平成26・27年度の研究成果を踏まえつつ、「死因究明等推進計画」において学術的見地から検討が必要な事項について研究を進め、今後の死因究明体制の充実に向けた行政施策に資するような成果を得ることを目的とする。
研究方法
検案に必要な検査・解剖の範囲、料金の負担割合について、これまでの研究結果を踏まえつつ、死亡診断書・死体検案書等の発行料金基準体系について全国市町村を対象に調査を行った。また、死亡時画像診断に特化したe-learningを含めた自己学習用の教材については平成26・27年度に引き続き開発を継続した。そして、死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトの追加機能の検討・開発を行うとともに、死亡診断書(死体検案書)の制度全体に係る課題の検討を行った。最後に、監察医制度のあり方も含む公衆衛生の観点からの死因究明について検討を行った。
結果と考察
全国市町村を対象にした死亡診断書・死体検案書等の発行料金基準体系についての調査(死亡診断書等の交付に要する費用等に関する調査)については、高い回収率、有効回答回収率(59.3%)が得られ、死亡診断書(死体検案書)の交付に係る自治体の料金設定の現状が明らかとなった。また、e-learningを含めた自己学習用の教材については、厚生労働省が日本医師会を委託先として実施している小児死亡例に対する死亡時画像診断のモデル事業で収集した症例5例を、e-learningシステムに追加し専用サイトをアップデートした。死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトにおいては、氏名欄の戸籍文字を、戸籍統一文字・住基統一文字を包含するIPAmj明朝フォントに対応して表示可能とする等、新たな機能を追加することによって、書類が行政に速やかに受理され、書類作成時の医師の負担を軽減することを可能とした。死亡診断書(死体検案書)の様式については、将来的には電子化による書類作成を見据え、現行の様式における追加項目について検討した。最後に、死亡診断書の電子的交付の可能性も踏まえつつ、監察医制度も含めた「公衆衛生の観点からの死因究明」について基礎的な研究を進めた。死亡診断書(死体検案書)交付に係る料金については、地理的な条件や遺体の状況を考慮した料金体系としている自治体もあり、今後の研究の参考となりうると考えられた。また、検案を担う医師が死亡時画像診断に習熟しやすい環境を整えるためにも、e-learningシステムを、さらに読影の学習効果が高まる内容へと進化させる仕組みを模索する必要があると思われた。死亡診断書・死体検案書作成支援ソフトについては、電子化による書類提出、さらには医師資格証を利用したクラウドネットワークを介しての書類作成と手続きを視野に入れたうえでの更なる検討が必要と考えられる。最後に、監察医制度のあり方も含めた、公衆衛生の観点からの死因究明のあり方については、本年度行った基礎的な研究成果をベースとして、来年度以降は、より応用的、政策学的な研究を進める必要があると考えられた。 
結論
今年度の研究では、26・27年度における基礎的な研究成果を踏まえ、自治体を対象とした全国規模の死亡診断書等の発行料金基準についての大規模な調査を行うとともに、基本的な検案の能力を維持・ 向上するための教材の開発~死亡時画像診断(Ai)におけるe-learningシステムの開発、様式を含めた死亡診断書(死体検案書)の制度の在り方全体についての検討を行った。さらに、様式を含めた死亡診断書(死体検案書)の制度の在り方については、各研究参加者からの意見をもとに改訂案を作成した。そして死亡診断、死体検案や、公衆衛生の観点からの死因究明の概念を歴史的視点から考察し、将来的な方向性についても言及した。その結果、死亡診断書と死体検案書の基準が多くの自治体で定められていないこと、死亡診断書と死体検案書の使い分けが一部で厳密に理解されていない可能性があると思われた。また、監察医制度の歴史も紐解きつつ、今後の公衆衛生の観点からの死因究明について自由闊達な議論を行った。来年度以降の研究においては、本年度の成果を踏まえ、わが国の死因究明制度をより精緻なものとするための政策の提言を試みたい。

公開日・更新日

公開日
2017-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620043C

収支報告書

文献番号
201620043Z