診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究

文献情報

文献番号
201620039A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-019
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院 創造理工学部経営システム工学科)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院法務研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所)
  • 東 尚弘(国立がん研究センターがん対策情報センターがん政策科学研究部)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 石崎 達郎(東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドラインの推奨の決定では、「介入の臨床的有効性」を示すエビデンスに加え、近年では「益と害のバランス」「患者の希望」「コストと資源」も重視されている。本課題は、これらの多面的検討、特に費用対効果の望ましい反映の在り方、診療現場でのパスとの連携、エビデンス診療ギャップの解明、希少疾患、多病併存の診療ガイドライン作成の課題と方法論の提示、診療ガイドライン作成と臨床的意思決定における患者参加、過剰医療の適正化、法的事例検討に取り組む。
研究方法
本課題は、学際的な研究組織により診療ガイドラインの作成から普及に至る課題を包括的に取り上げ、それらの成果を総合して、医療者への信頼の基盤となり、適切で維持可能な医療の在り方を示せる診療ガイドラインの全体像を提示するものである。その検討の過程やその成果は班会議を公開することで開かれた社会的議論に発展させていく。基本的には全課題について代表と分担が協働して取り組む。2年計画で、1年目は主に1-5を中心に取り組み、その成果に基づき2年目に6-10の取り組みに発展させる。
結果と考察
初年度は国内における根拠に基づく診療ガイドラインの状況を概観する目的で1999年に厚生省(当時)が定めた主要24疾患の診療ガイドラインのその後の更新状況と最新版の質の評価を実施した。対象CPGは、1999年から2003年に厚生省または厚生労働省の科学研究費の助成を受けて作成が開始された24疾患に関するCPGとその更新版とし、除外基準を患者・家族向けのCPG、日本語以外のCPGと定義した。CPGの検索・選定は、東邦大学・医中誌診療ガイドライン情報データベースおよび日本医療機能評価機構医療情報サービスセンター(Minds)の医療提供者向け診療ガイドラインのデータベースを使用し、2名が独立して抽出した。その他、対象CPGの本文や作成主体のウェブサイトを参照し、検索もれを減らすよう努めた。対象CPGの作成主体、発行年月日を抽出した。対象CPGのうち、最新版をAppraisal of Guidelines for Research and Evaluation-Ⅱ instrument (AGREEⅡ)を用いて評価した。1つのCPGにつき4名が独立して評価し、AGREEⅡの各項目と領域別スコアの中央値と四分位範囲を算出した。対象CPGは106冊であり、そのうちAGREEⅡ評価の対象となる最新版のCPGは24冊であった。調査時から5年以内に最新のCPGが作成されていたのは19疾患(79%)、CPGの平均改訂期間が5年を超えるCPGは11疾患 (46%)であった。対象CPG 24冊のAGREEⅡ評価における領域別スコアの中央値は、「領域Ⅰ.対象と目的」74%、「領域Ⅱ.利害関係者の参加」43%、「領域Ⅲ.作成の厳密さ」46%、「領域Ⅳ.明確さと提示の仕方」69%、「領域Ⅴ.適用可能性」24%、「領域Ⅵ.編集の独立性」27%であった。領域内の評価項目別に観察すると、「対象集団の価値観や考え」の項目が1点と最低値を示した。診療ガイドラインによる患者と医療者の適切な意思決定促進に向けた意見交換の場として、第2回SDMフォーラム(2016.8.25)、国際薬剤疫学・アウトカム学会日本部会でシンポジウム「医療経済評価の政策への応用-専門家と患者・一般人との情報格差の解消と相互理解」(2016.8.31)、日本医療機能評価機構Mindsと連携して「医療技術評価と診療ガイドラインの連携に関するワークショップ」(2016.12.18)、患者状態適応型パス(PCAPS)による医療機関の診療情報の集約と、ガイドライン作成主体へのフィードバック「診療ガイドライン改善プロセスモデル」の実現に向けた意見交換の場として、第18回日本医療マネジメント学会(博多)でシンポジウム:「臨床の複雑性に挑む」(2016.4.23)、新たに日本臨床知識学会を立ち上げ、第1回学術総会で「『根拠に基づく診療ガイドライン』と『臨床知識の構造化』を実施(2017.1.29)。また2017年1月7日には公開班会議を開催し、本課題に関心を持つ方々との意見交換を行った。
結論
日本における主要24疾患に関する診療ガイドラインを系統的に評価した結果、多くの診療ガイドラインで改訂時期が遅れる傾向があること、最新の診療ガイドライン 24冊における領域別スコアは領域Ⅱ,Ⅲ,Ⅴ,Ⅵで低値を示し、特に「対象集団の価値観や考え」に関する記載が不十分であることが明らかとなった。その他、本研究班の取り組みで明らかにされつつある課題について、今後、医療機能評価機構Mindsとの連携を深め、包括的にCPGの質を向上させ、現場での適正利用を促進していくための方策の具体化を進めたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620039Z